※全員出動
宿題が入れ違っていた、と聞いたのはあとの話。
私は入れ違っていなかった様でドクタケ城主の枕元に人参を置く。というよく分からない宿題を無事にこなしていた。
「立花と遣い行くのヤダ〜」
「私も嫌なのだが???」
あくまでメインの遣いは立花、周りを警戒しながら立花と山田先生の元へと駆ける。
立花一人でいいんじゃないか?と思ったが、学園に残ってもバタバタしている学園内で仕事を振られそうで、さらに嫌だ。
「そろそろ着くぞ」
「尾行無し、そのまま行って良い」
「分かった」
「山田先生!」
「立花先輩!」
「あれ、利吉さんが居る」
「え?ほんと?」
「真梨先輩も!」
「実は!かくかくしかじか!」
「そうでしたか、学園長先生からの遣いです」
今ので分かった?と近くにいた虎若に聞くと「分かりません!」と小声で言われた。分からないんかい!
メインの伝令は立花に任せて内側の扉付近へと体を預ける。
「真梨先輩、立花先輩と一緒なの珍しいですね?」
「忍務は忍務、で分けてるからね。あんま仲良くないし」
「真梨先輩が立花先輩怒らせてますもんね!」
「しー」
ふ、と見知った気配が近づくのを感じる。外に出て門前でその方向を見遣れば一年は組のよいこたち。と土井先生と善法寺。
「あれ、京極!」
「真梨先輩〜!!!!」
「しんベヱ〜!って鼻すごいなおい。土井先生の服で拭いな〜?」
「やめんか!!!」
土井先生は怒りながらもしんベヱの鼻にちり紙を当てていた。乱太郎たちを中に入れ最後に私も廃屋へと戻った。
外へと通ずるところに皆に背を向けて座る。耳は後ろの会話を聞きつつ、どう動くかを先生が指示するだろうと苦無で手遊びする。
「あ!分かった!」
庄左ヱ門、きり丸を筆頭に一年は組のよいこたちが答える。そして土井先生が大号泣、思わず笑いが盛れる。
「笑いすぎだよ、京極」
「んはは、笑うよこんなの。泣きすぎだよ土井先生」
「感動してるんだよ!」
夜も深けて周りの気配がザワザワとする。気配が増えてきたところで山田先生に伝えると「ふむ」と考えていた。まぁ、ここには先生達も利吉さんもいるが、油断は禁物だろう。
「囲まれています」
「半刻前ほどから気配が増えてきています」
「では、打ち合わせ通りに」
「まず、私と立花くんが陽動を仕掛けそのまま喜三太救出チームに合流する」
利吉さん、立花が陽動&救出チーム。
学園へ援軍要請チームと園田村に向かうチーム、乱太郎と伊作が先触れに行く。
「京極は伊作と共に護衛に」
「了解しました」
しばらく走っていると乱太郎が木の根で滑ってしまった。善法寺が降りて近寄り、手当てをするのを木の上で見守る。
(なんか嫌な気配がする)
善法寺と乱太郎が立ち上がる、その瞬間に襲いかかる影。
「乱太郎!」
善法寺なら何とかこなせるだろう、乱太郎の方に護衛に回る。
気配に気を配っていたのにも関わらず気づかなかった、クソ。
「手助け要るか!」
「いい!乱太郎と先に行け!」
「先輩危ない!」
「乱太郎!危ないから行くよ!」
乱太郎を半ば抱き抱えながら走る、とりあえず善法寺は逃げるなりなんかするだろう、と信じて乱太郎を先に走らす。
「とりあえず乱太郎、園田村に急ぐんだ。後から土井先生も来るから!」
「ッ……はい!」
ハァハァ、と息も絶え絶えになりながら乱太郎は走る。その後ろから周りに気を配りながら、追いかける。
「手潟さん」
「貴方は……」
「忍術学園六年は組の京極真梨と申します。乱太郎の護衛で参りました」
「そうでしたか、いやはや……この様な体で良く頑張ってくれました」
「とりあえず今は寝かせてやっても、よろしいでしょうか?私は引き続き、後続が来るまで」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
後で善法寺も園田村に着いた。戦闘を頼んだのもあり、善法寺を軽く休ませるように指示した後に民家の屋根の上で見張りをする。
日が昇る頃、動くものが見えてくる。人数を見るに後続だろう。
「鉢屋!」
「真梨先輩!」
「皆居るな」
「はい、後ろに雷蔵と先生方が」
「ん。乱太郎は無事だよ、伝えてきて」
「分かりました!」
「乱太郎は無事だぞー!」
よいしょ、と屋根から降りる。一年は組のよいこたちはもう結構ボロボロだ。
手潟さんは戦うつもり、それであり忍術学園の皆さんよろしく。と言った顔で思わず笑いが漏れた。
「京極も飯を食え」
「……一個も食えんなぁ、しんベヱ半分要る?」
「要る!」
「沢山食えよ〜」
柱に寄りかかってご飯を食べていると足に重み、兵太夫が眠気に耐えきれず寄りかかってきた。
