※独神が並行世界に沢山いるよっていう設定
※独神の知能が低い
※申し訳程度の性的な表現



「他の世界線の独神は皆よろしくやっているみたいなんだけど、なんで私はシュテンとの接触が少ないの?おかしくない?こんな残酷な事実私知りたくなかった」
「おれも聞きたくねェんだよなぁ」

三徹目、意味もなく知らなくていいことを調べて後悔する。そんなことがあると思う。それが今日だっただけという話だ。

「頭眠いだろ」
「目は冴えてるし現実に打ちひしがれてる。なんで皆あんな感じなの?教えてほしい」
「知らねェよ。寝とけ」
「ほら!うちのシュテンドウジはこれだよ!保護者〜!!面倒見がいい〜〜〜!!!好き!!」
「知ってる」

三徹目で目が死に気味の私に代わって、シュテンドウジは久遠札を数えながらぞんざいに返答する。時々「ひー、ふー、みー」と数える声が聞こえるのがあざとくて可愛い。悪鬼ってなんだ。


実のところ独神という存在は、”中身”が固定されている物体ではない。八百万界に下りるための器という名の肉体支給と役割は定められているが、中身……つまるところ人格までは固定されていないのだ。
そのため並行世界の独神はわたしではなく、別人ということになる。器も器で中身に合わせて粘土のように見た目を変えるため、同じ独神というのは存在しない。
くどい言い回しはやめよう。ようするに並行世界には私ではない独神が数えきれないほどいて、思い思いに八百万界を救ったり救わなかったりしているということだ。
そんな並行世界のことだが、知ろうと思えば調べることが出来る。最近条件を付けて検索だってできることに気付いた。すごいぞ独神情報網。その代わり知らなくてもいいことも簡単に知れてしまうのでご利用は計画的にしないと大体後悔する。今回の件も既に後悔していた。


「なんかもう並行世界の独神すごいんだよね。接触過多なんだよね。そして恋仲になったら遠からずそういう感じなんだよね」
「どういう感じだよ」
「おかしい……。私とシュテンは恋仲なのにそんなこと一回もなくない?何かあったに違いない……」
「何もねェんだよなぁ」
「正解」

一般的に恋仲である二人がするような接触は、私たち二人には無い。ちなみに仮面なんたらではないということは事前に言っておきたい。ごくふつうの恋人であるはずだ。私が告白をして、シュテンドウジがそれを了承した。恋仲への進展ってこれであっているよね?独神は悪霊をぶちのめすための編成は考えるし、久遠城での相手の速度計算もできるけど、いい感じの恋仲になる方法とかは分からないのだ。
もう一度独神情報網と接続する勇気はない。恋人同士のあれそれを見せつけられては独神の精神が滅んでしまう。

「もしかしてシュテン、私に同情で付き合ってくれてる?」
「寝言は寝て言っとけ」
「アッ……はい……」

渾身の勇気を出した質問は一瞬で切り捨てられた。寝言ってどっちなのか分からないが独神は前向きなので都合のいいように取ってしまうぞ。付き合ってるの部分じゃなくて同情の部分だと勘違いしてしまうぞ。いやしておこう。

「というかおまえ、おれが好きでもねェやつにわざわざこんなことしてやると思ってんのか?」

久遠札を数え終わったのか、シュテンドウジはそれを箱へと戻していく。がちゃがちゃとなる木札の音が三徹目の頭に響くので自分でやっていたらもっとひどかっただろう。
好きな相手のためじゃなきゃこんな面倒な仕事普通しないよね、知ってる。

「シュテン私のこと大好きか〜、そっかぁ〜!まぁ愛してるって言ってたもんね〜!」
「まぁな」
「あっ……、そ……そっかぁ」

否定しないのかーい!と突っ込みたかったけれど段々恥ずかしくなってきて言葉が出なくなってくる。そもそもの話、私がこういうの向いてない。知っていた。三徹目の勢いをもってしても羞恥心に勝てないのだ。

