国光が好きだ、と自覚したのは最近だと思う。
テニスしてるのはもちろん、勉強してる時とか山登りしてる時、釣りをしている時……つい横目で国光を見てしまっている自分に気づいて頭を抱えた。
「……断れ」
手紙を見てそういう国光にブワ、と毛が逆立つのを感じた。いや、アハハ、国光の独占欲?と内心ぐるぐると考えてしまうのは悪い癖。
気を紛らわそうと国光の近くから少し離れる、心臓がバックバクだ。
ちらりと横目で国光を見ては好きだなぁ、と内頬を噛む。
***
「ドイツに留学する」
「……それは、ガッツリ?」
「あぁ、ドイツでプロテニスプレーヤーになる」
以前に行った治療、とは違い本格的に留学をするみたいだ。ドイツ、ドイツかぁ……とぼんやり考える。気軽に行けるわけもない場所だなぁ……。
「……帰ってこない?」
「卒業式には一度帰ってくる、が基本ドイツに居る」
「そっかぁ……中々、会えなくなるね」
寂しい、なんて言えずに情けなく頬を搔く。今居る国光の部屋にも行くことは無くなるし、国光も私の家に来ることも無くなる。
「……俺としては、真梨も共にと思っているがそうは行かない。ここで待っていてくれ」
「ゔ、泣きそう」
「泣くな、どうしていいか分からなくなる」
国光の前で泣きたくない、し別に会えなくなる訳でもない。泣きそうになるこの目を、目頭を抑えて無理やり止める、舌も噛んでおこう。念の為。
「泣かない、私は強い子なので」
「ふ、そうだな」
「でも、……国光が居ないのは寂しい、かも」
しまった、口を滑らせた。あ〜、と頭を抱えると国光が笑っている気配を察してぽこん、と軽く叩いておいた。
「ねえ国光」
「なんだ、お土産か」
「それは別にいいよ」
本を読んでいる国光は顔を上げずに言葉を発する。あぁ、もうままよ。
「私国光のことが好きなんだ」
目をパチクリとさせる国光、酷く珍しい表情だ。
「私を忘れないでいて欲しいな、寂しくなっちゃうから」
「真梨」
「ごめん、言うつもり無かったのに。ごめん」
「真梨、聞いてくれ」
さっき無理やり押えたはずなのに涙が滲む、こんなの国光の負担にしかならないじゃないか。
立ち上がりごめん、と呟けば国光に腕を掴まれて抱きとめられる。
「俺も真梨が好きだ」
「うるさい」
「そう言うな。……真梨に先を越されるとは思っていなかった、すまない」
「……私の事忘れないでいてくれればいいよ」
「忘れるものか」
ぐり、と国光の肩口に頭を押し当てる。狡い、それは狡いと思うよ。
「むしろ、こちらのセリフだ。……俺を、忘れないでくれ」
「忘れろって言われても忘れてやんない」
肩口から顔を離して国光を見ながらべー、と舌を出す。行儀が悪いぞ、と言いながらも軽く笑んでいた。
「……私、ちゃんと恋人がいるのでって言うから国光も告白とかされたら断るんだよ、もし一夜明かしたとしても私に言わないでね」
「するものか、真梨は俺を信用していないのか?」
「……」
「おい」
「嘘嘘、信用してるよ」
すん、と鼻をすする。想いが通じたのは良いけれど国光がドイツに行くのは変わらない。
なんだかまた、寂しくなり国光の頬を引っ張っておいた。
***
「手塚、ドイツ行ったね」
「そうだね」
「寂しくないの?薄情だなぁ」
やはり不二は苦手だ、都ちゃんがやめなよとしてくれているが聞いてない。
「寂しいよ、でも国光も私も負けないから」
「……ふーん?」
「告白したからね、お互いに」
「えっ?!まって真梨ちゃん!それ詳しく聞かせてよ!」