はろいん
※ハロウィンネタ
異国の収穫祭は、なんでも仮装して、相手に「お菓子か悪戯か」とねだる風習があるらしい。お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!という可愛らしいもの。
それを聞いたカァくんが大漁にお菓子を買って「何かあったらこれをぶつけてくださいね」と比較的穏やかな英傑の協力の元、執務室と私室に運び込んでいたのが先日のことだ。
訪れる英傑にお菓子を配り、日が暮れる頃にはずいぶんと数が減っていた。
今日お菓子を食べた分は明日以降運動して消化しないとな、なんて考えると気が滅入りそうになるので忘れよう。
そもそも料理が上手い英傑が多いこの本殿で痩せようなんて考える方が無謀なのだ。下手に何かすると逆に肥えさせられるのがオチだ。
「よぉ。なんか今日は騒がしかったみてェだな?」
酒臭さを隠さずにシュテンドウジは上機嫌でこちら寄りかかってくる。顔が赤いので相当飲んできたらしい。
「収穫祭らしいからねえ。そういう季節の催しが楽しめるならそれが一番いいことだと思うよ」
シュテンドウジの言うように、今日の執務室は騒がしかった。お菓子を要求してくる者、悪戯をしようとやってくる者、そしてなんとなくどちらがいいか尋ねてくる者、逆にお菓子を置いて帰っていく者と様々な英傑がいた。ただその英傑の対処はおおむねお菓子で済ませてしまったのだが。
「そんで?頭は一日この執務室で良い子にしてたってか?」
「そうだねえ。仮装とか楽しそうだからしてみたかったんだけど」
「ちなみに何やるんだ?」
「妖怪包帯男!」
とくに衣装を用意することなく、着替えたヒカルゲンジの奥義を使えばすぐにできそうな仮装という我ながら完璧な発案である。
「色気ねェなぁ。もっとこう、ねェの?グッとくるやつ」
「悪戯とかお菓子とか、子供向けのお祭りでしょう?色気は必要ないのでは?」
「そういうとこだぞ頭」
しかしシュテンドウジがお伽番でもないのに、こんな時間に理由もなく執務室へとやってくるのは珍しい。しかも酒臭いままに。顔が赤らむほど酒を飲み始めたら潰れるまで飲んでいるか、それか部屋へと戻って寝てしまうかの彼がやってくる理由、前後の会話……、とまで考えてようやく気付く。
「はい」
酔っ払いから受ける悪戯はおそらく洒落にならない。言われる前にそっと飴がいくつか包まれた袋を渡しておく。
「あ?んだよこれ」
「お菓子だけど……。だから悪戯は遠慮しておくねって……あれ?それ目当てじゃない?」
完全に酔っぱらった勢いで悪戯しにきたものだと思ってしまった。じゃあなんとなく訪ねてきただけなのだろうか?シュテンドウジが?独りで飲んでいるうちに寂しくなってしまったとか?
色々な可能性を考えてみるものの、どうにもしっくりとこない。
「いらねェよ。ガキかっつの。そんなら酒よこせ酒」
「もう十分飲んだんじゃないの?」
「美味い酒はいくらあっても困らねェし」
まぁそうだろう。毎日浴びるように飲んでいるわけだし。だけど残念ながら執務室に酒は常備されていないし、そもそもそういう祭りでもないのだろう。そういうおねだりはせめて買い物の際にして欲しいものだ。
「頭はしねェのかよ」
おそらく『お菓子か悪戯か』のことだろう。今聞いたところでそもそもシュテンドウジは飴を受け取ったばかりで、ついでに何か悪戯をしろと言われても何をするか困ってしまう。
ははぁん、読めたぞ?もしかしてこれは悪戯をしろって無茶ぶりをさせるつもりの酔っ払いだな?カァくんも「もしかしたらこういう方がいるかもしれませんけど適当にあしらってくださいね!!」と言っていた気がする。幸いにもそんなことを言って粘る英傑は今までいなかったわけなのだが。
しかし相手は酔っ払い。まともなことは期待してはいけないけど、相手をしないという選択肢もない。あと純粋にシュテンドウジは拗ねると割と面倒くさい。
「ええ、と、なんだっけ……と、とりっく、おあ、とりーと?」
うろ覚えだが、英傑の皆がこんなことを言っていた気がする。とりあえずそれっぽく言ってみるとシュテンドウジは無言で自らの懐からごそごそと探しているではないか。
「そう言われちゃ仕方ねェから、やるよ」
丁寧に包まれたそれは包装からして市販ではないのだろうということが分かる。つまり、誰かが作ったもので、その誰かっていうのは……。
「もしかしてこれ、作った?」
「見りゃ分かんだろ」
異国の収穫祭だということで作るものにも気を遣ったのか、包みを開けてみると中身は乾餅だ。血代固が無かったのか胡桃か何かを入れたのだろうか、それらしいものがぽつぽつと入っている。
「頭はずっと執務室にカンヅメで詰まんねェ顔してたからな。まぁ、おれが相手になってやってもいいか、って思ったわけだ。わざわざ割れねェように気を付けて持ってきてやったんだからありがたく食えよ」
そういえば前にもこんなことがあった記憶がある。あれは日頃の感謝としてお菓子を作ってくれた時のこと、最終的に素面じゃ耐え切れないと言い出して酒を飲んでいたんだったか……。
酒の匂いが香る彼の方を見る。心なしか先ほどよりもその顔は赤くなっている気がした。
「……シュテン、ありがとう」
「どーいたしまして。せいぜいありがたがって食えよ。次いつ食えるか分かったもんじゃねェからな」
そんなことを言いつつこの鬼は頼めば作ってくれるのだろうな。そんなこと思いながら乾餅を一口かじる。乾餅は素朴で優しい味がした。