「ほら、一眠りしな。みんな立って、頑張って」
「んうう〜!」
「先生、連れていきますね」
「あぁ。ついでに京極も仮眠をとるといい」
「よいこたちと寝たら起きれなくなりそうですけど」
「そうしたら後ででもいいんじゃないか?無理にとは言わないよ」
は組のよいこたちを部屋に入れればすぐ様規則正しい寝息が聞こえてくる。
「すぐ寝始めましたよ」
「ご苦労」
「忍術学園の増援ももう数刻したら来ますよね?」
「あぁ、そのはずだ」
「先生方も寝ておいた方がいいですよ、私なんか目冴えちゃって。不破と鉢屋も」
「……そうだな、交代で行くか。それならば増援と入れ替わりで京極は仮眠を取れ。いいな」
「分かりました」
出来ることはしておこう。
縄の作成、木材の解体及び作成、大まかな指示を山田先生から伺っておいた。
「真梨先輩は寝ないんですか?」
「眠くないんだ」
「行こう雷蔵、寝れるうちに寝ておこう」
「そうだぞー。私は皆と交代で寝るからさ」
「わかりました」
ふと、思った。萌香ちゃんやあんずちゃんはシナ先生と動いてるのになぜ私だけこっちで肉体労働なのか……。いやでも変装とかやれって言われてたら苦手だし、適材適所か。
「いけいけどんどーん!!!!!」
遠くからでも分かりやすい声、思わず作業の手を止めて笑いが漏れた。
「土井先生」
「あぁ、来たみたいだな。引き継いだら仮眠に行けよ?」
「分かりました。一刻したら起きたいんですけど、起きれる自信が……」
「誰か向かわせようか」
「ありがとうございます」
わらわらと人員が入ってくる、お。丁度いいところに竹谷八左ヱ門。
「竹谷!」
「真梨先輩!」
「ごめん、サラッと引き継ぎしていいか?」
「え、はい!」
皆ここでやることを聞いた後、各自作業に入る。
竹谷には専ら竹杭を纏めたり、などをお願いした。
「私ちょっと仮眠してくる」
「分かりました!」
「あれだったら潮江とかにも伝えといて、サボってるって言われたら癪すぎるので」
「わ、分かりました……」
手潟さんに許可を得て家主の居ない家へと足を踏み入れる。そのままずる、と背中を預けて目を瞑ると体は疲弊していたのかすぐ眠りに落ちた。
***
ギシ、
ぱちり。と目を開く。どのくらいだったか、完全に寝ていた。
「京極」
「…………長次が目覚まし担当?」
「……もそ」
「ありがとう、起きた。布団が恋しいな〜」
「まだ一刻しか寝ていないだろう」
「寝てらんないでしょ、ほら行こう」
「……」
どうやら土井先生が頼んだ目覚ましは長次だったようだ。首を回し、肩も回し関節を解す。
周りを見遣れば一刻でかなり作業が進んだと見える、流石人の手があれば進むな!
「戻りました」
「あぁ、京極。ちょっとこっちを手伝ってくれないか?」
「?良いですけど、このメンバーは火薬委員では?」
「まぁそうだな。橋を爆破するんだ」
「道を断つんですね、分かりました」
「真梨先輩って頭の回転早いんですね……!」
「おいどういう意味だ」
橋を支えている木と木の間に爆弾を仕込む、火薬委員の顧問の土井先生も居るし、特に手間取ることはない。
「あ〜、下に引っかかっちまった」
「取れそう?」
「……よし、斉藤、ちょっとそこに居てくれない?」
「え?」
ほっ、と橋の裏側に降りる。導線が下にズレて引っかかっ手しまったので修正せねば。
「斉藤〜!爆弾頂戴〜」
「ええ!そこにも付けるんですか!」
「あるに越したことはないだろ」
ふぎぎ、と腕を伸ばす斉藤から爆弾を受け取り設置する。
逆上がりの要領で橋の上に戻ってくると「忍者みたいだ!」と三郎次に言われてさすがに笑った。
「タソガレドキ来たね〜」
「なんか真梨先輩、楽しそうですね」
「楽し〜よ!戦見るの好き!あっ、これ大声で言っちゃダメだから。箝口令な、竹谷」
「わざわざ言いませんって!」
「竹谷、話変わるんだけど私だけこっちだと思う?」
「……そりゃ、そうでしょう。適材適所ですよ!」
「ええ〜?」
「なーに話してんだ?」
「なんでくのたまで私だけこっちだと思う?って話」
「そりゃあ……」
「なんだお前ら」
脇からやってきた鉢屋も竹谷と見つめあって言葉を発した。
「真梨先輩、町娘に変装して〜とか苦手じゃないですか」
「うん」
「圧倒的に戦ってたりする方が強いじゃないですか」
「うん?」
「それが正解ってことだよな」
「これが適材適所ね」
***
夜、村内の巡回をしていると臨時保健室の方が慌ただしくなっていた。
「どうし……どうした?」
「伊作先輩が穴に!」
「なんで落とし穴……綾部か〜!!!」
「伊作!乱太郎!」
