※書きたいところだけ書いた

人ってな、寝ないとまともな思考にならないんだよ。と常日頃思っているが仕事はできてしまうこの辛さ。

「よ」
「……松田?なんで居んの?」
「おい、ここ警視庁だぞ」
「あ、そうだった。手伝い来てたんだわ……」
「おい、ヤベーな。お前何徹してんだ」
「3」

自販機横のベンチに座り、頭を下にしていると声を掛けられてゆるゆると顔を起こす。
同期の松田、捜査一課に居るはずなのに何故。と思ったら私が警視庁にいるんだった。

「休み返上してんだろそれ」
「あってないようなもんだし、ていうか松田も人の事言えねーからな。泊まってんでしょ」
「あ?俺は寝てっから」
「出たよ、屁理屈」

ガコン、と松田も自販機で飲み物を買う。
プルタブを開け一気飲みし、ゴミ箱に缶を捨てる。コーヒー一気飲みはどうかと思う、私が言えたことでは無いが。

「涼香も心配してたぞ」
「うっ、涼香ちゃんに会いたい。今から機動隊覗いて良いかな」
「居ねーだろ、アポ取れ」
「松田には会えるのに涼香ちゃんに会えないのis何?」
「知らねーよ。お前が引きこもり部署なだけだ」
「仕方ないだろ内勤業務なんだから」

松田のように手元に持っていた栄養ドリンクを一気飲みする。
それを見た松田は隠そうともせずうげえ、と言う顔をしていた。

「よし、仕事終わらせて寝る。んで次の休み涼香ちゃんとデートする」
「と思ったらお前には急遽仕事入ってリスケになるんだな」
「お前さ、言霊って知ってる?」

蓋を閉めた栄養ドリンクを投げつければ「いってえ!」と声を上げていた。ざまみろ。


​───────


長野で捜査協力を命じられた、ので長野に向かっている。
景光に長野駅の写真を送れば『え?今長野なの?なんで?』と返事が返ってきた。仕事だよ。

「すみません、捜査一課の大和警部はいらっしゃいますか」
「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「私、警察庁サイバー捜査課の京極真梨と申します」
「お話はお伺いしております、9階へどうぞ」

毎度記憶を無くす、ので受付に声を掛けてしまう。
9階だったか、とエレベーターに乗ればあっという間だ。
捜査一課、捜査一課……とフロア案内図を見ているとカツ、と特有の音がした。

「来たな」
「大和警部、お久しぶりです」
「また迷ってたのか、お前は」
「へへ」
「捜査一課はこっちだ、着いてこい」
「ありがとうございます」

少しバタついてるフロアを横目に歩いていく大和警部、先程の音は杖の音だ。

「なんかあったんですか」
「あぁ、強盗未遂だとよ。もう他の奴らが出てる」
「物騒ですね」
「そっちに比べたら大したもんじゃねえよ」
「本当に、そう」

小会議室に入ると諸々説明を受けた。
大事にはしてないが、長野県庁がサイバー攻撃を受けた。それも公安関連の情報のところを。
物の見事にそれの後始末、という訳だ。

「ここって煙草は?」
「禁煙だ、喫煙所が別にある」
「ですよねえ」
「お前、ただでさえ体壊しそうな仕事してんだから控えたらどうだ?」
「ストレスで増えていく一方ですが」

持参した社用ノートパソコンを繋ぐ、先に回線のウイルスチェックも兼ねて暫く読み込み待ちだ。

「由衣ちゃんって出てるんですか?」
「あぁ、高明とな。そろそろ戻ってくるんじゃねえか」
「えっ、やばい。身なり大丈夫ですかね、高明さんにチクられませんか」
「間に合ってねえ猫被るのやめろ」

景光の兄さんだからな、しっかりしないとチクられそうでと思いながら心の中に留める。
まぁ仕事に来たからジャケットで来て正解だった、庁での仕事は割とダル着だったから……。

「大和警部はこの後の予定は?」
「高明と入れ替わりで外に行く、ここには高明置いていくからな」
「仕事しずら……」
「慣れたもんだろ、諸伏には」
「弟のほうですけどね」

