「北農園は涼香ちゃんを歓迎します」

侑と喧嘩、って言うかなんだろうな、喧嘩にしておこう。をした涼香ちゃんからの一報を聞いての返事。
大体侑が悪いし今回も侑が悪い、作業着なんだけど今更気にしないか、と信介に「涼香ちゃん迎えに行ってくる」と軽トラの鍵を回しながら声をかけた。

べそ、と形容した侑に対して笑う涼香ちゃん。
なん?これ、という意味を込めて信介を見るも横に小さく首を振るだけ。

「また来るね」
「うん、まぁ、飲みにでも行こうよ」
「その時は奢らせてね、侑の金やし」
「OK、気ぃつけてね」

ぺこり、と一礼した涼香ちゃんと訳がわかってない侑の背中を見送る、仁王立ちで。

「愛の形、不思議だ……」
「久下はあぁ言うところあるよな、侑の泣き顔っちゅーか……可哀想な侑が見るの好き……なんかなぁ……」
「癖は人それぞれだよね……」

一応、念の為。私からでもいいけど侑と直接話した信介に「治にも連絡入れたげて」と声をかけた。

「……治か?おん、今侑が来て帰ったわ。治やろ、言うてくれたん」
「……おん、そやな。真梨、治から」
「え、何?」
『真梨さん?うちのアホがほんますんませんした』
「アハ、今更〜。気にしないでいいよ、ホントに」
『俺からも言うとくんで……』
「しばらくは大人しいでしょ、信介からも灸を据えてもらったし」

治も律儀だ、一応片割れの尻拭いまではいかないけどフォローの意識があるんだから。

「また食べに行くよ」
『是非、あのポンコツにツケとくんで』

ん、と信介に携帯を返す。
さて仕事は何が残ってたかなー、と考えるも涼香ちゃんと一緒にやった事で巻きで終わっていたのだ。
これやったら明日オフでも良さそうかな〜でもひと区切り〜……と悩んでいると電話を終えた信介が隣にやってきた。

「まぁ、一件落着やな」
「侑はホント、涼香ちゃんと治が居てよかったわ。あと信介もね」
「そうか?」
「ちゃんと叱ってくれる人がいるのはありがたいもんよ」
「……そやな」

ふ、と笑う信介。大人になってしまうと叱ってくれる人、と言うのは格段に減る。ましてや侑はプロスポーツ選手だ、なおのこと。

「私も喧嘩したら治のところ行こうかな〜」
「……喧嘩しやんやろ」
「例えだよ」
「せんな」
「か、頑な……」
「俺が悪かったらすぐ謝んねん、真梨が悪かったら真梨が謝るまで隣にずっとおるわ」
「圧力かけんのやめてや」

屈託の無い笑みで笑う信介、まぁ今の今まで喧嘩という喧嘩をした事がないし、考えるだけ無駄かもしれない。

「現状さ、感情的にガーッとならないじゃん私たち」
「せやな」
「喧嘩に至らないんだよね、話し合いするから」
「合理的やし」
「そういう所が好きだよ」
「そういう所だけか?」
「……全部でしょ」
「ハハ」
「言わせれた……」

もにょ、と口を歪ませる。信介に良いようにされた気がして軽く肩をパンチした。
涼香ちゃんに信介のどこが好き?と聞かれた時、答えなかった。……小っ恥ずかしいから。
1番は性格、だけど今は外見だってそうだ。程よく付いた筋肉、小麦色に若干焼けた肌。短くなった髪の毛……。
性格だって高校の時よりも丸くなった、というか、近寄りやすくなったと思う。前にこれを言及したら「真梨のおかげやな」と言われたがピンと来なかった。

「信介は私のどこが好き?」
「なんや急に」
「涼香ちゃんに聞いたらさ、あれはあれで可愛いところあるって言われたんだよね」
「ほお」
「と思って。なんとなく」
「……全部、やろか」
「うわ!小っ恥ずかしい!」
「自分から聞いといてなんやねん」
「逆にさ、ここ嫌なところってある?」
「あるで」
「うわ、何」
「他の男と距離近いところ」

まじまじと信介を見た。信介もじっとこちらを見ており……。

「……近い?」
「近いな、バレー部は特に」
「え、アランとかもカウントされてる?」
「おん」
「……信介って私の事好きだよね〜!」
「やから言うとるやんか」

な、と言いながらこちらを見てくる信介に気まずさを感じて目を逸らした。目に熱こめんでくれ頼む。



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