※プロテニスプレーヤー
目に見えて空港のゲートに人が増えている、めんどくさいなぁとサングラスを上げ直した。
『いつもの駐車場で待ってる』
多分たどり着くまで時間が掛かるだろう、そう相手に連絡して駐車場へと向かった。
少し離れた駐車場に止めているおかげで周りに車は見られない、はぁと軽く息を吐いて運転席を倒して横になった。
30分程経っただろうか、近づいてくる足音に意識を浮上させる。
「おかえり」
「ただいま」
荷物を預かろうと運転席から降りて彼、国光へと声を掛ける。少し顔に疲労が見える、それもそうだろう。
「大丈夫だ」
「そう?今開けるから待って」
後部座席の扉を開ける、ボスンと重そうな音が聞こえる。毎度律儀にお土産を買うものだから荷物が増えていくのだ。
「はー、お疲れ様。長かったでしょ」
「ああ、相変わらず体が凝るな」
助手席に乗り込んだ国光を確認してシートベルトをしようとすれば「真梨」と声を掛けられた。
「ん?」
左頬、右頬に軽く触れる感覚。ぽかん、としていると体を元に戻しさも何もありませんでした、と言わんばかりの国光が目に入った。
「え?何?何が起きた?」
「挨拶だ」
「え?今?急に?ちょっとまって」
チークキス、急にされて心臓がドッとうるさい。国光もやった側のくせに恥ずかしかったのか少し耳が赤かった。
「コーチとかに茶化されたでしょ絶対」
「なぜ分かった」
「国光分かりやすいよ!……はぁ」
シートベルトを握っていた手を離し、私は国光の方へと体を乗り出した。
そのまま少し外を見ていた国光の顔をこちらに向け触れるだけのキスをした、ついでにわざとらしく音を鳴らして。
「……仕返し」
べ、と舌を出して国光に言えば国光は自分の手で顔を覆ってしまった。
「………………真梨、家に帰ろう。出かけるのはそうだな、明日以降だ」
「いやあのすんませんって」
「2ヶ月ほど離れていたのもあって俺は今手加減があまり出来ない気がする」
「……もしかしてスイッチ入れた?」
「ああ、心なしか疲れも飛んだな」
口角をすこし上げてメガネをあげなおす国光を見て内心涙を流した、真梨の愚か。これから運転して帰るのは私なんだぞ。