夏舞台の幕引き

結論。未来のFBIと未来の名探偵のコンビに迷宮入りという言葉はなかった。

バシッと事件を解決してくれた。

ちなみに犯人は女の人で、10時10分で止まっている時計が決め手らしい。こう、なんだ、着眼点がすげーよなぁ。

秀一さんはメアリーさんたちと何やら話していて、メアリーさんの雰囲気が変わっていくのが感じ取れる。

父親代わり。秀一さんを言葉で送り出すメアリーさんは、少し寂しそうに見えた。

メアリーさんと話し終えたのか秀一さんはふらふらと新一のところに行き、大笑い。
そしてその会話を終えたあとに俺のところへ歩み寄って来た。

「秀一さん、推理かっこよかった!」
「そりゃどうも」
「俺も秀一さんみたいにすばばっと事件解決してみてー」
「ふっ、君ならできるさ」
「なんだよその最初の笑いはっ!?」
「ふむ……最初出会った時は年不相応なやけに大人びた少年だと思っていたが……、とんだじゃじゃ馬だったか」
「え、ちょ、どゆことそれ!」

やっべぇ。初対面の俺やばい人認定されてたのか。ぐっじょぶ今の俺。

「言葉どおりの意味だが」
「俺の心が傷つきましたー、あーあ、どう責任とってくれるんですかー、あーあー」

棒読みで言ってみる。我ながらこれは酷い棒読みだ……。

「責任、か……」
「冗談だからそんなに真剣に考えなくてもいいんだけど?!」
「なんだ冗談なのか」

なんだこの頃から冗談が通じないのか……。

「揶揄って悪かったな」

そう言って秀一さんは俺の頭をくしゃりと撫で、にやりと笑った。

「……連絡、してくれよな」
「勿論」
「じゃあ、また会おうぜ! 秀一さん!」
「ああ、また」

秀一さんは手を振りながら赤井一家の所へと戻っていく。
頭に残った生暖かい熱は海風に晒されても消えてはくれなかった。

……この世界来た影響なのか、なんかいちいち小っ恥ずかしいな、俺……。

暫く惚けていると、両親が心配そうな声を上げながら近づいてくる。

ごめんな、母さん、父さん。
幼馴染のホームズと知り合いの超人パート1とパート2のせいで安心の日々は多分もう来ません……。

事件に巻き込まれるのは嫌だけど、あいつらと関わるのは嫌じゃないってのが厄介なんだなぁ、と思わず苦笑する。
両親が不思議そうな顔で見てきたけどこれだけは何とも。

こうして、俺のウキウキワクワク夏ライフは過ぎていったのである。


夜、零さんからメールが来ていた。
《いやし が たりない、それとおれのどうきゅうせい の ともだちが白斗にあいたがってたよ》
小学生へのメールだから犯行予告みたいになっているのはまあ仕方ない。
そして零さんの同期……?!
《零さんのともだち、あいたいです!》
数分後にまた携帯が鳴る。
《じゃあ また れんらくするよ、あと、です、とか、ます、とか、つけなくていいよ》
《うん! 零さんの ともだち、はやくあいたいな!》
子供らしく締めくくり、携帯を閉じた。
メールの内容について思考を巡らせる。

俺は、救いたい。