裏山の方から七松、潮江、長次がやってきた。どうやら曲者が居たようだがまんまと出し抜かれてしまったという訳だ。善法寺のそれは、不運だ。
「一番最初の負傷者すぎない?」
「笑わないでくれよ〜」
「先生に伝えてくる、面白〜」
「遊びじゃないんだぞ京極!」
「分かってますって」
伝えに言ったあと、立花が帰ってきた。
なんか池の匂いがする、と言えば怒りのやりどころがないような顔でこちらを睨んできた。なんだ。
「斉藤、気をつけなね」
「はい!」
「山田先生もお気をつけて」
「あぁ」
タソガレドキ陣営へと出発した二人を見送る、この様子だとこちらも明日から戦いになりそうだ。
少し仮眠したのち前方を見やる。
轟音、こちらまで届く音。
「伏せろ!」
「塹壕に入れ!瓦礫にも気をつけろ!」
一年や、低学年を中心に塹壕に押し込む。降り注ぐ瓦礫からも怪我をせぬように身を覆い、耐える。
土を跳ねてこちらに届く砲弾は一筋縄ではいかないな。
「真梨先輩!」
「大丈夫だから早く入れって!」
「ぎゃああ〜!!!」
押し込んだ後に適当な穴に入ると立花と尾浜が入っており、その上になだれ込んだ。ごめん。
「重い」
「我慢しろって」
「真梨先輩、今立花先輩と俺の上に乗っかってんのわかります?」
「イボイボする」
「早く姿勢を正せ!」
「はーいって、狭!」
「文句ばかりたれおって……!!」
砲撃が止む、恐らく熱を冷ましているのであろう。
その間にどうすべきか、と照星さんが虎若に声をかける、これは見守るべきだな。
「虎若、頭の回転が早い」
「あぁ、私がヒントを出すまでもなかった」
「照星さんって割と虎若に甘いですよね」
「……君は要らない事までよく回る口を持っているな」
「それほどでも」
「真梨先輩、それ褒めてないです」
「知ってる」
虎若達が駆けて行った方向を見ていると、轟音が響いた。その次の瞬間、爆発音。
「成功ですね」
「あぁ」
土手が無くなり水が放流していく、それに従い草地に水が浸って泥濘になっていくであろうことが分かる。
正直ここからは、私たちはやることは無い。
なぜなら佐竹衆がいるからだ。火縄銃の受け渡しもこれだけの人数がいれば十分だ。
前線に武器や装備を取り上げに行った六年中心のメンバーを門付近から見つめる、血の気が盛んで困るわぁ〜。
あ、今脳内のあんずちゃんが「真梨ちゃんもでしょ!」とぷりぷり怒ってた気がする。
「真梨先輩〜!」
「なに?左近」
「炊き出しやるので手伝ってくれませんか?」
「いいよ〜」
もう後はこちらとしては無力化を計り、タソガレドキ陣営に行った班が上手いことやってくれて終了だ。
「なんか疲れたな」
「真梨先輩!」
「うわ〜、元気な竹谷」
「庄左ヱ門達も戻ってきました、ヘムヘムも来たのでもう終わりますよ」
「何もしてないけど、なんか疲れた。ちょっと竹谷そこに居て」
「えっ?」
「人の体温っていいわけ〜、ちょっと寝るわ」
「真梨先輩〜!俺動けないんですけど〜!!」
竹谷の背中に寄りかかるように座り、目を閉じる。
起きたら次は忍術学園に戻る道なのだ、長旅だからね。
***
「廃屋にこの人数キツイだろ」
「狭ァ!」
「よ〜し!一年のよいこたち!一緒に寝よ〜!!!!」
「わーい!真梨先輩も一緒だ!」
「おい、それは犯罪だろ」
「なんだと潮江文次郎」
「なんでフルネームなんだ」
「私は一年のよいこたちとただ一緒に寝たいだけ!ほら!三治郎だって平太だってくっついてる!最高!」
「真梨先輩と一緒に寝たいです!」
「真梨先輩と一緒なら、チビっても怒られないから……」
「チビるな平太、バイオテロだぞそれ」
一年のよいこたちの目に負けた潮江文次郎は「好きにしろ!」と捨て台詞を吐いた。活躍できなかったからと言ってそう僻むな、出番は立花に持ってかれたもんな。
「真梨先輩」
「どうした、乱太郎」
「怖かったけれど、真梨先輩が一緒にいてくれたから園田村に辿り着けました。最後までありがとうございます……!」
「いいんだよ乱太郎、こういう時は年上に頼っちゃうんだよ。例え不運な先輩でもね」
「……はい!」
次の日くのたま達と合流した。
「真梨ちゃん、なんか火薬とか泥とか色んな匂いする」
「なんでそっちは華やかな匂いすんだよ!」
「真梨ちゃん〜!大丈夫?!怪我してない?」
「してないよ〜七松は骨折ってる」
「なんで?」
「アタックした、鉄球を」
「馬鹿じゃないの……?」
萌香ちゃんやあんずちゃんに何日ぶりかに会ったら初手匂いの指摘。仕方ないだろ、臭くても!
みんな合流したところで喜三太が派手な褌を掲げる、みんなで忍術学園に帰ろう。