じょば。

平太が漏らした擬音語である。
かくかくしかじかで平太が宙を舞った。それにいち早く反応出来たのが私だった。

「平太!大丈夫?」

ここで冒頭の音が聞こえたのだった。思わず苦笑い。抱き抱えていた私はもれなく被害に遭った。漏れなだけにね、ハッハッハ…………。

「す、すみません〜!!」
「いいよいいよ、大丈夫」
「平太!大丈夫か!」
「大丈夫大丈夫、ね平太」
「でもぉ、でも…………!」
「ん?濡れてないか?…………まさか」
「よし平太、一緒にお風呂入ろうか」

目をぱちくり、どうしてそうなったのか分からない顔をしていた。

「平太と私は体が濡れている」
「はい」
「服も濡れている」
「はい」
「一緒に入れば洗うのも一緒に出来る」
「そう、かも……?」
「良いわけあるか!お前はくのたまなんだぞ!……忘れかけるけどな」
「ひと言余計じゃない?」

でも楽じゃんなぁ……と思いながらおしっこ臭い……と匂いに苦笑した。

「風呂は別にしろ、服は一緒に洗おうよ」
「まぁ、それがいいか……」
「真梨先輩、お姉ちゃんみたいです……」
「お姉ちゃん?私が?わーい!平太のお姉ちゃん名乗っちゃおうかな」
「考え直せ平太、お姉ちゃんにするなら萌香のようなくのたまがいいぞ」
「んだこら」

平太と共に湯浴みに〜と向かっていると意気揚々とこちらに向かって歩く守一郎。

「真梨さん!平太!」
「守一郎、今暇?」
「今から委員会に行きますが……」
「平太と湯浴みに行くんだけどさ」
「え?!?!???!?!!!??」

その瞬間、爆音。守一郎の大きな声は今に始まったものでは無いが、久々にダメージ来た。
平太もぐわんぐわん頭を回してしまっている。あぁ、可哀想に。

「二人、一緒にですか……?」
「その方が手間ないと思ったんだけど食満NG出たんだよね」
「そりゃそうですよ!平太だって、ほら、恥ずかしいよな!」
「真梨さんなら……別に……お姉ちゃんみたいですし……」
「だー!!!俺だって真梨さんと湯浴みしてないのに!!!!」
「それ本音だろう守一郎」

ぽこ、と頭を殴る。誰が守一郎と湯浴みするか!
羞恥で熱が上がってきた顔を落ち着かせるためにふー、とため息を吐く。

「じゃあ平太を湯浴みに連れてってくれ守一郎、その間私洗濯しちゃうから」
「え、でも真梨さんも濡れてますよね」
「まぁ。でも二人入ったあとに行くよ」
「そ、そうですか……。いいか?平太」

こくん、と私の腕の中で頷く平太を撫でる。
かわいいな、一年生というものは。あの潮江だって可愛いんだから時間というものは残酷だ。

「守一郎ー、使用中の札掛けといて」
「はい!」
「平太、替えここに置いとくからね。ほら脱ぐよー」
「な、中もですか?」
「むしろ中メインなんだが」
「わ、わかりました……!」

平太の服を回収していく。おもらししてから時間が経ったからかひんやりしている。
ついでに私も濡れたところを、と上を脱いだらガタタッと守一郎が転けた。

「お、俺が居るんですから!!脱がないでくださいよ!!!」
「……あーもう!今更だろ!慣れろよ!」
「慣れません!!!そ、そんな、そんな!!!」
「……浜先輩は、真梨先輩のこと嫌いなんですか?」
「大好きだ!!!!」
「うるさ」

ナイス平太、守一郎が平太の方にいったついでに風呂場へと突っ込んだ。なんだか抗議の声が聞こえたが知らないフリ。
上は濡れたが、中……も若干濡れてるな、脱ごう。
下袴は無事だ、上半身で抱きとめたからな。中を着替えて洗いに行くか。

