▼冬
ふと寒さで目が覚めた、いつの間にか足元に布団が掛かっていなかった、寝相のせいだろうか?
もぞり、と寝返りを打てばあちらに向いた背中が規則正しい動きをしている。まだ寝ている様だ。
ぴとり、と冷えた足を相手の足下にくっ付ける。暖かい。
「ん……つめてえ……」
「気のせいだよ」
「……つか朝か……?」
「んー」
足の冷たさで目が覚めたと思わしき春が寝返りを打ってきた。こちらに腕を乗せるな、筋肉の重みなのだ。
もぞり、と春の腕の中から顔を出してサイドテーブルの時計を見る、時刻は6時前。もうそろそろ目覚ましが鳴るだろう。
「ちょっと早いけど起きる?」
「……ちょっとこの時間味わうからこのままで」
「なにそれ」
「幸せだなーって」
私の後頭部に春の頭が当たるのが分かる、春は少しゆっくりしたら起きれるが私は二度寝してしまう。
「ダメ、寝てしまうので起きたいです」
「まりは寝ちまうからな、よっし!起きるか!」
「春、意識が浮上してから覚醒までが早すぎる」
「散歩も行かねーとな」
「任せた、ご飯はどんくらいにする?」
「んー……しっかり食うわ」
「オッケー、じゃあ起きるかぁ」
「おはよ、まり」
「なんか今更ってかんじあるね、おはよ春」
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▼身長
「バネ、この2年でめちゃくちゃ成長したよね」
大きめの弁当から大きいおかずをひと口で頬張るバネを見ながらふと言葉を溢す。
「そうか?」
「そうでしょ、こないだの健康診断で身長どんくらいになってた?」
「あー、18……4だった気がすんな」
「いやデカ過ぎ」
1年の時は見上げなかったのになぁ、と飲むヨーグルトを飲んだ。決して身長を伸ばしたい悪あがきから乳製品を飲んでいるわけではない。
「机がひどく小さく見えるわ」
「実際小さいしな」
「可哀想」
「足収まんねえからな、これ」
「なんか当たると思ってたのってバネの足だったの」
机から足を伸ばさないと収まらない。私の椅子にたまに何か当たるなと思っていたがそれがバネの足だった様だ。
「悪い、邪魔か?」
「いや?バネならいいよ」
「なんだそれ」
「もし佐伯とかだったら折ってる」
「お前、サエにちょっと当たり強いの何なんだよ」
佐伯はなんか、俺顔良いからみたいなのを感じてしまってなんかムカつく。顔良いを自負して許されるのは跡部くんとかくらいだと思う、これは持論です。
「でもまだ伸びるでしょ」
「……まぁ、そんな気はするな」
「ずるい、私の成長は止まった」
「まだ伸びるだろ、運動しようぜ」
「海遊びするかぁ!」
「運動枠か、それ」
もう悪あがきでもいいから伸びてくれないかな、と飲んでいた飲むヨーグルトの紙パックを潰した。
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▼通り雨
「バネ、ジャージ貸して」
「ん?……もっと急げよ!ほら!」
「私よりもバネが焦ってて草」
「そりゃそうだろ!」
悲運なことに通り雨に降られた。頭から爪先までびっしょびしょである。
上履きを手に持ちながらぺたぺたと素足で歩く、早い時間だったからか朝練あった組くらいしか居ない。
そしてバネが急いだ理由は多分シャツがぺったりくっ付いているからだろう、別にインナー着てるからいいんだけど。
「下も貸して」
「下あんま使わねーからな……ちょっと待ってろ」
「半ズボンの方でいいよ」
「忍足は体操着持ってねーのか」
「今日体育ないから」
「あー、だよなあ。あった」
「あざ!助かり!貸りるわ」
ぽい、と投げられたバネのジャージ上下。ぺたぺたと歩きながら更衣室へ向かう。途中かわいそうな目で見られたが天気予報を見ていなかったを私が悪いんだよ!
***
「サンキューバッネ」
「……なんか忍足、縮んだか?」
「バネのジャージがでかいの分かる?この腕の長さの違い見てくれん?」
「萌え袖ってやつだな」
「バネの口から萌え袖って出るのなんか良いな、そそるよ」
「何がだよ」
よいしょ、と窓際に水気を取れるだけ取った制服をかける。1日もすれば乾くだろう、頼むぜ。
ついでに侑士に『制服びちゃびちゃで草』と送れば『アホ、傘持ってきって言うたやろ』と怒られた、むかつく。