忘れられないひでんわざ

とりあえず、母さんにいつも持たされているハンカチを濡らし、血を拭き取る。

「っ〜〜! いてぇ!」
「だろーなー」
「んだよ、わかってんならもーちょい優しくしろよ」
「うっせ、我慢しろぃ」
「ていうか、お前……」

あれ?急に静かになったぞ?おーい、快斗さーん?

「お前、その手怪我してんのか」
「ん、あ、うん、まあ色々あって」

そっか、俺今怪我してんだった。
子供の怪我の治りは早いとはいえ、この傷はまだかかりそうだ。

「うし、これでよし、大丈夫……ではないよな」
「……ありがとな! お前、名前は?」
「如月白斗、よろしくな、快斗」
「おう」

……弟が出来たみたいでめちゃくちゃ可愛いんだが。
いや、男に可愛いって男が言ったらやばいけど、え?今の年齢ならセーフだよ、な?

「ところで快斗は何してて転んだの?」
「手品の練習!」

手品の練習であんな派手な傷できるのか?!

「手品かー、なんか見せてくれよ」
「んー、じゃあ、ほいっ」

パッと何も無かった手にバラが出てくる。
やべぇ。実際に見るとまじやべぇな。

「すっげぇな!」
「ったりめーだろ」

照れてる快斗になんだろ、父性がめちゃくちゃ擽られる。

「なー、白斗にも教えてやろーか?」
「え、いいのか?!」
「その代わり俺の練習、付き合えよ」
「よっしゃああっ! じゃあ快斗、頼む!」

ま、神社はまた今度でいーかな。

久しぶりに熱中したわ。簡単なのを数個覚えた!

白斗は手品を覚えたい……
フラグを忘れますか?
▼はい
いいえ
1.2.3……ぽかん!
白斗はフラグを忘れ手品をおぼえた!

「今日はありがとな、快斗」
「俺の方こそ、たのしかったぜ!」

笑顔が眩しいです……!

「なあ、白斗、また遊ぼーぜ!」
「おう!」

快斗とは家の電話番号を教えてもらい、分かれる。
家の電話番号って、懐かしいな……そういや俺7歳だったわ……。

とまあそんな新たな出会いを経て、

「きゃーっ! 青い! いいわねぇ、海! 久しぶりだわぁ〜」
「はぁ、俺の咲の美しいボディがみんなの前に晒されてしまうなんて……」
「んもー、夏也さんったら……」

ひゅーひゅー。やべ、俺、今、多分若干白目むいてる。

「白斗は海に入れないのよねぇ……ビーチバレーでもする?」
「いや、俺てきとーにそのへん座ってるから行ってきていいよ」

ビーチバレーも手痛そうだし。

「……でも」
「大丈夫だって! あ、あの辺! あの辺座ってるから!」

少々強引に背中を押せば、やっぱり海に入りたい気持ちもあったのか、ごめんねーという声とともに海へとダイブしていた。

さ、俺は本当にあの辺座っとこーかな。あ、焼きそば美味そう。ていうか海の家のやつって何でもうまそうに見えるよな……。

焼きそばは昼飯っぽいからかき氷でも買っていくかなー。

てなわけで、かき氷を手にした俺。Let's go あの辺。

「……げ」
「ん? 君は……あの時のボウヤか」
「あ、あ、赤井さん……?!」

あれ、海で赤井さんでってもしかして……、

やっちまったぜ。