※書きたいところだけ書いた

修学旅行、3泊4日。ちょっと地獄なんじゃないかと思っている。
なにせ、友達が少ないからだ。自由行動の班割だって赤木と一緒、ほぼデートやん。可哀想だよ赤木が。

「京極さん眠い?」
「眠い……」
「あはは、いつも眠そうやもんねえ。寝とってええよ!」
「お言葉に甘えて……」

新幹線の窓際で上着を前から着て完全に寝る体勢になる。周りはガヤガヤと席移動したりと楽しくやっている中ガチ寝、すまんな。

「ここ空いとるん?」
「京極さんが寝とるんよ」
「あ、ほんまや。邪魔すんで〜」
「邪魔すんねやったら帰り〜」

とす、と隣に誰かが腰かける。ぼやぼやした意識の中誰でもいいけど邪魔はすんなよ……と思った。

「赤木〜、これ食う?」
「あー、いや。俺はええわ!」
「ほんならこれやるわ!」
「干し梅、渋ない?!」

どうやら隣は赤木らしい。
あ、意識落ちるかも。と思った時には眠りに入ってた。


***

「京極、そろそろ着くで」
「…………」

意識が浮上する、窓際に頭を擡げていたはずなのに赤木の肩に頭を預けていた。

「肩、ごめん」
「俺が勝手にやったんや、首痛ない?」
「お陰様で……くぁ……」
「えらい大きなあくびやな!」

んー、と声を出しながら軽く伸びる。
まだ完全には起きてない、また目を瞑ってじっとしてると「また寝るやろ」と赤木に揺すられた。

「赤木は……席戻らなくていいの」
「譲ってもらった、ここがええって」
「悪趣味……」
「ええ趣味って言うて?」

次は新横浜、新横浜。
そんなアナウンスが流れる、新横浜か。じゃあそろそろだわ。

「試合でしか東京来とらんから変な感じするわ」
「私は2年前まで居たよ……何観光すんの、って感じ……」
「明日は頼むで!」
「私はほぼ何もしないけど」

先生が「荷物纏めとき〜」と声をかければ周りはガヤガヤとうるさくなる。

「京極荷物は?」
「これ」
「足元に置いとったリュックだけなん?」
「うん」
「少なない……?」
「荷物なんかいらん」
「構文やめたれや」

着回し出来るし、下着の替えだけ最低あれば大丈夫だし、そもそも買えるし、と最低量の荷物。
最初にホテルに荷物を預けてそこからバスで移動するらしい。ちゃんとしおりとか見とらんので分からん。

次は東京、東京。


***


「京極さんよろしゅうな!」
「ん、よろしく」

同じ部屋割りになった子達、でもここはここでグループを組んでいる様なので……。と寝るだけだしなと考えないことにした。

「明日の自由行動って赤木と動くん?」
「うん」
「そんなんデートやん!」
「違うよ、私中学までこっちだったからさ、ラッキーと思われてる」
「え!そうなん!京極さんの庭やん!」
「個人的には今更何見るんだとは思ってる」
「あたしらも兵庫観光って言われたら何見るん?!になっちゃうわな!」

シングルベッド4つ、の端っこに横たわる。
ぱら、としおりを流し見してここからまた移動して、戻ってきて、1日目終了かぁ……ご飯ってバイキングかなぁと思いを馳せた。

「あ、そろそろ集合やって」
「ほんま?まだ荷物整理できとらんのやけど!」
「はよし!」
「もー!京極さん先行こ!」
「うん」

ボディバッグ1つだけ。「ホンマにそれだけなん」って信じられない顔で見られたけどこれだけで十分だ。
こうして改めてなんてことのない修学旅行が始まった。


***


「赤木ってさ、私の事好きだよね」

ぽろっと出た言葉。返答がない。赤木の顔を見ればそれは見事に真っ赤になってて私はぼんやりとなんでこんなことになってんだっけ。と回想した。

2日目の自由行動が終わった夜、順番に大浴場でのお風呂を終えた後ホテルの外でぼんやりしてたら赤木が「よ!」っとやってきた。

「風呂上がり?風邪ひくよ」
「大丈夫大丈夫!てかそれは京極にも言えるやんな」
「私は大丈夫」
「なんやねんその自分への絶対的な信頼」

ここは生垣に隠れて見えないはずなのにどうして赤木は来たのだろう、と赤木の顔をじっと見ながら思った。

「よくわかったね」
「あー……どこおるんかな、って聞いた」
「なにそれ。赤木はぼっちにも優しい人だね……」
「そんなん、ちゃう」
「ほーん」

クラスでもよく話しかけてくれるし仲も良いと思う、けどただ単にクラスの輪に溶け込ませようとする陽、だけではない気がする。
そこで冒頭に戻る。

「赤木ってさ、私の事好きだよね」

……返事がない、ん?と思い赤木を見ると物の見事に真っ赤になっていた。

「赤木」
「ッ、見んといて。ほんま、頼む」
「ホントに私の事好きなの」
「言わんといて!」
「顔真っ赤なんだけど」
「言わん、といて!って……言うたやん……!」

可愛い。真っ赤にしながら手のひらで顔を覆う赤木を見て、そう思った。
真っ赤な赤木の耳に手伸ばす、カチン。と体が固まった。
耳、頬。する、と撫でていけば手が下がっていく。

