神代の話
※やや卑猥
他の八傑は次々と転生を果たし、戦線へと復帰していく。
その中でおれただひとりだけ取り残され、鶺鴒台で新たな英傑を産魂ぶだけ。おれではない、戦える英傑を増やす行為を続けるだけ。
「いつになったらおれは戦線復帰できんだかな」
焦る気持ちはあった。だけど、別に独神を責めるつもりなど欠片もなかった。それだけは本当のことだ。
普段ぽけぽけとした笑顔ばかり見せる独神が、ひどく傷ついた顔をして言葉を失っていた。おれに対する後ろめたさはずっとあったのだろうと今では思う。
「ごめんなさい、シュテンドウジ。私のせい、だよね」
そんなことは言っていない。別に責めるつもりもなかった。結局のところ星の巡りというものなのだろう。他の八傑だって転生はしたが上限突破は未だのやつらだって何人もいる。
きちんと否定してやろうと思った。だが、独神の表情を見ていると、なんだかずっとご無沙汰だった嗜虐心がむくむくと首をもたげてくる。ちょっとくらいならからかってもいいだろう。これでもおれはこいつのために尽くしてきたつもりだ。その駄賃をちょっともらうくらい、許されるはずだ。
「私からあなたの力を取り出せるなら、なんだってするのに」
そういって心臓の上に手をおいた独神に喉が鳴った。
一口だけなら大丈夫だろう。
その言い訳は一体何度目なのか、面倒になって数えるのはやめた。
「は、ぁ……しゅて……」
口の中を嬲られた独神は息を切らしながら、すがるようにおれの着物を掴んでいる。そうやって苦しめて嬲っているのはおれだというのに。目の前にいるおれに頼るしかないというのは言い表せない充足感があった。
「なんで戻んねェんだろうなぁ。こんなに頭とふれあってんのに」
心優しい独神はそれを自分の落ち度と認識する。理由は分かり切っているからこんな言葉はすべて意地の悪い嫌がらせでしかない。けれどそう指摘するたびに潤む独神の瞳の誘惑に勝てはしないのだ。
「もっと、さわって。シュテンドウジに、ぜんぶあげるから……」
そう言って独神は自ら唇を重ね、舌を絡めてくる。未だにたどたどしいそれは控えめに言って下手糞で、だからこそ興奮した。おれ以外の相手を知らないそれ。本来思う相手とするであろう行為をおれとしている。
「あなたにぜんぶあげる。全部、かえすから。おねがい、もらって……」
まだ大丈夫だ。ひとくちだけだ。分かっている、力のことだ。だからこれ以上やらなきゃ平気だ。心の中で言い訳をしながら、独神の口の端から垂れた涎まで丁寧に舐めとってやる。
ばかだろう。煮たら出汁の出る海藻か乾物か何かかでもあるまいし、と嬲っているおれは思うのだが、どうにもこいつにはそういう考えは欠片も出てこないらしい。そんなことで力が戻るのならとっくの昔に八傑に揃って慰み者にされているに決まっているし、この八百万界が危機に瀕している状態ならばあの八咫烏だって推奨するはずだ。
こんなことしたって力は戻らない。分かっている。
「もっとして。おねがい」
効果があると信じ込んでいる独神は何度もおれにそうねだり、より触れ合おうと抱き着いてくる。まるで恋仲のようなやりとりは上質な酒よりもこちらを酩酊させる。
「頭にそうねだられちゃ、いやとは言えねェよな」
何がねだられたら、だ。そう言わせているのはおれだろうが。笑いそうになるのをどうにか堪えて、再び唇を重ねてやる。これが何度目なのか数えるだけばからしい。
哀れにも独神はこの”力を返すための行為”を気持ち良く思ってしまっているようだ。太腿同士をすり合わせ、目を潤ませ、ささやかな喘ぎ声が口からは漏れる。何がとは言わないがひん剥いたらとんでもないことになっているのだろう。そんなことはしないのだが。
舌を吸ってやり、甘く牙を立てて、そうすると独神はぞくぞくと身体を震わせてその瞳から涙を零す。こんな姿はおれしか知らないのだ。清廉潔白で心優しい独神がまるでただの女のように頬を染め、涙を流しながら、それでもなお相手を求める姿をおれしかしらない。
あとひとくち。独神が零した涙をわざとらしく「もったいねェ」と言いながら舐めとってやる。身体を震わせても、それでも独神は抵抗しない。おれの力を取り戻せない罪悪感があるからだ。
最初は触るだけで、それも柔い部位じゃなくて軽く抱き着いたり手に触れる程度で。そうしているうちに抱きしめられることにとまどったのか、独神が汗を掻いていることに気付いて首筋のそれを舐めとって。
確かに触れ合うよりも直接口にした方がいいのかもしれない、とどこがどうなってそんな考えに行きついたのかは独神にしか分からない。藁にも縋る気持ちというのはこういうことを言うのだろう。
あとは落ちるだけだった。
「もっと、お願い……」
大丈夫だ、大丈夫。ひとくちだけだ。まだ大丈夫。
そう、最後の境目は越えてはいない。まだおれは引き返せる。
「どうする?それともやり方を変えてみるか?」
「一口だけだ」なんて言いながら飲んだ酒を、本当に一口でやめられた試しなど一度もないくせに。
11/6 神代の話
他の八傑は次々と転生を果たし、戦線へと復帰していく。
