「京極さんやね、よろしく頼むわ!」
「そんな君はバレー部の赤木くん」
「なんや、知っとったん?」
「北と尾白経由」
「そら知っとるわな」
隣の席の赤木くん、1年の時になんとなく存じ上げてはいたが2年で同じクラスになった。
北や尾白とはまた違う割と陽の人間。
「俺もな、京極さんの話聞いててん」
「悪評?」
「自分自己評価低いん?ほら、部活の助っ人やっとるやろ!」
「あぁ、うん」
「純粋に凄いな、って思てな。女バレにも駆り出されとるやろ」
「練習相手くらいにはなれるから」
やばい、赤木くんは光属性かもしれない。眩しい。若干目をしぱしさせていれば「どしたん、ゴミでも入ったんか?」と純粋な気持ちで心配してくる赤木くんを見て更に目頭を抑える。
「仲良うしたい思ててんな、なんや照れるなこれ」
「そりゃ光栄なことで……」
「北も言うてるかもしれんけど、マネもいつでもやってくれてええからな」
「刺されそうな提案却下〜」
ぽり、と照れくさそうに自分の頬を掻く赤木くんを横目に塩レモン飴を私は1つ口に含んだ、しょっぱ。
───────
「リレーばっっっっか!」
「しゃーないやん、足早いんやから」
体育祭練習中、思わず言葉が漏れ出た。
借り物競争、クラス対抗リレー、300m走、100m走。私の出る競技だ。
しかも借り物以外は全部後半に集まっており、やることが……やることが多い!状態になっている。
「足が疲れちゃう〜」
「ハハ」
「何今の乾いた笑い」
「ほら俺もほぼ同じゃん、な?」
「もしかして今園児に接するように言葉をなげかけられている?」
隣に立った赤木がワハハ!
と笑う、ほぼ同じ競技に出る赤木。違うのは部対抗リレーと300m走の有無だ。
「ほら応援もおるやん」
「一部野次と言う」
「あいつらは後で北にシバいてもらうから安心し」
1年の所にいる双子、こちらが走ろうとすると「もっと速いやろ!ちゃんとせえ!」「先輩〜♡頑張って〜♡」とキショい裏声も披露してくる、なんだよあいつら。
「ま、練習やし手抜いてええやろ」
「疲れちゃうしね」
「……練習も、ちゃんとするんやでって言われそうやけどな」
「お〜怖」
グッ、と立ち上がる。
「そうだ赤木、ハチマキとか交換する?」
「はァ?!それは、あかんやろ……」
「え〜じゃあ涼香ちゃんとしてこようかな」
「色違うやんけ」
「バレたか」
「まぁどうせハチマキ返すけどね」
「クラス対抗の時やったら、ええよ」
「……なんかガチっぽい」
「うっさいわ!お前が先に言うたんやろ!」
「え〜情緒〜」
「ほんま!お前!嫌やわ!」
───────
修学旅行、仲良い子が同じクラスならば幸せなイベントだろう、もちろん恋人や好きな人もしかり。
しかしだ、私は高校から兵庫で友達と言えるのも片手しか居ない気がする、よく話したり部活に行ったりなどするもあくまでそのくらいの線引きの人は両手以上にいるのに。
ともかく涼香ちゃんと別クラスなのが、しんどいイベントだ。
団体行動の班編成、まぁ……1人でも良いし……と思いながら遠い目していれば隣の席がガタ、と動く。
「なぁ、同じ班ならん?」
「赤木大好き愛してる結婚しようか」
「は、はぁ?!な、なに言って、はァ?!」
「いやー、このクラスで班作れそうな人居なくてさ」
「……そ、そか……」
「何」
「男子高校生を弄ぶなや……」
「意図してないけど謝るわすまんな」
「……ん」
「でも赤木良いの?友達居るでしょ」
「あー、ええねん。折角東京行くんなら土地勘ある京極のほうが強いやろ?」
「まぁ……」
「班行動言うても建前や、どうせみんなバラけるんやからな」
よいしょ、と机をくっ付けてくる赤木を横目に黒板を見る。
班行動、というのにここの班は私と赤木の2人だ。周りを見渡しても皆4、5人でもうグループを形成してしまっている。
「なぁ赤木」
「ん?」
「なんかデートみたいだね」
「俺ほんまお前のそういう所嫌やわ!」
───────
「死んだ、ホンマにお前ら2人で回っとるんかい!」
「生きろよ」
「言うても皆バラけとるやん、ほら」
「あー、まぁ、そやな」
何が好きで東京観光せねばならないのか。
赤木と決めたあってないようなルートが書かれたしおりを見ていると横から尾白がやってきた。
「赤木はね、優しいの。私を放置しないの」
「お前可哀想やな」
「赤木くん聞きました?尾白さんってばド直球な言葉を」
「俺は楽しみやったけど、ダメなん?」
「見て!これ!これを浴びなきゃいけないの!目無くなる!」
「京極やかまし!」
この騒ぎを聞いてか、涼香ちゃんと思わしき人物が「真梨ちゃん〜!」とやってくる。
ひしっと抱き合う、も涼香ちゃんの同じ班の子が「行くよ〜」言うからすぐ解散、めちゃくちゃLINEに泣き顔スタンプ送られてきた。
「俺もそろそろ行くけどな、楽しむんやで」
「おん!東京観光はな、京極先生がついとるからな!楽しみやねん!」
「あ!ずっこ!京極こっちの人間やわ!あ〜そうか!」
「なに?東京出身ってそんなデカいわけ?」
ぐ〜!と頭を抱えて去っていく尾白の背中に向けて手を振る、東京観光って言ったって何が見たいのか。
「なぁ」
「ん?」
「渋谷と原宿やったらどっちがおすすめ?」
「何を見たいかによる、けど隣駅だし歩いて行けるよ」
「……?1駅?歩いて?イカれとるん?」
「15分くらいで着くよ」
「都会怖!」