ひまわり
夕方になっても夏の蒸し暑さが残る8月中旬 普段は部活があるせいでなかなか一緒に帰ることが出来ない幼馴染のあんずに一緒に帰らないか、と提案したのは昨日の夜のこと
2つ返事でOKのスタンプを送ってきたあんずからのLINEを開きながら教室で待っていると、日直の仕事を終えたあんずがドタバタと教室に入ってきた
「えーしろ!お待たせ!」
『もう用事は済んだの?』
「うん!日誌も提出したし明日の準備の手伝いも早く終わったから帰れるよ」
『それはよかった 帰りちょっと寄りたいところがあるんですが寄っていってもいいですか?』
「もちろん!今日は永四郎も部活休みだもんねぇ」
『なら行きますか』
教室に残る友人たちに手を振るあんずを連れ、今日の学校で起こった話やテニスの話、平古場くん達とテストの点数で勝負することになった話など取り留めのない話をしながら家までの道を歩く
にこにこと笑いながら楽しそうに話をするあんず
どうやら今日の彼女はご機嫌なようだ
「そういえば寄りたいところってどこ?」
『あぁ、こっち』
「海……?」
『そう、海』
いつもすぐ近くに当たり前のようにある海 ただ今日あんずを連れてきた所の傍にはたくさんの向日葵が咲いている場所で
「わぁ……!見て!えーしろ!向日葵!!」
『そんなにはしゃぐと転ぶよ』
「満開だ〜!綺麗だねぇ」
『そんなに喜んでくれたなら連れてきた甲斐が有るものだ』
みんなにも見せてあげたい、なんて言いながら写真に撮るあんずを見つめる 誰にでも分け隔てなく優しい彼女は自慢の幼馴染であり愛しいところである ただ、せめてこの時間だけは2人きりのものであって欲しくて、震えそうになるのを堪えながら呼び慣れた名前を呼んだ
『あんずさん』
「ん〜?」
『こっち 目瞑って』
「?はい」
言われた通りにぎゅ、っと目を瞑るあんずの前髪を分けるように向日葵のピンを付ける
今日の日を忘れて欲しくない、なんて思いながら今日のこの日に渡したいと思って買っておいたヘアピン
こんなことするのは柄ではない そう思いながら少し開けたおでこに音を立ててキスをすると、驚きからか目を見開いて顔を赤らめるあんず
「え、えいしろ」
『でぇじかなさんど』
「永四郎のばか…!」
『そんな顔で言われても全く怖くありませんね』
「もう!どうしてそんな平然としてるの!」