あんずちゃんは次、五年生になる。
つまり色の実習がやってくるのだ。
「私?若王寺先輩に頼んだ」
「そうなんだ?!六年の誰かかと思った……」
「実習なんて後に引き摺らない人じゃないと無理じゃない?」
「その点真梨ちゃんと若王寺先輩ってサバサバしてるもんね……」
「話しやすいよ〜」
と去年の記憶をほじり出す。一通り実習を終わったあとに「京極、お前は色の任務は向いてない」と若王寺先輩にキパッと言われ「自覚してます……」と返した覚えがある。
若王寺先輩が卒業後、会う機会もあったが「元気か」「ほどよく」といったやり取りくらいだ。
「……それってさ、浜くんに言ったの?」
「なんで?必要なくない?」
「真梨ちゃん!そういう所だよ!人の心ないんだから!もう!」
「え、ええ。何ぃ……?」
ぽこぽこ!と拳を作って殴ってくるあんずちゃんだがダメージは一ミリも無い。
「だって色の実習は守一郎に関係ないじゃん」
「そう、かもしれないけど!好きな人のそういう話、知りたいじゃん!……怖いけど……」
「だって忍者なるじゃん、割り切って……」
「もー!真梨ちゃん!割り切れないのが人なんだよ!!!」
「おっと萌香ちゃーん」
「話逸らさないでー!!!」
ぷりぷり怒り続けているあんずちゃんは放置して今帰ってきたと思わしき萌香ちゃんに手を振る。
萌香ちゃんは控えめながらも手を振り返してくれ、そのままちょい、と呼び寄せた。
「おかえり」
「ただいま、どうしたの?」
「萌香ちゃんって去年の色の実習誰にお願いしたんだっけ」
「桜木先輩と若王寺先輩かな、どうしたの?」
「ほら、あんずちゃん次五年じゃん?話あがったんだって」
「萌香ちゃんも、真梨ちゃんも先輩に頼んだんだね……」
「同級生と後輩はキツイっしょ〜」
でもあんずちゃんのときは先輩が今の五年か……。
あんずちゃんの同級生は四年だし、あの中なら……綾部か平かぁ……?あんずちゃんと誰が仲良いかわかんないけど。
「守一郎は?どう?」
「「真梨ちゃんそれは無いよ」」
「えっ」
「流石にそれは人の心無さすぎる」
「私浜くんに同情するよ」
守一郎もそうだが、あんずちゃんも萌香ちゃんもなんなんだ!
……好きあっている人物が他の人と体を重ねる事に抵抗が、無い訳では無い。そりゃあ。
でも今後、そういうことは大いに有りうる。私がやる側だって。
「ま、それはさておきあんずちゃんはほら鉢屋とか不破いるじゃん。竹谷もどう?」
「たっ、竹谷先輩はダメ!……虫が……」
「あぁ、ダメだったか。じゃあ不破どう?優しそうじゃん、知らんけど」
「そ、それは…………」
「脈アリか?」
「押せばいける」
「鉢屋もいいと思うよ?」
「なんなら二人だって」
「なんでそこで結託するの!」
またぷりぷり怒り続けているあんずちゃんにハッハッハ!と大声が出る。あんずちゃんは可愛いなぁ。、
「でも平もいいと思うよ」
「その心は?」
「割としっかり分別つけれそう」
「あーたしかに。でも喜八郎もしっかりしてそうじゃない?」
「なやましい」
「私の実習で悩まないで!!」
「事前に接吻しとく?いいよ、私やるよ」
「なんで!!!」
「私もしとこうか?」
「なんで!!!!!!!」
あんずちゃんの肩を抱いて頬に接吻しようと顔を近づけてケラケラ笑う。あんずちゃんからしたら迷惑な先輩だろう。
するとふと、気配を感じる。この慣れた気配二つ、わかりやすい。
「あんまり後輩を虐めないでくださいよっ、と」
「噂をすれば鉢屋三郎」
「と不破雷蔵」
「あんずちゃんが二人に話したいことあるって言ってたよ」
「え?!?!」
丸投げ。萌香ちゃんとすたこらさっさと足早に去った。
鉢屋は現金なので、こちらを見ずに「話って?」と聞いてるしあんずちゃんはあわあわしてるし、不破は可哀想。
「ちょっと酷かな?」
「いいんじゃない?決めなきゃ行けない時は来るしね」
「まぁ……そうだよね」