※実在しないシステムの話です
※独神がひどいです(まだマシな方)




「結魂カッコガチが実装されました」


「……え?なにて?」
「結魂カッコガチです」

確実に各所からお叱りをうけるであろう機能が実装されたらしい。くるくると丸められたお知らせの紙を器用に嘴と足で開きながら、カァくんは説明を続ける。

「ひとりの英傑と魂をより深く結ぶことにより、その英傑の更なる力を引き出すことが可能になる、そうですよ。八咫烏情報です」
「すごいなあ八咫烏情報網」

選べる英傑はたった一人だけ。たったひとり。

「荒れそうだなあ」

沢山の英傑が集うこの本殿で理由はどうであれ一人だけを選ぶ、というのは非常に大きな意味を持つのだ。それがちょっとした買い物の供だとしても、ほんの少しの散歩の付き合いだとしても、その選ばれた英傑は嫉妬の対象になってしまったりする。
少しばかり英傑達の愛情というか執着というのは重すぎやしないだろうか。

「どなたにするか、やはり決められませんか?」

ううーん、と首を捻るこちらを案じるようにカァくんが声を掛けてくる。

「いや、誰かひとりっていうならもう決まってるけど」
「えっ」
「ただそうすると皆に不満が出るかもしれない、って思って。それでせっかくの結束にひびが入ってしまっては逆効果でしょう」
「ち、ちなみにどなたですか……?タケミカヅチ殿ですか?」
「違うよ。タケミナカタでもない」

それでは恋仲の相手でも?とカァくんは尋ねるが、そもそもそんな相手がいたならばカァくんや他の英傑達が確実に気付いてしまうだろう。この前寝癖の付き具合で体調の良し悪しを判断された挙句それが当たっていたのだから、英傑の皆はもう私本人よりも私のことに詳しいのだ。

「それに相手の力を引き出すものであるのなら、恋愛とかそういうの関係ないと思わない?」
「主様はそういうところ、けっこう冷めてらっしゃいますよね」
「一応戦を主導してるんだから、色恋にうつつを抜かしてたら誰もついてきてくれないよ」
「いやぁ、ついてくると思いますけど」

あと純粋に私がそんな主人は嫌だというのがある。少なくとも色ボケした相手に自分の命を預けたくはない。

「え、じゃあ本当に一体誰となさるんです?」

話をしていると足音が近づいてくる。討伐を終えて戻ってきたのだろう。カァくんと話しているうちにもうそんな時間になっていたらしい。

「頭ー!今日も当然だが勝ったぜ!酒の準備」
「噂をすればなんとやら、かな。シュテン、話があるんだけど」
「えっ?えっ、待ってください。ちょっと主様?!」

善は急げともいう。もう伝えてもいいだろう。


「けっこんしよう」


シュテンドウジが瓢箪を落とすところを見たのは、初めてだった。







「より強くなりたいという理由で独神を探していたのに、実際は私はシュテンから力を吸い取ったようなものでしょう?それに報いたいと前から思っていたんだよ。それに八傑は人族と神族ばかりでしょう?どちらかに肩入れすればそのどちらかに勢力が傾いてしまう。そういうことを考えて……。
 シュテン?シュテン?聞いてる?」




「期待したおれがアホだったっつーことはよく分かった」

最初のうちは何故か生娘のように頬を染めて狼狽えていたシュテンドウジだったが、話を聞いている間に真顔になり、そうして今は不機嫌となっている。何故だろうか。カァくんは溜息をつきながら見回りに行くと飛び立ってしまった。

「シュテンが嫌だというなら聞かなかったことにしてくれていいよ。魂同士を結ばせるなんてシュテンのことが好きな子にとっては良い気持ちはしないだろうし」
「頭はいいのか」
「良いも何も、嫌な相手なら最初からこんな申し出はしないよ。第一しなかったからといって死ぬわけじゃないんだから」
「そ、そうか……」

今度はちょっと嬉しそうだ。シュテンドウジも割と子供っぽいところがあるから、好かれていると言われたらまんざらでもないのだろうか。

「嫌?」
「そんなわけあるか。おまえのいっとう特別な相手になれるんだろ?他のやつらに自慢してまわりたいくらいだ」
「おおげさだなぁ。それにそんなことしたら喧嘩になるでしょう。さすがに乱闘は困るんだけど」

照れ隠しか飲みたかっただけか、おそらく後者であるシュテンドウジは先ほど動揺して落とした瓢箪から酒を飲んでいた。ああ、そういえば酒の用意をしろとも強請られていたっけか。この会話が終わったら準備してやろう。

「まぁでも結婚じゃあないからね。夫婦として結ばれるわけじゃあないし、そんな大げさに言うことも無いか。ちゃんと説明すれば分かってもらえるかな」
「だけどこれ、頭と魂で結びつくんだろ?」

酒を飲みながら、カァくんの持ってきたお知らせの紙を開きながらシュテンドウジが言う。こういった誓約書の類は読まずに捨てる印象だったから意外だ。

「そうだね。魂同士で結びついて、一人の力を引き出すらしいけど」
「じゃあ無理だな。ただ誰かと恋仲になるよりもっとひでェだろ、それ。おれだったら絶対に許さねェぞ。頭が他のたったひとりとだけ、気持ちなんて生易しいものじゃなくて魂って根幹で繋がるなんて、妬けるなんて言葉じゃすまねェな」

やはりやめようと言いたくなるような言葉を投げかけながら、シュテンドウジはこちらに手を伸ばす。そうして何をしていたわけでもない手を捕まえ、小指同士を絡めてきた。

「さて、するんだろ?けっこん」

軽率な物言いだったな、と後悔するには少し遅い。
心中立てというのだったか。知らなければよかったと思う。こればかりは自分の知識欲を恨むしかないのだろう。


「魂で繋がった同士みたいな?」
「魂で繋がった伴侶の間違いだろ」
「ははは……」


思ってたより何十倍もグイグイ来るなあ、なんてことを思いながら儀式の為の祝詞を唱え始める。まぁ、なんだかんだ言いつつも、最悪の事態が起こったっていいと思って相手を選んでいるあたり、私も色ボケしていると言っても過言ではないのだろう。





5/1 結魂カッコガチ(幻覚)