アホやってる二人
※最初だけ読むと乗っ取りっぽいですけどそういう要素はミリもありません。
※独神がロクデナシです。
※×ではなくて+
閉ざされた本殿の正門の前でシュテンドウジと二人、途方に暮れる。
この向こうに広がるのは、我々にとっての味方ではない。
「どうする?頭」
「どうもこうも……帰るだけだよ」
「流石はおれの頭だ。そうこないとな?」
シュテンドウジはそう笑うと、閉ざされた正門に手を掛ける。重く閉ざされているはずのそれは、彼の剛力をもってすれば大した障害ではない。
鬼が出るか蛇が出るか。しかし鬼はこちらにいるので、出てくるとしたら蛇なのだろう、なんてことを考えていると、開かれつつある正門の隙間からきらりと光る何かが見えた。
「シュテン、待った!」
そう制止を掛ける間もなく、それは放たれた。
「なんでこうなったか分かりますか?主様」
拝殿に二人して正座をさせられた後、あくまで穏やかな口調のままアマテラスはそう問うた。その手には先ほどシュテンドウジに容赦のない一矢を放った弓が携えられている。魂が13もなければ即死だったと後にシュテンドウジは語る。
「いや、まぁ落ち着けってアマテラス」
「貴方が!主様を!連れ出したんでしょう!!!!」
「アッはい……」
あまりの剣幕に隣で正座させられていたシュテンドウジは黙らされた。元々鬼人は打たれ弱いのだ。先制されるとつらいものがある。アマテラスの隣にはジライヤが腕を組んで立っているため、速度的に勝てない。独神の速度換算は天将とする。
「シュテンくんだけならいいんですよ。だって今更ですし。でもね、なんで主様まで門限を破るどころか、朝方になって帰ってくるんです?もうすぐ夜明けですよ?」
「いや、ほら、あの、この前久遠城を登りきれたお祝いというか、ね?一度そういうお店で飲んでみたかったっていうのもあって……」
「上の方の階で頑張ったの私とスーくんだと思うんですけど?ねえ主様」
「はい……」
最終的にはアマテラスとスサノヲを頼り続けていたため、この場にアマテラスよりも発言権を持った存在はいない。ちなみに普段一番発言権を持つのは沈黙しているジライヤである。
「いや、なんかね?シュテンとかから話を聞いてるとすごい楽しそうでさ……。お姉さんたちにちやほやされてみたかったっていうか」
「それは本殿では駄目だったのか」
「英傑の皆はまた別で……。あとじゃんじゃん飲んでみたかった」
「だよなぁ。頭が飲んでるとすぐカエルとか止めに来るもんな」
酒癖が悪いつもりはないが、羽目を外すとどうなるか分かったものではないと皆は口をそろえて言う。例えば、英傑にお持ち帰りされたりだとか、例えばつまみ食いされたりだとか、例えば、例えば。出される例は悲惨だけれど、皆してそんなことしないだろうと私は思っている。いや、しないでしょ。えっしないよね?
英傑の皆のことは大好きだが、それはそれとしてちょっと関係のないところで乱痴気騒ぎをしてみたい。そんな欲をシュテンドウジは知っていたのだろう。適当な口実をつけて「なーに適当言っときゃいいんだ」と助言し、こちらもこちらで「ちょっと出かけてくるね!大丈夫だよ、シュテンも一緒だから」と適当を言って出てきたのである。
そして乱痴気騒ぎ。泥酔してお泊りまではしなかったものの、余裕で門限を過ぎるどころか朝帰りのあり様で、しかもめちゃくちゃ酒臭いというおまけまでついていた。
「本当に……。なんで主様まで……こんな……」
さめざめと泣きながらアマテラスは顔を覆っていた。
「えっあっごめんアマテラス。こんなに泣かれるとは思ってなかったというか、いやそもそももっと早く帰るつもりだったんだよ?」
「そうだそうだ。帰るつもりだったぜおれら」
「ただちょっと、あのね?紅色の着物を着たお姉さんが離してくれなかったというか」
「あと酒が美味かった」
「それなんだよ。流石お店の人。飲ませるのが上手い。気分よくグイグイいってしまった」
反省会のつもりがいつの間にか「つまみのあれがおいしかった」「あの娘が美人だった」「だけど演奏はあっちの子が凄かった」と店の感想になっていく。
いや、元々こんなロクデナシというわけではなく、そう全ては酒が入ってるせいなのだ。酔いが独神をこうさせているのだ。でなければここまで英傑がついてこない。
そのうちアマテラスは小刻みに震え始め、出来る限り沈黙していたジライヤが溜息をついた。
「頭領に呼び掛けたカラスが『大丈夫また後でね」という適当な返事をされたせいで今傷ついて寝込んでいるんだぞ」
「いや、だってさぁ……」
「『だってさぁ』じゃないですよ!カァくん泣いてましたよ!」
「返事したし安全だし、そもそもシュテンだってこうして酩酊してないわけだし」
「頭領」
「申し訳ありませんでした……」
一番過酷労働を強いられているジライヤに勝てるものはこの本殿に存在しない。
「でもね、シュテンは悪くないんだよ。私が元々行きたいって言ったのを連れて行ってくれただけだから」
「どちらも悪い」
「アッ……はい」
さっくりと切り捨てられた。本当にシュテンドウジは今回は巻き込まれたようなものだし、そもそも彼は今回普段のように酒を飲んでいない。護衛らしく多少は加減をして飲んでいたので今でも意識がはっきりしているわけだ。
「とにかく、今後一切こういったことは禁止だ。それかこいつではない護衛を複数つけることだ。いいな?」
「禁止は困るな……。あの娘にまた会いに行くって約束しちゃったし」
「おれの見てねェ間になにしてんだよ頭」
「約束だけど」
「頭領……」
日の出を告げる鶏の声よりも先に、陽転身のアマテラスが覚えているはずのない攻撃奥義が本殿に爆音を鳴らした瞬間だった。
10/20 アホやってる系友情シュテ独