「ち、ちょ」

可愛い。そう思った時には赤木に顔を寄せていた。
ふに、と暖かいものに触れる。

「…………私今何した?」
「………………そ、そんなん、俺がき、聞きたい…………」

恥ずかしさ、羞恥、からか赤木の目は潤んでいる。
私は自分でした事を、処理できずNow Loading……となっていた。

「ごめん、赤木。忘れて」
「ッ、そんなん」
「ごめん」

赤木のことをまともに見ず部屋に駆け足で戻る。途中でアランとすれ違った気がしたが、そんなの微塵も気づかなかった。

「京極さんどないしたん?」
「……ちょっと、腹痛くて」
「そうなん?大丈夫?もう寝とってええよ?」
「……うん」

ベットに潜り込む。閉じた瞼の裏には赤く頬を染めた赤木と、キスの感触。あー、これ私めっちゃクズムーブやない。

結論から言うと全然眠れんかった。バスの座席も赤木から逃げるように奥の端っこへと移動した。
赤木のことは、嫌いじゃない。むしろ好意的には思ってる。だけど付き合うとかは今、出来ないでしょ。
稲荷崎バレー部は全国常連校だし、個人的に付き合う、とかでうつつを抜かして欲しくない。

「高橋さ」
「うお、なんや」
「恋人いる?」
「おるよ」
「あー、かわいいな。キスしたいなって思ったことある?」
「そんなん何時でも思っとるけど?!」
「そんなもんかぁ」
「なんやの自分……」
「それさ、付き合ってなくても思ってた?」
「……まぁ……。実際には付き合ってからしかしとらんけど」
「だよな」

隣に座っていたサッカー部の高橋に徐に声をかけた。
ほぼ話したことない私から投げられた話題に戸惑いながらも答えてくれるお前の優しさ、プライスレス。
さらに聞いて付き合ってないのにキスしてしかもごめん、と逃げた私のクズさに打ちひしがれた。

「京極」

団体行動、最後尾でぼけーっと周りを見ていると横に誰かが来てピシリ、と固まった。赤木だった。

「……赤木」
「お前、何逃げとんねん」
「……ごめん」
「……謝んやったら、すんなや……!」
「だって、赤木の同意無いし……」
「嫌や、なかった、言うても?」

今度は私が固まる番だった。いや、確かに私の事が好きって言ってたっていうか、引き出したっていうか。だけどほぼ無意識にしたというか、ソレいかれてんだけど。

「京極、俺とつきおうて」
「赤木」
「返事の前に、何考えてるか言うて欲しい」

先生の話なんて1ミリも聞いてない。すり、と赤木に握られた小指だけが異常に熱い。

「……私も赤木は、好きなんだと思う」
「……おん」
「でも、赤木にはバレーに真摯でいて欲しい。付き合ったとして、もし喧嘩とかして赤木の気分が沈んで、とか嫌だから」
「喧嘩せんよ」
「例えだよ。……あと私は察するとか、無理だから」
「俺がちゃんと言う、言わなきゃ伝わらんやろ」
「逆にさ、赤木は付き合って何したい?」

パチ、と赤木と目が合う。

「……手繋ぎたい」
「はい」

ぎゅ、と赤木の手のひらを包み込む。私よりも少し大きな手は熱かった。

「デートもしたい、兵庫案内すんねん」
「ふ、助かる」
「ハグもしたい、キスもしたい……俺から」
「うん」
「……あと、そういうことも、興味はあんねん。高校生やから」
「うん」
「でも京極やから、したいねん。もちろんバレー優先なんは変わらんけど、同等に京極を大事にしたいねんけど、ダメ?」

ダメ?と聞かれたら、ダメじゃない。という気持ちになる。ハッキリ言えない私がもどかしい。

「……分かった、俺これから頑張るわ!」
「え、何?」
「絶対に京極にはい、って言わせたんねん。アピールするからよろしゅうな!」
「いや、待って。何?!」
「でも、俺のファーストキスの責任は取ってもらおうかな〜」
「それは、ごめんて!」

修学旅行終わるまで赤木のアピールが凄く、若干ぐったりして終わった。
流石に見ていたアランや北から「何あったん」って聞かれたけどぐ……と口を開けなかった。



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