少年Fは思案する

side 降谷

半ば強引に連れてこられた遊園地で、俺はあの少年に出会った。
妙に大人びていて、対応も年相応ではなかった。
血だらけだったし、正直焦った。
いろいろあって、今では時々ご飯を一緒に食べるような仲だ。

彼についての不思議は尽きることがない。
平然と子供が読むようなものでは無いようなものを読むし、逆に子供が興味を持ちそうなことにはあまり興味を持たない。(某ライダーにだけはハマっていたので安心した)

俺が課題をこなしていると横から、

「あ〜、それ難しいやつー」
「え、」
「あ、違う、難しそうだネ!」

と言ってきたり。(難しいやつと言った時の目が死んでいてリアルだった)

とにかく不思議な少年ではある。
が、その少年が出すオーラはどこか暖かく、居心地がいい。

「どうしたの、零さん、急に抱きついてきたりして……?!」
「最近疲れてるんだ、はぁ、あったかい」
「ほわっつ」

これが噂の子供体温とか言うやつなのだろうか。

そんな彼を水族館に誘ってみた。
正直、大人びた彼のことだろうから、水族館なんてあまり興味はないと思っていた。

しかし、水族館でのあの目の輝きは今まで見た中で1番年相応に見えた。
彼とイルカを見ていたとき。
明らかに何か大変な異常があったとしか思えないような悲鳴が館内に響いた。
さらには死体ときた。

俺は今日は彼と来ているわけであって、降谷零であって降谷零ではないと言い聞かせる。

気になる気持ちを押さえつけ、彼に話しかければ、彼は呆れたように、それでも安心できる笑みで、

「ねぇ、零さん、零さんの力が必要なんだと思う、ます? 俺なら大丈夫、です」

と言った。
そんなに態度に出ていたのか……俺は、と少し落ち込みつつ、同時に驚いた。

まさか、行ってこいと言われるなんて。

今は、彼が、白斗が背格好など関係なく、頼もしく見えた。

白斗の頭を撫で、俺は事件があったところへ走った。


事件自体は単純なものだった。
トリックは至って簡単。殺害された人は、ここの飼育員。
昼に水族館のペンギンなどに餌を与え、そのあと飼育員の昼食時間となる。

そこを狙って、犯人は水道の蛇口に毒を塗り、手を洗えば毒が付着し、その手で何か食べるよう仕向ける。
おおかた、サンドウィッチか何かを持参して、食べてくれ、とでも頼んだのだろう。

犯人である同僚の飼育員は、サンドウィッチを手渡したあと、そういえば仕事がまだある、と言って退出。

そして被害者は殺害され、これまた同僚の飼育員の女性に発見された。

「もう諦めてください……、犯人はわかっているんですよ」
「……っく、こんなところでっ」

俺が犯人を追い詰めれば、犯人は小さく呟き、駆け出す。

「くそっ、逃げたか……っ!」

俺も同じように駆け出す。
犯人は、ある場所で止まっていた。

「くるなあああっ! この子供がどうなってもいいのか!!」

犯人は、ナイフを子供に突きつけ、子供を人質にとっていた。

「っ! 白斗っ!!」
「あ、零、さん」

人質にとられていたのは白斗。
彼は少し恐怖の色を瞳に映しながらも、俺を見た瞬間、安心したように笑った。