「0.5kg」
「は?」
「増えただろう」
「デリカシーなさすぎワロタ……増えたけど」
「そもそもが平均の下の方だ、大差ないだろう」
「平均超えなきゃいいと思ってるからね」

よいしょ、と鞄を机に置く。この朝からデリカシーのない発言をする隣の席の男は柳蓮二、なんだか小学校からの付き合いだ。もう慣れた。

「柳」
「む」
「ほら口開けて」
「……なんだこれは」
「アンパンマンキャンディ、柳はメロンパンナちゃんだよ」
「普通はあげる、と言ってから寄越すものじゃないのか」
「あげる」
「…………」

柳の口元にむき出しの棒付き飴を押し付ければ仕方なく、と口を開ける。なんとなく柳にあげたくなったアンパンマンキャンディ、柳が棒付き飴を舐めているという点でも面白い。

「幸村にバイキンマンあげたら怒るかな」
「京極コートに入りなよ、と精市は言う」
「普通部外者入れるなって」

幸村は沸点が低い、というか私に対して当たりが強いと思う。なんでか後輩の切原くんとコートにぶち込まれるし、私部外者ですよ。
あ、カレーパンマンはジャッカルにあげよ。とふと思った。

「消しゴムがない、とお前は言う」
「え?……うわ!ほんとだ、消しゴムない」
「昨日使っていた消しゴムが真っ二つに折れていたのは覚えているか」
「そう言われればそうかも、小さかったしなぁ」
「使いにくいサイズだったから、と捨てていただろう。補充も忘れていると見た」
「お見通しです」
「ならばこの柳蓮二、消しゴムを施そう」
「ありがたき幸せ、新品じゃん」
「消しやすいぞ」
「本当?サンキュー助かりィ!プリ」
「仁王と知り合いだったのか」
「知り合いも何もなんかテニス部の人に知られてんだよね」
「…………そうだな」
「柳のその溜め、不穏だよ」

柳から施された消しゴムを見る、そういえば柳はこの消しゴムをずっと使っているな、とぼんやり小学校から思い出す。素晴らしき私の記憶能力。

「そういえば柳日曜空いてる?」
「ああ、オフだ」
「中華街いこ、ハリネズミマン食べたい」
「前に言っていたやつか、いいだろう」
「よっしゃ持つべきは柳だわ」
「京極に誘われる時は大体が食べ物だな」
「私が食いしん坊万歳な感じじゃん、そうだけど」

柳が舐めていた飴がガリ、と音が鳴る。あいつ噛んだな。棒を捨てに席を立った柳を目で軽く追った後に鞄からスケジュール帳を取り出す。

(中華街、と)

至ってシンプルなスケジュール帳だ、中身も病院やテストや委員会くらいしか書いていない。

「スケジュール帳、続いていたのか」
「なんとなくね。見返さなくても書いたことで覚えるし」

ぱらぱらとめくっていたら影が出来る。ふと見上げれば座っている私の斜め後ろに立つ柳の影だった。

「歯医者」
「虫歯できたんだよね」
「痛みはしないんだろう」
「全然初期、行くのがめんどくさい」

なんとなく惰性で続いているスケジュール帳。とりあえず直近の予定は柳と中華街だ。

「栗、押し売りされない様にねとお前は言う」
「いらないからね」
「俺はされたことないがな」

ふ、と笑って自分の席に着く柳。
いや、私もされたことないですけど?



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