※タソガレドキは居ないてい
あ〜しくった。動けない、までは行かないがここから忍術学園に帰るにはキツイ怪我をした。
とりあえず人が居ない所に、と動いていたところ廃城の跡地、と言った様なところを見つけた。
(ここは……)
ホドホド城、だったもの。
すっかり瓦礫と草がお生い茂って居るが、屋根があり部屋としてまだ使えそうなところも幾つかある、少し場所を借りて休憩しよう。
「……誰かいるのか?」
「ッ」
咄嗟に苦無を構える。こちらは忍服を着ており怪我をしている、どう見ても怪しい。気づけなかった、気を配れなかった。
森林の方から声をかけてきた、と思われる人物はまだ幼さが残る顔をしていた。
「忍者か?」
「……そうだとしたら?」
「ここを奪いに来たのか?」
「は?」
「違うのか?違うならいいんだ!」
「……ちょっと、休憩しようと思って」
「そうだったのか、って!怪我してるのか?!」
「いや、あの」
なんだこいつ。ずい、と向かってくる少年に口布越しの口がひくつく。
「手当てをしよう、大丈夫だ!俺はひいじいちゃんから教わってたから!」
「いや、なにが?捨て置いとけって」
「こっちにまだ生きてる長屋があるんだ、俺もそこで生活してる」
「いや、だから!!!」
話を聞かない。脳裏でいけいけどんどーん!な同級生が走り回る。
「足か?」
「……はーあ、君さぁ。全部嘘かもしれないのにこう、素直に招き入れてどうするの?」
「え!嘘なのか?!」
「じゃないけど!!!忍者なんだから嘘だってなんだってやるでしょ!!!簡単に信じるなって言うの!」
「……でも俺は貴方が悪い人には見えない!」
「なんでだよ!」
猫を被るの、やめた。
ガーガー言うが、素直な光が返ってきて目をパシパシする。
根負け、わかったよ。と言えば手当をするらしく足を、と言われた。
大人しく手当を受けている間、彼は世間話のように自分のことを話し始めた。
この場所は最近になり、いい立地ということが分かり狙われていること。過去の汚名を晴らすべく、籠城しているということ。そして彼は浜守一郎、ということ。
「……あのさ、情報を話さない方がいいよ、こっち曲者だからね」
「なにかするんですか?」
「……はーあ、恩人にはしないよ。調子狂うな」
自分で口布、頭巾を外せばぎょ!と目を開かれる。
「えっ!ちょ、女性、だったんですか?!?!?!!」
「うるさ、どっちだっていいだろ」
「よ!良くない!あぁ!!!すみません!足を!」
「うるさい……」
しかし、良く女だと見破ったな。
私の顔立ちは良くも悪くも女性的では無い、女性的というのは萌香ちゃんのような、あんずちゃんのような……。と同級生と後輩を思い浮かべた。
耳まで染めた浜、と名乗った彼を喉の奥で笑いながら見つめる。
「お前、素直だな」
「ッ!」
「なんだその顔、生娘みたいな……」
「やめろよ!!!」
「ハッハッハ!」
日が落ちている、と言うにもかかわらず声を上げて笑ってしまった。
浜はからかわれるのにもあまり慣れてないようだ。
「水場はあるか?」
「裏手にあるけれど……」
「少し体を拭く、忍務帰りだから」
「あっ、手ぬぐいならここに!」
「持ってる、ありがとうね」
言われた通りに裏手に行けば生活は出来る位の水場があった。この広さなら遠慮なく使っても良いか、と近くに置いてあった桶を使い髪の毛にかける。冷たい。
服を脱ぎ、体を拭いていく。目立つ怪我は足の手当してもらったところだけのようで他は無い、戦場の香りがするくらいだ。
「寒」
「髪まで流したんですか!風邪引きます!!!」
「暫く流せてなかったから……」
「これ乾いた手ぬぐいです、水気拭き取ってください!」
「……やけに世話焼くね」
「俺、別に世話焼きじゃないんですが!本当は!」
なんだそれ、私が世話を焼かせてるみたいな。
と腑に落ちないながらも手ぬぐいを受け取り髪の毛の水気を取る。
「真梨」
「は?」
「私は真梨、勝手に私が知ってるのもね。恩人だし」
「真梨さん!いい名前ですね!」
「……そうデスカ」
照れてしまった、ド直球に言われてこないものはない。これが喜車の術だったとしても、まぁ。
「布団、一つしかなくて」
「は?もう出るよ」
「え?!?!?!?!?!なんでですか?!?」
「いや、手当してもらったし。そこまでお世話になるつもりは」
くーん、と子犬のような目が、こちらを見ていた。
仮にも生物委員の前で、そんな、そんな顔を……!
