「その例題は前の文章を読むと分かりやすいですよ」
「……あ!本当だ!理解お兄さんありがとう!」
「この理解お兄さんにお任せください!」

こうしてあんずさんに勉強を教えることになったのは数時間前のことである。
リビングに降りてくれば1人、机に向かって唸っているあんずさん。
どうしたのですか、と声を掛ければおずおずと指差してきた冊子の問題文。
ああ、これはと教えればキラキラした目で見つめられ……今に至る。
対面でうんうん、と唸っているあんずさんを見て笑みが溢れる、この理解を頼ってくれている……!

「所で、あんずさんは何故この冊子を?」
「理解お兄さんがお勉強頑張ってるから……これを機にやってみようかなって」
「あんずさん……!」
「でも理解お兄さんが居なかったらずっと唸ってたかもしれない……」
「いつでも頼ってください、そのために私は居るのですから」

冊子に向かい、真剣な表情をするあんずさんを他所に自分の手元にある本に目を滑らす。
依央利さんも不在のこのリビング、あんずさんと2人きりな訳で。
急に心臓が煩くなっていく、意識するな理解!正気を保て理解!

ゴン!

「わっ、理解お兄さん?!」
「…………乱れている!あんずさん!」
「は、はい!」
「私、草薙理解は散歩をしてきます」
「はい……?」
「それでは!」

半ば逃げる様に家を飛び出した、扉を出た瞬間に座り込み息を吐く。
部屋に居る方もいるでしょうが、今現在リビングにはあんずさんのみ。この草薙理解は、意識してしまってああ、だめです!

「落ち着け理解、まずは散歩をしてきましょう」


***


「ただいま戻りました」

しん、としている玄関に首を傾げる。リビングには誰も降りてきていないようだ。
外から帰ったら手洗いうがい!季節問わずウイルスは怖いですからね。
ギ、とリビングの扉を開けて目が飛び出た。

あんずさんが寝ている。

「マッ……!!!」

両手で口を塞ぐ、大声を出してはいけない。あんずさんが起きてしまう。
机に腕を乗せてその上に伏してしまっている、何か羽織るものがないかと見渡した、ブランケットがあるではないか。
細心の注意を払ってあんずさんの肩にブランケットを乗せる。

「……んぅ……」
「!!!!!!」
「…………」
「はー……」

身じろぎした時は心臓が飛び出るかと思いました。ゆっくり音を立てぬ様向かいの椅子に腰掛ける。
規則正しい寝息に耳を傾ける。勉強中に寝てしまうのは如何のものかとは思いますが……まぁ、この草薙理解。目を瞑ることもやぶさかではありません。

途中で止めていた本を再び開き読み始める。たまにはこういう日もいいではありませんか!ハハハハ!

「いや、理解くん気持ち悪いよね」
「テテテテテテテテラさん!??!?!?!?!いつから?!?!?!」
「今だけど。寝てるあんずちゃんを見ながら読書って。性癖?テラくん引くわー」

案の定私の大声であんずさんは起きた。そこからテラさんを抑える話はまた別で。



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