「守一郎」
「ッはい!!!」
「声でかいって、洗いに行っちゃうけどさ、守一郎は洗うものある?」
「まだ大丈夫です!!」
「まだって何、洗っちゃうから脱いで」

湯船側を覗けば平太は湯船でホワ〜、と。
守一郎は「なんで入ってきてるんですか!」と言っていたが素知らぬ顔をした。

「上だけ?下袴はいい?」
「俺、替え持ってきてないんで!」
「そりゃそうだ。上だけ貰うね」
「はい!ありがとうございます!!!」

風呂場を後にする、洗濯場がある井戸について服を水に浸していく。まだ水が冷たい時期だ。
人様の服を踏むのも忍びない、が効率化だ。

「真梨ちゃん、何してるの?」
「もかてや〜。かくかくしかじかでね」
「便利ワードのように使ってるね……。一年生はおもらし癖中々治らないね」
「まぁ可愛いけどね」
「でも今の六年は面倒見がいいの揃ってるから、卒業したらと考えると……大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫、久々知とかがやるでしょ。ほら竹谷もいるし」
「なんだと思ってるの……」

図書室に行く途中だった萌香ちゃん、また後でね。と別れた。しばらくしたらとても大きな声が聞こえてきた。

「真梨さん!!」
「風呂上がったんね、こっちも洗濯終わったから干してくれる?平太も」
「はい……でも真梨先輩の服も一緒に干して大丈夫ですか?」
「いいよいいよ、何言われるでもないし」

バサッと服を広げる。平太の服は小さいな、と思いながら三人で洗濯物を干していく……そしてふと、気づいた。
なんか、仲のいい姉弟感、ないか?

「なんだか、家族みたいですね」
「そうだねえ。平太が末っ子かなぁ」
「そ、それって、俺と真梨さんが夫婦?!」
「姉弟だろうが」
「真梨先輩がお姉ちゃんで、浜先輩が恋人ですかねえ……」
「言い得て妙だ」
「あ!あの!それ、本当にしませんか!!!!」
「しません、干したら平太、食満に戻ったよ〜って行っておいで」
「分かりました、ご迷惑をお掛けしました……。ありがとうございました……!」
「いいのいいの、1年は沢山迷惑をかけておきなさい」

てぽてぽ歩いて食満の所に向かう平太を眺めみて涙が出る、可愛すぎる。

「さて、私もお風呂入るかな」
「……俺も入っていいですか?」
「ダメに決まってんだろ」
「うわーん!なんでだ!」
「なんでもだ!!!ほら、守一郎も用具委員に行ってきな!!」
「わーん!!!!!」
「うるさい!ほらはよ行きな!!!」

チラ、と行きながら見てくる守一郎に苦笑いが漏れる。
どうして守一郎は私が関わるとこうも、変になるのか。後輩には面倒見の良い先輩だし、先輩には慕ってくれる後輩にもなるのに。

「はぁ〜」

立て札を再び使用中にし、湯船に浸かる。やはり湯船は良い。忍務が忙しい時は水浴びや体を拭くくらいで済ませてしまうからな。

「アレ?誰か入ってるぞ?」
「珍しいな、昼なのに」

最悪だ!七松と立花!!!!
咄嗟に物を投げて引き戸につっかえをする。

「どうせ入ってても忍たまだろう、入るか」
「そうだな!泥だらけだ!」
「待て!七松!立花!私が入ってるのでもうちょっと待ってくれ!」
「…………はァ〜?!何故!京極お前が!忍たま長屋の方の風呂場を使ってる!」
「話せば長い!!!ちょっと待っててくれ!何だったらもう上がる!」
「別に私は気にしないから入っていいか?」
「「良いわけあるか!!!」」

慌てて水気を取り服を身に纏う、つっかえを取ることも忘れずに。

「ハアハア……焦ったぁ〜」
「小平太一人だったら入っていたな」
「京極、お前髪の毛びちゃびちゃだぞ?」
「誰のせいだと……」
「急かしてすまなかったな」
「いーえ、私も使ってごめんな」

また、水気を取ろうと髪の毛を振り回していたらブチ切れタカ丸に追いかけ回されるのは数刻後の話である。



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