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2021/09/06(Mon)

増殖するメカみわ

だから私に時間を与えるなとあれほど!(?)
でもあと短編二つくらい書いたらメカみわは満足かな。未来が。。ないから。。過去を捏造するしか。。(泣いてるのか?)


夏影に咲いた(呪術廻戦/メカみわ)

油蝉がやかましく鳴き喚く中、背中に芋虫のような形状の呪骸(東京校の教師が作ったもので、キモ可愛い見た目に反して重さはニ十キロ。最初に「ノルマを終えるか授業終了のチャイムでその呪骸は消える。でも先に呪力で破壊してしまっても別にいい」と言われたが、呪力を吸収することで更に重くなる特性を持ったトラップだったのでタチが悪い)を背負ってグラウンドを走る生徒たちの姿は、新手の拷問のようだった。
表向きは宗教学校である呪術高専では、通常の高校で習うような科目であれば一通りの授業がある。体育も勿論例外ではない……というより、呪術師として戦うには体力は非常に重要なのでむしろ重点科目とされている。つまり内容が相当キツい。しかも体育は一つ上の二年生と合同で行う為余計だ。東堂先輩が絡むと、本来ならどんなに簡単な運動であったとしても、何故か一気に面倒臭さ全開のスーパーハードモードになる。
メカ丸は機械の体なので暑さは感じないし、呪骸へ呪力を流し込めばいいだけなので疲れもない。ノルマのグラウンド三十周を誰よりも早く終えて、体育館脇の階段(屋根があって日陰になっているので、皆が水筒やペットボトルを並べている)の一番上の段に座って皆を待つ。
……と見せかけて。本当はただ一人、長いポニーテールを揺らして走る三輪霞の姿だけを眺めていた。だから彼女が他のクラスメイトよりも早く周回を終えてふらふらこちらに歩いてくるのを見た時は、正直とても嬉しかった。

「やばい、死んじゃう、メカ丸、ポカリ、私のポカリちょうだい……!」
三輪は掠れた声でそう言うと、メカ丸の隣にべたりと座り込んだ。並べられたペットボトルの中から「みわかすみ」と油性マジックで大きく書いてある物を探し出して、手渡す。丸文字が可愛らしかった。
「お疲レ。早かったナ」
「私は最初から呪骸壊す気なかったですから。女子は二十周でいいって言われたし」
そう言ってボトルの中身を一気に半分以上飲み干すと、三輪は体の内にこもった熱を全て吐き出すみたいに大きく息をついた。
「……何かこんなところに座ってると、部活のこと思い出しちゃうな」
「部活?」
「こう見えて私、バスケ部のキャプテンやってたんですよ。バイトと掛け持ちするの大変だったけど」
バスケって分かります?と言いながら、三輪は手でドリブルとシュートの動作をした。
「知識はあるガ、やったことはないナ。……ルールもよく知らなイ」
「授業でバスケあるといいですね。3オン3なら人数もぴったりだし。私、普段は足引っ張ってばっかりだから、こんなことでも何か教えてあげられたら嬉しいな」
メカ丸も禪院真依も生まれからして特別だ。スカウトされて呪術の世界に入った三輪が遅れを取るのは仕方がない。
頭に最初に浮かんだ思考はそれだったけれど、言わなかった。そんなことは三輪だって、言われなくても重々承知している筈だ。
「……三輪がいなかったラ、この学年はもっとギスギスしていたと思ウ。俺は今の京都校が好きだシ、それは三輪が入学してくれたお陰でもあル」
口から飛び出た本音は言葉にしてみると何だかちょっと告白みたいで幸吉は焦った。ぐるぐるに巻かれた包帯の下で、多分頬が赤くなっている。しかし幸吉がどれだけ心の中で焦ったところで、行動に出さなければメカ丸にフィードバックされることはない。
目を真ん丸くしてメカ丸を眺めていた三輪が、あははは、と軽やかな声で笑った。
「――メカ丸って、すごく優しいんですね」
とびきりの笑顔が向けられたところで授業終了のチャイムが鳴った。呪骸から解放された皆が、ゾンビのような形相と足取りでこちらにやってくる。
「メカ丸、飲み物持って。みんなのとこに行ってあげよう!」
三輪は禪院と西宮の分のペットボトルを持つと、メカ丸の返事も待たずに走り出した。加茂の水筒と東堂の水筒(三リットル入るやつ)を急いで抱え、水色のポニーテールを追いかける。


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