何処かの村では十年に一度、村全員の票で選ばれた女は村から数km離れた荒れ果てた建物に連れて行かれ祭壇に近くに置かれた箱に閉じ込められる、連れてこられた女は村のこれからの存続と繁栄のために生贄となるのである。
荒れ果てた建物には昔から魔物や悪魔やそれ類の化け物が住み着いている、なんて言われているが生贄として捧げた者はみな次の日には消えて居る。箱の鍵は村で管理されていて箱の外側から開ける事は村の人以外出来ず、空になった箱には南京錠だけ置かれているのだ。
こうして生贄を捧げ始めた事によって、村は以前よりも活気に溢れ豊かに暮らし何不自由なく過ごしていたのだ。
幸せな日々を過ごす余り、生贄として捧げた村の女の事など忘れてしまうのであった。
そして今夜その十年に一度の生贄を捧げる日で村では朝からどの女を捧げるか話し合いが始まっていた。
村から少し離れ、川辺で顔を洗う一人の女性が居た。彼女の名は瀬谷 千尋、今年の生贄は彼女で決まりだと村では話しが決まっていた。
千尋の親は村長含め村全員にもう一度決めるようにと呼びかけた、がその説得も虚しく日は沈み月が昇りはじめ生贄を捧げる時間になってしまった。
家に着いた千尋は村長と強面の村人に連れて行かれ、真っ白い布…死装束に着替えさせられ両手首を前で縛られ布で目を覆われ、村を後にする。
「千尋っ!千尋を…うちの子を返せ!!」
千尋の父の声が村の外まで響き渡り、村の門の外で村人に身体を押さえられ必死に声を張り上げていた。
「お父さん、お母さん…幸せに暮らしてね」
そう残し、千尋は村人に連れられ心の奥底で死を覚悟しゆっくりと歩き始めた。
どのくらい歩いただろう、一緒に歩いているであろう村の人は誰一人とて口を開かずに私を荒れ果てた建物へと連れて行っているのだろうか、十年前も村からとても綺麗な女の人が生贄に選ばれたのを小さい頃の記憶だが今でも覚えている。
頭の中で、過去の記憶を振り返りながら歩いていると重たい音を出してドアが開き、ゆっくりだが階段を数段上がると土の感触から硬い物へと足の感覚が変わり、建物の中に入った事が分かった。
「頭を下げて、入れ」
最後に聞いたのは村長の声、だと思う。目隠しをされ体の前で両手首を縛られていなければ場所を真っ先に確認しただろう。が、それは虚しい事に出来はしない。
鍵の音と共に私は箱と呼ばれる物に入れられた事に気づいた、そして村人が何か祝詞か何かを唱えて数分しない内に再びドアが閉まる音と共に静寂が広がった。
「そ、村長?…だっ誰か居ませんか!」
やっとの思いで声に出したが、千尋の声が建物に響き渡り反響するだけで終わった。どうやら村長や村の人達は生贄…千尋を捧げた後退散し建物に残るのは千尋一人であった。
どうにか動こうと頭を上げると箱は思ったより狭く何処かに思いきりぶつける。
余りの痛さに身体を丸め、痛みに震えているとカツン、カツンと規則正しい靴の音が聞こえ、その音は徐々に千尋に近づいて来ていた。
