「そんで?こんな夜になんの用だよ頭。おまえこんな時間におれの部屋に来たってことがバレたらアマテラスとかにキレられんじゃねェの」
「頭じゃないです。さんたです」
「悪霊だろそれ」
「惨多ではないけどさんたなんだよ!!」

渾身の主張は溜息で封殺された。



さんた、といえばこの時期に現れる、寂しい気持ちになった人や英傑を惑わせる存在だと思われがちだが、実は他にも意味があるのだと知ったのはごく最近のことだ。
アマクサシロウ曰く、この時期は異国の救い主の生誕を祝う祭りがあり、さんたくろーすというのはその祭りの夜、よい子に贈り物を届ける存在なのだそうな。他には恋人同士で贈り物を交換したりもするらしい。
さて、話は変わるのだけれど、神代八傑の一人に二つ名に『悪鬼酒豪』というものを持つ鬼がいる。本人から直接聞いたことはないがおそらくとんでもない悪事をはたらいてきた鬼だ。
世間一般的にいう罪人、いや人族ではないから罪鬼?そもそも鬼に人族の法が適用されるかは不明だが、まぁともかくとしてそんな鬼が贈り物を貰えるよい子か、と言われると残念ながらそうではない。独神的判断をしてしまうとこの本殿にいる英傑はすべて丸ごとよい子だが、世間様はそうではないのだ。


シュテンドウジのところにさんたさんはこないのではないか。
じゃあ私がやるしかないな!
以上。これが今回の出来事の発端だ。






「というかなんで起きてるの?シュテン。今日は寒いし早く寝た方がいいよって言ったでしょ」
「あのな、おれは寝てたぜ。酒飲んで気持ちよく酔っ払って、ああ寝るかって布団に入ったわけだ」
「起きてるじゃん」
「普通な、廊下で何か引き摺るような音が延々としてたら目が覚めるだろ。つーか気になるだろうが」
「そんな音したの?怖いね?」
「犯人おまえだろ」
「……」

無言は肯定となってしまう。再びシュテンドウジは溜息をついたが、せっかくここまできたのだ。本懐を遂げなければならない。

「というわけで」
「話聞けよ」
「めりー?くりすます?!なんでもいいけど!良い子にしてたシュテンドウジくんに贈り物をあげにきました!」
「そんなの普通に渡せばいいだろ、頭」
「頭じゃないです。独神でもないです。さんたです」
「いや頭だろ」
「さんたなんです!!!!」

ごね倒せばシュテンドウジは根負けしたのか「わーったわーった。おまえは頭じゃなくてさんた?なんだな?」と折れてくれた。最初からそうして欲しいものである。この調子で言い争いをしていたら下手をすると朝になってしまうところだった。

「んで、何くれるって?」
「さんたくろーすは入念な下調べを怠らない!良い子なシュテンドウジくんの一番欲しがるだろうものをちゃーんと用意しました!」

かついでいた白い袋から酒瓶を一本取り出して、そっと枕元に置く。

「酒です」
「おお、あんがとさん」

だが贈り物はこれだけではない。こんな酒一本ではシュテンドウジに秒殺されてしまう。秒殺される贈り物はあまりにも儚いではないか。

「あともう二本」
「こんなに運ぶの重かったんじゃねェの」
「まぁ待って欲しい」

部屋の障子戸を開け、廊下に置いたままだった物体の無事を確認する。
紹介しよう。頑張って引き摺って運んできた酒樽だ。

「酒です」
「やっぱさっきの気味の悪い音、犯人は頭だったんじゃねェかよ」
「頭じゃないです。さんたです」
「それはもういい」

無理やり酒樽を部屋に押し込んで、戸を閉める。できるだけ素早く運んだつもりだが冬の夜風の冷たさは尋常ではない。部屋の中も冷えてしまった。反省しよう。次は事前に部屋に仕込んでおきましたくらいの機転を利かせようと思う。

「酒と酒と酒です。……あんまり嬉しくない?」
「いや?嬉しいぜ。あんがとよ、頭」
「頭じゃないけどどういたしまして」
「だけどな、これ一番じゃねェぜ」

えっ。欲しい酒の種類とかあったのだろうか。流石にそこまでは特定できなかった無力な独神……じゃなくてさんたを許してほしい。それとももしかして好みの相手とうんたらが一番欲しいものだったのだろうか。

「えーっと。じゃあ誰かと一緒にいたいとか?さんたと独神さんはおともだちなのでこっそり協力してあげよう。誰と一緒がいいの?」
「頭」
「頭じゃないです。さんたです」
「だから、酒だけ貰って独りで飲むより、頭と一緒の方がずっと美味いだろ、って話だ」

その展開は全く予想していなかった。動揺するこちらをしり目に、シュテンドウジは話を続ける。

「んで?さんただったか?おれの一番欲しいモン、用意できんのかよ」
「……ちょっと、独神さんを呼んでくるから……」
「無駄に外出る必要あるかよ。少し体も冷えちまったし、熱燗でも飲もうぜ。用意してきてやる」
「いや、それせめて私が用意した方が……」
「おまえが贈り物なんだ。そこでじっと待ってろ」

これ、いいのかなぁ……。さんた的に良くないのではないか?なんて考えながらも部屋から出ていくシュテンドウジを見送ることしか、私には出来なかった。