※NTR風味
※独神がとんでもない畜生
※独神はしんだもういない




頭、今日は遅かったな……って、頭じゃねェのかよ。
……ま、そろそろだとは思ってたけどな。
頭以外のやつがここに来れる、ってことは頭はもういないんだろ?
大方界帝とやらと相討ちか、足りなくなった界力の為の生贄か、ってとこか?


なんだよ。なんでおれがこんなとこにいる、って聞きてェって顔してるな。
でもそんなのおまえらが一番分かってることだろ?
この部屋は独神の私室の隠し部屋。つまりは独神の、頭の領域。頭の許可なく立ち入れない場所だ。
……頭がやろうと思わなけりゃおれはこんな場所にいねェんだよ。それに、おれがこんな場所にすすんで閉じ込められているようなやつかなんて、おまえが一番よく知ってんだろ?




きっかけなんざ知らねェよ。
たまたま、おれが頭の声に応えた。そこで偶然、頭に下心が出ちまった。そんだけの話だろ?
召喚台っつったか?一血卍傑とかいう秘儀とは違って、頭一人で英傑を呼べちまう。
そんでこの本殿には英傑が大勢いんだろ?そりゃあ何人増えたか、なんていちいち数えねェよな?
ちょうど誰の目もないところにおれが現れて、それができる状態だった。
それ以外のきっかけなんかねェだろ。目の前に金が落ちてたのを拾って懐にしまうかどうかの話だ。


おれァ最初、あいつのことぶっ殺してやろうと思ってたんだぜ?こんな扱い受け入れられるか、ってな。
でも頭の顔を見るたびに、頭がここに来るたびにそんな気が失せてってな。
英傑の素養を持ってるやつはきっと頭には逆らえねェ。逆らうっつーか害するっつーか。自分の意思で頭に反する、拒絶するような真似はできねェようにできてんだろうなあ。
マジで独神ってのはおっかねェよなァ。あいつの笑顔一つでこんな飼い殺しにされるような状況を受け入れちまってんだから。
それにな途中で気付いちまったんだよ。たぶんあいつのあんな顔見れるのは、他でもないおれだけだ、ってことにな。
おれは知らねェけど、この部屋を出た頭はさぞ優秀でまともな主人をやってたんだろ?そんなやつがおれに溺れて、心の脆い部分をさらけ出して依存して!
こんな湿っぽい場所にこのおれを閉じ込めておくには少ない駄賃だが、それで納得してやったんだよ。
そう言った時の頭ったらなかったぜ?「ありがとう」なんて言って泣きやがったんだから。
……クハハッ。なんだよその顔。
知りたいか?頭がここで何言ってたか。どうやっておれに愛を囁いたか。どうやっておれに触れたか。






なんだよ?そんなしみったれた顔しやがって。腹が立ったならこんな檻ぶっ壊して乗り込んで来いよ。
座敷牢っつっても、外に出されなかったおれでもぶっ壊せる程度のおんぼろだ。

おれが壊せておまえに壊せない道理はねェよな?
それとも、それすらできねェってか?ただの腰抜けかよ。






ま、からかうのも程々にするか。頭に叱られちまう。
頭が死んで、おまえがここに来ちまったなら、最期の頼みを聞いてやらねェとな。




頭からの遺言だ。よぉく聞いとけよ。二度は言わねェからな。







『あなたのことが好きでした』だとよ。








他に?何もねェよ。もしもここにおまえが来ることがあったなら、それだけ伝えてくれ、って。




あとは好きにして構わない、悪かった、ってな。
……悪いと思ってんなら最初からやんなよって話だよな。

……あ?なんでだ、って?おまえそればっかだな。もう分かってんだろ?
どうして頭がおれをこんなとこに置いてたかも、何もかも。





なぁ『シュテンドウジ』?











××××








何も知らない、彼ではない彼は私の言うことを素直に信じて、私の後をついてきてくれました。
誰も彼の存在を知らないのであれば、彼を私だけのモノにしてしまいたいという欲求をもしかしたら叶えられるかもしれないのです。
しばらくはお伽番になってもらう、そのために覚えてもらいたいことがある、なんて説明をすれば新しくやってきた彼はシュテンドウジは私の言うことを素直に受け入れてくれました。
そうして私の部屋へと通して、何に使うか分からない、隠し部屋である座敷牢へと導いたのです。



「ここにいてください」



シュテンドウジが好きでした。好きという言葉で片付けられないほどに好きでした。好きの上位互換が愛という言葉であるのならば愛と呼んでもいいでしょう。
でも、それを表に出してはいけない。だって誰にもこのことを知られては、見つかってはいけない。私は独神だから、特別を作ってはいけないから。独神としての私と個としての私のやりたいこと、望み、願いはバラバラで、私という存在は空中分解をしてしまいそうで。
だから吐き出す先がどうしても必要だったんです。いいや何を言ったところで全ては言い訳です。

「ふざけんな。てめェ、独神っつったか?ずいぶんとおれを舐め腐ってくれるじゃねェか」

シュテンドウジの怒りは当然です。頭のおかしい女に突如召喚されたと思ったら監禁されるというのですから、普通は怒り狂いますし、こんな場所破壊しつくして私のことだって血祭にあげて殺しても問題ないでしょう。

「あなたが好きなんです。愛しているんです。ごめんなさい」

好きになってしまって、こんな風に歪んでしまって。加害者のくせに涙を零しながら、この本殿にきて何の経験も積んでいないシュテンドウジに触れました。彼と同じ体温です。同じ存在とはいえ違う個体なのに、このシュテンドウジは彼のように暖かいのです。
そのことが私にとって救いのようで、罰のようでした。






これが何度目か分からない。分からないけれど私はシュテンドウジに溺れました。
私以外を知らない彼。他の神代八傑を知らないシュテンドウジは、私の好きになったシュテンドウジとは違うけれど、私だけを見て私だけに触れてくれる。
敵意の籠った眼差しも、「それで、おまえがおれに何して欲しいんだよ?恋人の真似事か?」と皮肉る口も、いつしかなくなっていました。
日ごとに優しい私の知るシュテンドウジに近づいていく。でも、このシュテンドウジはどうやったって好きになった彼とは別の存在なのに。

「ずっとここにいるか?」

甘い誘惑をかける、私だけのシュテンドウジの言葉に首を横に振りました。

「もしも、シュテンドウジがここに来たその時には、言付けを頼んでもいい?」

私が自らの意思で、誰かをここに招き入れることは一生無い。つまるところこれは遺言になるのです。

「あなたのことが好きでした、と」
「おまえ、それをおれに言わせんのか?そいつに?」

へにゃ、と表情を崩す私を見て、シュテンドウジは笑うのです。


「マジでひでェヤツだ。おれだってそんな真似できねェよ」


酷いと貶しながら、シュテンドウジは優しく、まるで恋人を抱くかのように私を包み込む。
いつか来る、終わりを思いながら。


4/27 酷い遺言の話