フラグは拾うもの
「聞いたわよーっ! 咲の息子だったのねーっ! さっ、座って座って〜! 食べましょ!」
「あ、ありがとうございます」
母さんかと思った……。テンションがマジで一緒だな……。
「はは、ゆっくりしていってくれ」
ゆ、優作さん……! 大人な雰囲気すげえ。男の憧れ。俺もあんなダンディな人になりたい。
「夏也は元気にしてるかい?」
「はい、ピンピンしてます」
「それは良かった」
そんな話をしながら席に着く。
工藤家の晩ご飯は、トマトカレーだったようだ。程よい酸味と少し甘めのカレーがうまい具合に合わさっていて、隠し味には多分チョコレートこれも全然他を邪魔してない、まあ簡単に言えば、美味しい。
「すごく美味しいです」
「ふふ、ありがとう」
そう言って笑う有希子さんまじ可愛いです。男でも女でも一回は惚れる。そして優作さん見て諦める。
「白斗くんはナイトバロンを読んでくれていたんだよね? どうかな?」
「すごく面白いです!」
「それは良かった」
「如月はよー、ホームズも知ってんだぜ!」
「工藤程じゃないけどな」
そう言うと、工藤が少しきょとんとしてから、
「なー、工藤っつたら母さんも父さんもいんだろ、だから新一でいーぜ」
「……それもそうだな、じゃ新一で、俺も白斗でいーよ」
「おー、白斗、な」
そうしているうちにカレーを食べ終わり、帰る時間に。
「今日は本当にありがとうございました」
「いーのよ! また来てちょうだい〜っ!」
「新一を、よろしく頼むよ」
「また来いよ!」
「ご馳走様でした! じゃあな、新一」
「また明日な、白斗」
こんな感じで、俺と新一との関係は続いていくことになる。
家に帰ると母さんと父さんがガサガサと何か用意していた。
「何してんの?」
「白斗もすぐ用意してー! 行くわよ!」
「行くわよって……」
「アメリカだよ! 漫画の資料集めに」
資料集めにアメリカとかやべぇな。てか、
「俺も行くの?」
「もちろんよー! 白斗一人残していけるわけないじゃないっ」
あれ、俺の拒否権どこいった。
……アメリカか、これはハワイで親父に的な何かなのか……。いや行くのはアメリカ本土だけどな。
アメリカ、なーんか引っかかる、あ、ばあちゃんの顔が浮かんできた。ダメだ、何が引っかかってるのかわからん。
「アメリカに資料集めとか、父さんどんな漫画描くんだよ……」
「ん? ああ、まあ、色々な」
……何それ怖いんですが…。
そんなやりとりをしてから2日後。
俺は、異国の地にいた。そう、アメリカである。そしていつものように俺は迷子になっていた。
なんでだ。前世もくそもねーな、これは。多分、俺が方向音痴なんじゃなくて、あの2人がふらふらしてんだと思う。そう思いたい。
「英語喋れねぇ……、どうしよう」
アメリカきてまで迷子とか、俺はほんとに不運の神様に愛されているんだと思う。スマホも海外なので使えない。
とりあえず、探さないと……あ、靴紐解けてる。
「おい」
……なんだろう、今顔をあげると、すごく、すごく嫌な予感がする。
「迷子か」
「……はい」
「泣いてるのか」
「いえ、泣いてない、です」
ある意味泣きたいけどな。
このままいても仕方が無いし、あらぬ誤解を招きそうなのでとりあえず立ち上がる。
勿論そこには随分若いスパダリ……いや、赤井秀一がいた。
アメリカといったらこの人ですよね!!
「親とはぐれたのか」
「まあ、俺がはぐれたっていうかあっちがはぐれたっていうか……」
「親のいる場所に心当たりは? 連絡先はわかるか」
「心当たりは……ちょっとないですね、連絡先はスマホがあるんですけど、海外なんでちょっと」
「……ボウヤは、何歳だ」
「花の7歳児です」
まだまだ若いよ!!ていうか、赤井さんもう留学してたんすね!
「一緒に探してやる」
「……え?」
「君の両親を一緒に探してやる」
なんかまたフラグが成立して神様が笑ってるような気がするけど、一人じゃ心細かったし、正直ありがとうございます!!!
「ボウヤの名前を教えてくれないか?」
「如月 白斗です、あの、あなたは?」
「……赤井秀一だ」
「赤井、さん」
「ああ」
横にいるとほんとにオーラ半端ない。こう、漂ってくる。
やっぱ足なげぇなぁ……、ボケっとしてたら置いてかれそう。
「手を出せ」
握手か?
「違う、右手だ」
大人しく右手を差し出せば、手を繋いで再び歩き始めた赤井さん。
……え?
「えーっと、え、え?」
「すぐにはぐれてしまいそうなのでな」
そう言ってニヤリと笑う赤井さんまじかっこいいっす。
そして、俺がついていくのに必死なことに気づいたのか、さっきよりゆっくり歩いてくれる赤井さんまじ赤井さん。
これはキャメル捜査官の気持ちもわかるわ……。