と、話していたら読み込みが終わる。
パソコンと向き合って長野県庁のサーバーに接続しながら痕跡を辿る。

「何度観ても何やってるか分からねえな」
「役割分担ですよ」
「お前、捜査苦手だもんな」
「刺さる……」

ふと、違和感。このサーバーに外からアクセスされている形跡を見つけた。

パソコンの画面に食い入るように作業をし、気がつけば2時間が経過していた。この部屋にも出たり入ったりしている方がいたが全く意識の外だった。

「一区切りですか?」
「……うぉあっ?!高明さん!…………諸伏警部」
「構いませんよ、酷く集中していたようですね」

いつのまにか対面に座っていたらしい高明さんが息をついた合間に声をかけてきて、飛び跳ねた。

「ちょっとこっち来てもらっていいですか?」
「どうかしましたか」
「とりあえず解析は済ませたのですが、外部からのアクセスがありました。IPアドレスも割り出せたのであらかたのアクセス元の所在地も割り出せています」
「……もうあとは令状を取り、行くだけですか」
「そうとも言えます」
「千里の馬は常に有れども伯楽は常には有らず……」
「はへ」
「いかに才能がある者もそれを認めてくれる人が居なければ才能を発揮できない、ということです。貴方は一歩間違えたらこうなっていましたね」
「……まぁ、確かに。警察学校時代に公安部の上司からスカウト無ければ普通に従事していたでしょうね」

すい、とノートパソコンを高明さんに向ければ操作していく。
……確かに、この技術を持っていても認めてくれる人がいなければ無意味だった。普通に交番勤務して、どこかの署内で働いていたかもしれないし、辞めていたかもしれない。今この現状に、感謝だな。

「今日はこちらに泊まりですか?」
「あー、そのつもりでしたけど早く片付きそうなのでどうしようかなって思ってたところです」
「そうですか、良ければ食事にでもと思ったのですが……」
「行きます。大丈夫です庁内でも椅子あれば寝れます」
「体を痛めますよ、敢助くん達もお誘いしても?」
「もちろん!由衣ちゃんにも会いたいので」

実は長野県警の方々が好きだ。黒田管理官も含め、大和さん、由衣ちゃん、高明さん……良い人ばかりだからだ。……まぁ、高明さんは景光のお兄さん、ということも加味されてもうそりゃ凄い好きだが。
んふー、と笑えば隣からふふ、と笑い声が聞こえた。

「妹ができたようで、実は嬉しいんですよ」
「グッ」
「貴方も気軽に兄さん、と呼んでも良いんですよ」
「致死量!」
「おーい、高明!そいつをあんま役立たずにするんじゃねえよ」
「おや敢助くん。素直な感想を言ったまでなんですがね」
「顔と声が強すぎる……」
「お前諸伏家に弱すぎるだろ……」


​───────


しくしく。
これは私の泣き声だ。完全内勤の私が現場に居合わせてしまい、そのまま現場固定された嘆きの泣き声だ。
救いと言えばたまたま巡回中だった涼香ちゃんが居ることだ。

「涼香ちゃん、私から離れないでね」
「それ、真梨ちゃんがまともに動けないからって意味でしょ」
「当たり前じゃん。本当に私ここにいてもする事ないから帰りたいけど涼香ちゃんとデートしてるって考えたらここに住む」
「結構野蛮なデート現場だね」

目の前では捜査一課と鑑識が仕事をしている。
……1歩、2歩と近づき鑑識さんの行っている動きをじ、っと見る。
涼香ちゃんは捜査一課の松田に話しかけられてそっちに行ったから決して目を盗んで、という訳では無い。

「こんにちは」
「……京極さん、また貴方ですか。下手なことしないでくださいよ」
「そんな!毎度毎度変なことしてる訳じゃないですよ!」
「現に今も踏みそうになってます」
「おわッ」

足元には線が引かれている。危うくそれを踏みそうになるも初犯では無いことを思い出して苦笑いをした。

「いやぁ〜鑑識の仕事にも興味あって」
「向いてないと思いますよ……」
「あ、やはり」
「慎重かつ繊細な業務になるんですよ?」
「まるで向いてない、と言いたげですね……」
「おいおい、何してんだお前」
「よかった、保護者の方ですよ」
「班長を保護者って言わないでくださいよ……」
「悪いな、邪魔しちゃってよ。京極、こっちこい」

班長に首根っこを掴まれる様にずりずりと移動させられる。

「お前鑑識の邪魔前科持ちなんだから近寄るなって」
「興味がありまして」
「学校時代にやっただろ」
「向いてなかった実技ね」
「自覚あるならやめとけって……」

ったく、と口に銜えた楊枝を反対へと動かす班長を横目に現場を見る。
この現場は強盗殺人未遂、犯人の足跡や指紋が検出されていることから捕まるのは時間の問題だろう。

「そんでやっぱり捜査一課の方々の出番ってワケ」
「あ?」
「出たマル暴の方」
「四課じゃねーから、どつくぞ」
「暴力反対!暴力反対!」
「もう!陣平も真梨ちゃんもダメでしょ!保護者の方呼ぶよ!」
「涼香ちゃんごめんね、悪いのは松田だからね。じゃあ……殴るね」
「殴んなよてめェ!」

このすぐあと鑑識さんに「静かにしてください」と言われてシュンとなるのであった。ちゃんちゃん。



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