慶応四年のちに戊辰戦争と呼ばれる旧幕府軍と新政府軍による戦の緒戦となった鳥羽伏見の戦いが起きる。
新政府軍5000名に対し旧幕府軍は15000名を擁しており数では勝っていたものの新政府軍の銃砲による攻撃に戦況は思わしくない、また朝廷が錦の御旗を与えたことで新政府軍を官軍、旧幕府軍は賊軍とされ圧倒的に不利な立場に追いやられる。そして将軍の逃亡、残された旧幕府軍は戦意喪失、その結果新政府軍を更に勢いづかせることとなり江戸へ引き上げざるを得ない状況となった。そしてそれはこの戦に参加していた新選組も例外ではない。


「今日から彼の世話を頼むよ」


京で人斬りと恐れられた新選組、そして彼の名はこの江戸の地にも風の噂で聞いていた。


「はじめまして、沖田総司です」


肺を患っておりとても戦える状態ではない彼は江戸着くなり隊を離れこの千駄ヶ谷へと送られてきたらしい。
医学に明るいわけではないけれど素人目で見ても病が進行しているのだと分かる程に青白く痩せており、初めの頃は本当にこの人が刀を振り回していたのかと思ってしまったくらいだ。


「何もないところですけど、しっかり養生なさってくださいね」



本当は不安定で脆くて儚い人、

これは私と彼が共に過ごした、生涯忘れることのできない数ヶ月のお話。