※中学から氷帝if
「侑士、ジャージ貸して」
勢いよく開けられた扉、視線が一斉にこちらに向くのが分かる。
しかしその目線も誰がやったか見れば興味が無さそうに戻るだけだった。
「なんや、また忘れたんか」
「昨日洗濯物に出したの忘れてた」
「愚かやな……」
「うるさい、今日は?」
「最後体育や」
「昼でいいか、あざ」
侑士がロッカーから出したジャージの入った袋を半ば強奪する様にして侑士のクラスをあとにする。
「借りれたのか」
「奪ってきた」
自分のクラスに戻れば宍戸が声を掛けてきた、右手に掲げた袋を見せれば苦笑いが返ってきた。
「芥川はまだ寝てんの?」
「慈郎は起きねえだろ、いつもだし」
「まぁそうだよね」
***
胸に忍足と刺繍が入ったジャージ、かなり袖が長い。丈も長いが捲れば無問題。
「真梨、そのジャージデカくない?」
「侑士の」
袖をバサバサと動かして大きさをアピールしておく。
「あー、なるほどね。いやほんと忍足くんがお兄さんっていいよね」
「は?何が?」
「めっちゃ圧あって笑った」
「こう言う時は便利だけど良いか?あれ」
「かっこいいじゃん!ほら、忍足くんじゃない?」
「何見てんだキショ」
彼女が校舎の方を指さす、窓際の席に居る侑士がこちらを見ている気がして中指を出しておいた。あ、頭がずるっと落ちてる。
「あ」
ばごん、とバレーボールが頭に当たった。これも全部侑士の所為だろ。
「おい、大丈夫かよ」
「頭ついてる?」
「取れてないから大丈夫だCー」
「じゃあ大丈夫だ」
「忍足さんごめんね!大丈夫?!」
「大丈夫ー!生きてるから!」
若干芥川からの扱いがぞんざいだと思っているが気にしないことにした、お互い様だ。
***
「侑士、ジャージ」
「……真梨、俺今飯食うとるねん、分かるか?」
「私は食べたから」
「ちゃうねん……ああ、あと頭大丈夫やったか?」
「は?喧嘩売ってんの?」
「言葉足りんかったわ、ボール当たっとったやろ」
「そんなことあった様な気もしないでもない、あ。これ私好きだから貰い」
「……俺も好きやねんけど?」
「しらね」
弁当に入っていた玉ねぎボールをひょい、と貰うとジト……とした目で侑士が見てきたので肩パンしておいた。
「せや、真梨」
「あ?」
「今日部活オフやねん、真梨もやろ。買い物頼まれてん、付き合うてや」
「は〜〜〜〜〜????????デートのお誘い?もうちょっと色気出してや」
「んー……真梨くん、うちとデート……せえへん?」
「キショ」
「乗ったんになんやねんその反応」
「まぁ頼まれごとなら仕方ないからいいよ、たい焼きね」
「いつも対価、飯やな……昇降口で待っとってや」
「1分遅くなるごとにたい焼き1個な」
「馬鹿みたいな量なるで、それ」
ひら、と手を降って侑士のクラスを去る。
実はその光景を見ていた隣のクラスの向日から「お前ら、実は仲良いだろ」と言われるのは数秒後の話。