「……布団は、使わない。浜が使うんだ」
「でも!」
「どこだって寝れるから、な!」
「!一緒に寝れば!」
「バカタレ!!曲者なんだぞ!!!!……つ、つかれる……!」
思わず同級生の口癖が出てしまった。
同衾を勧めてくるこの浜に思わずずりっ、と体勢が崩れた。
「頼むからお前は、ここで、寝ろ」
「は、はい」
両肩に手を置いて圧をかける。流石に感じ取ったのか大人しく従ってくれた。
「……まだ、出ちゃだめですからね!」
「はいはい」
「まだ傷が開きやすいんですから!!!!」
「はいはい」
こいつが寝付くまでも、大変だった。一緒にご飯を食べようとするし、なんなんだコイツは。ひいじいちゃんとやらはなんて教えたんだ。
曲者が居るのにも関わらず、すやすやと寝てる浜を頬杖ついて見つめる。まだ幼い、三年、いや四年ほどの年齢だろうか。
さて、寝ず番でもしてやるか。
***
あれから数日、もう足は大丈夫だ。と言っているのだが言う度に子犬のような顔をされて、留まっていた。
簡単に言うと、情が移った。
しかし私はそろそろ忍術学園に戻らないといけないし、このホドホド城の跡地にも妙な気配が日中ある。
浜の籠城も、終わりが近いだろう。
「真梨さん!この忍具なんですけど」
「うわぁ〜、良くもこんな古いの残ってたね……」
浜の知識はひいじいちゃんから教わったもので、昔の知識だ。
時たま教えつつ、昔の忍具については私も把握しきれてないので浜の知識を学びつつ過ごしていると気づく。
めちゃくちゃに浜に最近見られる。
見ている自覚は無いのか、私が顔を向けるとそそくさと逸らされる。
正直頭を抱える、忍者を目指して六年間学び続けてきたのでこの、目線に気付かないふりをするのは、難しい。
……しかし、私は一般的なくのいちと違って色系が頗る苦手だ。進級がかかる課題はめちゃくちゃに若王寺先輩にお願いしたし。
「浜はさ、年齢幾つだっけ」
「十三です」
「十三かぁ……」
「……真梨さんは、年上ですよね?」
「幾つだと思う?」
「えっ!う、うーん……三つ上、とかですか?」
「二つ上、おしいね」
十三、やはり四年生と同じくらいだったようだ。
私が大人に見られていたのか、答えれば「近いんですね」と笑まれた。
「浜、話がある」
「……嫌です、真梨さんここから発つんですよね……。そんなの、俺嫌です!!!」
「足だって浜が手当してくれたおかげで良くなったし、一応忍務の途中でね。……お礼になにかしてあげるよ、できることは限られるけど」
夕餉を食べたあとに向き合って浜と話す。
顔を伏せてしまった浜の髪の毛を指先で軽く撫でて、この子とはもう会わないのか……と少し考えた。
「……真梨さんを、ください」
?耳を疑った。
「……私?どういうこと?」と言えば真っ赤に染めた顔で、浜の髪を触った腕を掴まれて目と目が合う。
これは、人員という意味ではなく。性的な目で、言われている。
やばい。
「いや、あの」
「俺は真梨さんと離れたくありません!……でも、真梨さんは戻らなくては行けないの、分かってます……。だから!!……一晩だけでも、駄目ですか……」
息を吸った。すがりつかれる男の気持ち、というのはこういうのだろうか。
正直、浜相手ならやれる気がする。しかし、四年生と同年齢の子を食べてしまうのは、どうなんだ。
「……浜、私はくのいちだけどね……色は苦手なんだ」
「は、はい?」
「だから、その、上手くやれる気は……しない」
「……真梨さんは、したことはありますか」
「………………」
「真梨さん!」
「な、……無い」
がばっ、と抱きしめられる。無性に恥ずかしくなって逃げようとするも浜の力が強い。
「嬉しいです!!!」
「なんでだよ!」
「俺、俺……!!!」
「あー、もう恥ずかしい!!!やるならやろう!明日出るから!!!!」
「真梨さん!浸らせてください!!!」
***
そして割愛。
思い出すとちょっと恥ずかしいし、やけに浜は……守一郎は「好き」と言っていた気がする。
忍者に対して「好き」と言うのも、軽率な気はする。
名前だって「守一郎が、いいです」と明日発つ相手に言うもんだからもうどうにでもなれの気持ちで守一郎、と呼んだ。
忍服に袖を通す。服を着る前に自分の体に付けられた情事の跡見てクソデカため息は吐いた。付けるな、と言ったのに。
「守一郎、なんでそんな泣きそうになる」
「……だって、最後じゃないですか!!!」
「生きてたら会える、きっとね」
「……真梨さんのこと、探します。……きっとこのホドホド城の籠城も、終わりが見えて来てるんですよね」
「日中、多分だけどタソガレドキ忍軍ぽいのがウロウロしてるからね。敵対はしないこと、命を最優先にして。……守一郎はまだ若いから、きっと大丈夫だけど」
よす、と頭を撫でれば目に溜まっていた涙が決壊した。
うわーん!!!!と声を上げて泣く守一郎にどうしたものかと頭を捻り、軽く抱きしめて背中を叩いた。
「真梨さん!」
「うるさ、何!」
「接吻していいですか!」
「は、はァ?!」
と返答を待たず降りてくる唇。何度も触れる口癖にまた!勢いでまける!と守一郎の体を無理矢理剥がした。
「真梨さんのこと、大好きです」
「本当に、大袈裟」
***
「あれ〜!京極さん、遅かったですねぇ」
「ちょっとあって……入門表は?」
「ここでぇーす」
忍術学園に戻れば腑抜けた顔の小松田さん。
いつもの流れで入門表にサインをして学園長先生の元へと駆ける。
「よくぞ戻った」
「遅くなり申し訳ございません」
「何があった?」
「は。忍務終わりに足を怪我し、しばらくの間休息をしておりました。忍務は滞りなく達成しております」
「うむ、あいわかった。保健室に行って見てもらいなさい」
「ヘムぅ〜」
学園長先生に報告を終え、言われた通りにに保健室に行けば善法寺の姿があった。めんどくさいな……。
「あれ、京極。戻ったの?」
「今ね。足を怪我して手当したんだけど見てくれる?」
「うん、どっちの足かな」
「右」
「……あれ、綺麗に手当されてるね。明日には包帯無しでも大丈夫そうだ。誰かと一緒だったっけ?」
「え?一人忍務だったけど」
「……そっか、きっと優しい人に会えたんだね、京極は」
「……さてね」