10/28 はろいん
異国の収穫祭は、なんでも仮装して、相手に「お菓子か悪戯か」とねだる風習があるらしい。お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!という可愛らしいもの。
それを聞いたカァくんが大漁にお菓子を買って「何かあったらこれをぶつけてくださいね」と比較的穏やかな英傑の協力の元、執務室と私室に運び込んでいたのが先日のことだ。
訪れる英傑にお菓子を配り、日が暮れる頃にはずいぶんと数が減っていた。
今日お菓子を食べた分は明日以降運動して消化しないとな、なんて考えると気が滅入りそうになるので忘れよう。
そもそも料理が上手い英傑が多いこの本殿で痩せようなんて考える方が無謀なのだ。下手に何かすると逆に肥えさせられるのがオチだ。
「よぉ。なんか今日は騒がしかったみてェだな?」
酒臭さを隠さずにシュテンドウジは上機嫌でこちら寄りかかってくる。顔が赤いので相当飲んできたらしい。
「収穫祭らしいからねえ。そういう季節の催しが楽しめるならそれが一番いいことだと思うよ」
シュテンドウジの言うように、今日の執務室は騒がしかった。お菓子を要求してくる者、悪戯をしようとやってくる者、そしてなんとなくどちらがいいか尋ねてくる者、逆にお菓子を置いて帰っていく者と様々な英傑がいた。ただその英傑の対処はおおむねお菓子で済ませてしまったのだが。
「そんで?頭は一日この執務室で良い子にしてたってか?」
「そうだねえ。仮装とか楽しそうだからしてみたかったんだけど」
「ちなみに何やるんだ?」
「妖怪包帯男!」
とくに衣装を用意することなく、着替えたヒカルゲンジの奥義を使えばすぐにできそうな仮装という我ながら完璧な発案である。
「色気ねェなぁ。もっとこう、ねェの?グッとくるやつ」
「悪戯とかお菓子とか、子供向けのお祭りでしょう?色気は必要ないのでは?」
「そういうとこだぞ頭」
しかしシュテンドウジがお伽番でもないのに、こんな時間に理由もなく執務室へとやってくるのは珍しい。しかも酒臭いままに。顔が赤らむほど酒を飲み始めたら潰れるまで飲んでいるか、それか部屋へと戻って寝てしまうかの彼がやってくる理由、前後の会話……、とまで考えてようやく気付く。
「はい」
酔っ払いから受ける悪戯はおそらく洒落にならない。言われる前にそっと飴がいくつか包まれた袋を渡しておく。
「あ?んだよこれ」
「お菓子だけど……。だから悪戯は遠慮しておくねって……あれ?それ目当てじゃない?」
完全に酔っぱらった勢いで悪戯しにきたものだと思ってしまった。じゃあなんとなく訪ねてきただけなのだろうか?シュテンドウジが?独りで飲んでいるうちに寂しくなってしまったとか?
色々な可能性を考えてみるものの、どうにもしっくりとこない。
「いらねェよ。ガキかっつの。そんなら酒よこせ酒」
「もう十分飲んだんじゃないの?」
「美味い酒はいくらあっても困らねェし」
まぁそうだろう。毎日浴びるように飲んでいるわけだし。だけど残念ながら執務室に酒は常備されていないし、そもそもそういう祭りでもないのだろう。そういうおねだりはせめて買い物の際にして欲しいものだ。
「頭はしねェのかよ」
おそらく『お菓子か悪戯か』のことだろう。今聞いたところでそもそもシュテンドウジは飴を受け取ったばかりで、ついでに何か悪戯をしろと言われても何をするか困ってしまう。
ははぁん、読めたぞ?もしかしてこれは悪戯をしろって無茶ぶりをさせるつもりの酔っ払いだな?カァくんも「もしかしたらこういう方がいるかもしれませんけど適当にあしらってくださいね!!」と言っていた気がする。幸いにもそんなことを言って粘る英傑は今までいなかったわけなのだが。
しかし相手は酔っ払い。まともなことは期待してはいけないけど、相手をしないという選択肢もない。あと純粋にシュテンドウジは拗ねると割と面倒くさい。
「ええ、と、なんだっけ……と、とりっく、おあ、とりーと?」
うろ覚えだが、英傑の皆がこんなことを言っていた気がする。とりあえずそれっぽく言ってみるとシュテンドウジは無言で自らの懐からごそごそと探しているではないか。
「そう言われちゃ仕方ねェから、やるよ」
丁寧に包まれたそれは包装からして市販ではないのだろうということが分かる。つまり、誰かが作ったもので、その誰かっていうのは……。
「もしかしてこれ、作った?」
「見りゃ分かんだろ」
異国の収穫祭だということで作るものにも気を遣ったのか、包みを開けてみると中身は乾餅だ。血代固が無かったのか胡桃か何かを入れたのだろうか、それらしいものがぽつぽつと入っている。
「頭はずっと執務室にカンヅメで詰まんねェ顔してたからな。まぁ、おれが相手になってやってもいいか、って思ったわけだ。わざわざ割れねェように気を付けて持ってきてやったんだからありがたく食えよ」
そういえば前にもこんなことがあった記憶がある。あれは日頃の感謝としてお菓子を作ってくれた時のこと、最終的に素面じゃ耐え切れないと言い出して酒を飲んでいたんだったか……。
酒の匂いが香る彼の方を見る。心なしか先ほどよりもその顔は赤くなっている気がした。
「……シュテン、ありがとう」
「どーいたしまして。せいぜいありがたがって食えよ。次いつ食えるか分かったもんじゃねェからな」
そんなことを言いつつこの鬼は頼めば作ってくれるのだろうな。そんなこと思いながら乾餅を一口かじる。乾餅は素朴で優しい味がした。
10/28 はろいん