その中でおれただひとりだけ取り残され、鶺鴒台で新たな英傑を産魂ぶだけ。おれではない、戦える英傑を増やす行為を続けるだけ。
「いつになったらおれは戦線復帰できんだかな」
焦る気持ちはあった。だけど、別に独神を責めるつもりなど欠片もなかった。それだけは本当のことだ。
普段ぽけぽけとした笑顔ばかり見せる独神が、ひどく傷ついた顔をして言葉を失っていた。おれに対する後ろめたさはずっとあったのだろうと今では思う。
「ごめんなさい、シュテンドウジ。私のせい、だよね」
そんなことは言っていない。別に責めるつもりもなかった。結局のところ星の巡りというものなのだろう。他の八傑だって転生はしたが上限突破は未だのやつらだって何人もいる。
きちんと否定してやろうと思った。だが、独神の表情を見ていると、なんだかずっとご無沙汰だった嗜虐心がむくむくと首をもたげてくる。ちょっとくらいならからかってもいいだろう。これでもおれはこいつのために尽くしてきたつもりだ。その駄賃をちょっともらうくらい、許されるはずだ。
「私からあなたの力を取り出せるなら、なんだってするのに」
そういって心臓の上に手をおいた独神に喉が鳴った。
一口だけなら大丈夫だろう。
その言い訳は一体何度目なのか、面倒になって数えるのはやめた。
「は、ぁ……しゅて……」
口の中を嬲られた独神は息を切らしながら、すがるようにおれの着物を掴んでいる。そうやって苦しめて嬲っているのはおれだというのに。目の前にいるおれに頼るしかないというのは言い表せない充足感があった。
「なんで戻んねェんだろうなぁ。こんなに頭とふれあってんのに」
心優しい独神はそれを自分の落ち度と認識する。理由は分かり切っているからこんな言葉はすべて意地の悪い嫌がらせでしかない。けれどそう指摘するたびに潤む独神の瞳の誘惑に勝てはしないのだ。
「もっと、さわって。シュテンドウジに、ぜんぶあげるから……」
そう言って独神は自ら唇を重ね、舌を絡めてくる。未だにたどたどしいそれは控えめに言って下手糞で、だからこそ興奮した。おれ以外の相手を知らないそれ。本来思う相手とするであろう行為をおれとしている。
「あなたにぜんぶあげる。全部、かえすから。おねがい、もらって……」
まだ大丈夫だ。ひとくちだけだ。分かっている、力のことだ。だからこれ以上やらなきゃ平気だ。心の中で言い訳をしながら、独神の口の端から垂れた涎まで丁寧に舐めとってやる。
ばかだろう。煮たら出汁の出る海藻か乾物か何かかでもあるまいし、と嬲っているおれは思うのだが、どうにもこいつにはそういう考えは欠片も出てこないらしい。そんなことで力が戻るのならとっくの昔に八傑に揃って慰み者にされているに決まっているし、この八百万界が危機に瀕している状態ならばあの八咫烏だって推奨するはずだ。
こんなことしたって力は戻らない。分かっている。
「もっとして。おねがい」
効果があると信じ込んでいる独神は何度もおれにそうねだり、より触れ合おうと抱き着いてくる。まるで恋仲のようなやりとりは上質な酒よりもこちらを酩酊させる。
「頭にそうねだられちゃ、いやとは言えねェよな」
何がねだられたら、だ。そう言わせているのはおれだろうが。笑いそうになるのをどうにか堪えて、再び唇を重ねてやる。これが何度目なのか数えるだけばからしい。
哀れにも独神はこの”力を返すための行為”を気持ち良く思ってしまっているようだ。太腿同士をすり合わせ、目を潤ませ、ささやかな喘ぎ声が口からは漏れる。何がとは言わないがひん剥いたらとんでもないことになっているのだろう。そんなことはしないのだが。
舌を吸ってやり、甘く牙を立てて、そうすると独神はぞくぞくと身体を震わせてその瞳から涙を零す。こんな姿はおれしか知らないのだ。清廉潔白で心優しい独神がまるでただの女のように頬を染め、涙を流しながら、それでもなお相手を求める姿をおれしかしらない。
あとひとくち。独神が零した涙をわざとらしく「もったいねェ」と言いながら舐めとってやる。身体を震わせても、それでも独神は抵抗しない。おれの力を取り戻せない罪悪感があるからだ。
最初は触るだけで、それも柔い部位じゃなくて軽く抱き着いたり手に触れる程度で。そうしているうちに抱きしめられることにとまどったのか、独神が汗を掻いていることに気付いて首筋のそれを舐めとって。
確かに触れ合うよりも直接口にした方がいいのかもしれない、とどこがどうなってそんな考えに行きついたのかは独神にしか分からない。藁にも縋る気持ちというのはこういうことを言うのだろう。
あとは落ちるだけだった。
「もっと、お願い……」
大丈夫だ、大丈夫。ひとくちだけだ。まだ大丈夫。
そう、最後の境目は越えてはいない。まだおれは引き返せる。
「どうする?それともやり方を変えてみるか?」
「一口だけだ」なんて言いながら飲んだ酒を、本当に一口でやめられた試しなど一度もないくせに。
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