「つーか頭、おまえな、なんで?って聞くけど当たり前だろ」
「あたりまえ?」
「よーし、頭ちょっと目を開けろ。そんで起きろ」

一体何を。そう思って文机に突っ伏していた身体を起こして目を開ける。すると眼前にあるのはシュテンドウジの整った顔。

「ヒェッ?!近い!なんで?!ちょっと待って!」
「ほら見ろ。おまえこんなんじゃ何もできねェに決まってんだろ」

暴れて硯をひっくり返しそうになった私を、シュテンドウジは軽く手で制して一歩分ほど距離を置いてくれる。
何故こんなに驚くか?そりゃ至近距離に良すぎる顔があったら驚きもするし動揺もすると思う。なんだこの鬼、顔が良い。良すぎる。直視は無理だ。これで目が合ってしまったら?はい無理。

「そんでよろしくするんだったか?いいぜ?おれは。頭さえいいならいくらでもどろっどろに甘やかしてやる」
「ひぇ……」
「ってなると、おれが脱ぐことになるんだが」
「ぬぐ」

シュテンドウジが脱ぐ。思考がその時点で止まった。

「試すか?」

そう言って彼が自らの着物に手を掛ける。あ、だめなやつだ。止まった思考は単純明快な答えを打ち出し、私は速攻で両手で目を塞ぐ。

「嫌だ待って落ち着いてほしい。ねぇまって本当によくないよそういうの」
「……と、これでヤることヤるのは無理だろ」
「シュテンが脱ぐのだめでしょ。刺青の詳細とか知りたいけど知りたくない。破廉恥すぎる」
「おまえおれの話聞いてるか?」
「聞いてる……。あの、足の爪とか好きだった」
「何の話してんだ」

だがこの状況を打破するのが不可能というわけではない。逆に考えれば見さえしなければどうこうできるのではないだろうか。いや最初のそういった行為が目隠し状態とかどんな上級者だって話になってしまうけれど、そんな触れ合いが出来ない方が悲しいのではないだろうか。

「私がこうして目を塞いでいればイケるのでは?」
「まずそれだとおれがつまんねェ」

速攻で却下されたが、その後何やら近付くような物音がする。
一体何をしているのだろうか。気になって目を塞いでいる手をどかす前に、彼の腕が添えられたらしくそのままにされた。

「頭」

耳元で聞こえたのは彼の低い声。普段の声には含まないような色気と、隠しきれない優しさのある声。
逆方向へと反射で逃げようとしたが、掴まれている。逃げられない。素早さが足りなかった。

「なんで逃げんだよ。おれを見なけりゃ平気なんだろ?」

からかうような声は確実に私が平気ではないということを分かっている。というかこれおそらく分かってやってるな?とこちらも理解できているけれど、実際に声を間近で聞かされてしまえば思考と語彙力が死ぬ。

「むりです……やめてください……」

即時降参をした私に満足したのか、シュテンドウジは再度私から離れる。独神は玩具じゃないんだぞ、と言いたいがもうそんな気力はない。片手で両目を塞ぎ、もう片手で先ほど囁かれた方の耳を押さえるのが限界だった。

「おまえとそういうことがしたくねェっつったら嘘になるけど、こんな状態のおまえを無理やり暴いてもな」
「さ、さよで……」
「身体が目当てってわけでもねェしな。おれに慣れるまで、気長に待ってやるよ」

なんだこの優しい恋人。悪鬼ってなんだよ。絶対向いてないのに待ってくれるのか……。そんなことを考えると少しジーンとしてしまう。私がぽんこつすぎるのが悪いのだけれど。


「ただ浮気まで許容したつもりはねェから、そんなこと考えたときは覚悟しろよ?」


あっ、やっぱり悪鬼かもしれない。



10/29 悪鬼ってなんだよ