『憧れの人は居るか』という質問がある。大体は偉人だったり著名な有名人、親などをあげるかもしれないが私は 手塚国光 だ。

「え、手塚くん憧れなの?」
「意外?」
「うん、真梨ちゃん居ないとかザビエルとか言いそうだなって」
「捻り出したのがザビエルなの何で?」

昼の世間話、都ちゃんと憧れの人の話になった。国光、と答えたら都ちゃんの目がぱちぱちと瞬きをしていた。

「ちなみにどうしてか聞いても?」
「んー、まぁ当たり前な点としてはかなりの努力家じゃん?多分テニス部の人なら分かるけど」
「そうかも?生徒会長だしね」
「それもある、まぁあと単純に国光みたいには成れないけど成りたいんだよね」
「手塚くんに?」

はた、と腑に落ちなさそうな顔で聞き返して来た都ちゃんに頬杖を着きながら手のひらで口元を隠し笑う。
国光みたいには成れない。それはどう足掻いても成れないのが分かるがああいった生き方をしてみたい、というのがある。

「私言語化下手だからうまく言えないや」
「真梨ちゃんだもんね」
「どう言う意味」

都ちゃんの頬を抓るとイーンと泣き真似をしていた。かわいいね。

「都」
「ッ!周助?!びっくりさせないでよ!」
「京極さんも一緒だったんだ」
「ちーっす」
「あはは、越前みたいだね」

するり、と恐らく気配を消して都ちゃんに近づいてきた不二周助。私のことも目に入っていただろうにさも今気づきました、と言う不二に苦笑いが漏れる。

「何の話してたの?」
「憧れの人居るーって」
「へえ、京極さんってザビエルとか言いそうだよね」
「何で都ちゃんと同じこと考えてるの?」
「共通イメージなんじゃない?真梨ちゃんの」

私の共通イメージが憧れの人、ザビエルであってたまるか。

「真梨ちゃん、手塚くん憧れなんだって」
「……へえ」
「なんですかその顔」
「いや、ふふ、そっか。そうなんだね」
「はぁ?」
「京極さん、面白いこと教えてあげようか」

なんでしょうか、とじと目で不二を見やる。なんだか酷く楽しそうに笑っていて訳が分かっていない都ちゃんは目をぱちくりしているし私はなんかむかついていた。

「手塚の憧れの人、京極さんなんだって」
「は?」
「えっ!」
「そんな訳ないじゃん」
「こないだ興味でね、聞いたんだよ。手塚に確認してもいいよ」

理解が難しかった、国光の憧れの人が私なわけがない。

「仲良いんだね、2人」
「……ちょっと聞いてくるわ。またね都ちゃん、不二」
「うん、またね」

脳で咀嚼出来ないので聞くことにした、ひらりと都ちゃんに後ろ手で手を振る。多分私が座っていた席には不二が着席して都ちゃんと話しているだろう。


***


国光はクラスに居た、前の席にドカッと座って後ろを向けば「どうした」と読んでいる本から顔を上げずに私に投げかけた。


「不二から聞いたんだけど憧れの人、私ってホント?」
「……ああ、そうだが」
「体調悪い?大丈夫?病院行く?」
「至極真っ当だが」

パタン、と本を閉じてこちらを見てくる国光の表情は少し居心地悪そうだった。

「さっき都ちゃんと憧れの人の話してたんだけど」
「ああ」
「私は国光だ、って言ったんだよ。そしたら後から来た不二に笑われながら国光は私だ、って言ってたって聞いたから確認しに来た」
「……そうか。俺は真梨に淡く憧れを抱いている、と思う」
「思う」

ふー、と軽く息を吐いて眼鏡をあげなおす国光を見て完全に今じゃないが顔がいいな、と思ってしまった。

「俺は真梨の様には生きれない、が生きてみたいという気持ちもある」
「……はは!おんなじ!私も国光のことそう考えてた」

なんだかじわり、と内から熱が上がって来て小っ恥ずかしくなった。
机に腕枕で顔を伏せばふわり、と国光の香りがした。

「私は国光に成れないけど成りたい。国光は私の先を歩く人だから」
「……俺は、真梨は俺の一歩先を歩いていると思っている」
「…………私ら考え似てるの?」
「そうかもしれないな」

はー、とため息を吐く。そのまま顔を伏せていると髪の毛が触られる感覚があった。

「国光、そのままで居てね」
「無論そのつもりだが」
「国光が国光らしくある限り私は国光のこと好きだからね」

げほ、と急に咽せた国光にどしたの、と声を漏らせば「なんでもない」と返って来た。

「そうだ国光、次の試合見に行っていい?」
「いいが、どうしたんだ」
「なんか国光のテニス見たくなった」
「……そうか」

国光を下から見上げれば照れ臭そうにふい、と顔を逸らされた。くにみんってば照れ屋なんだから。

で、次の試合っていつ?



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