※記憶戻ったあと

「え、何。真梨ちゃん……あれで付き合ってないの?!」
「……なに」
「いや……浜くん、可哀想でしょ」
「前は前!……色んな子がいるんだから、目を広げたっていいじゃん」
「それさ、前も言ってたよね」

萌香ちゃんの正論にそっぽ向く。
守一郎は最初から私のことを「好きだ」と言ってくれた。最初は私はなぜ初対面の後輩に?と思ったし、素直に向けられる好意は嫌ではなくなっていた。
記憶が戻ってからは嬉しい、とも思ったし私もそりゃ好意を抱いているわけで。
……でもそれで縛り付けるのは違うと思う、平和な世の中なのだから尚更自由に恋愛をして、色んな人に目を向けて良いと思う。

「正直、どう思ってるの?」
「…………好きだけど」
「好きだよ、って言って俺もです!でハッピーエンドじゃないの」
「……」
「もう、こじらせてるなぁ……」
「……うるさい」
「浜くんが告白されてる所とか見たらどうするの」
「え?」

守一郎が告白、……ありうるだろうな。だって潮江だって食満だって好意を寄せられている話を聞く。
私とは違い、おしとやかそうな子が似合いそうだ。熱血な守一郎を3歩下がって見ていそうな子が。

「……」
「もう、答え出てるんじゃない?」
「理解したくない」

両腕を組みうつ伏せに頭を載せる。
こんなの、嫉妬じゃないか。口では守一郎に自由にして、と言ってるのにも関わらず。
醜いこの感情が嫌だ、自己嫌悪。

「素直になればいいのに」
「難しいことを言う……」
「真梨ちゃんはさ、言わなさすぎるんだよ」
「言葉、難しい」
「ヤバい、野蛮人になっちゃった」

はぁぁ、とため息を吐く。言葉にするのがいちばん難しというのに、簡単に言ってくれる。

「放課後にでも話してきたら?善は急げだよ」


***


「真梨ちゃん」
「はい」
「行ってきなさい」
「はい……」

放課後になり、こそっと忘れたていで帰ろうとすれば萌香ちゃんに捕まる。こうなったら萌香ちゃんは強い。

とぼとぼと一つ下の階を歩く、いくら良く顔を出すからと言って少し居心地は悪い。

「あれ、京極さんじゃないですか」
「……斉藤」
「どうしたの?そんな沈んだ顔して」
「ろ組に行きたくない」
「……なぁんだ、守一郎かぁ。呼ぼうか?」
「心の準備が何も出来てない」
「ふふ、京極さんも守一郎には弱いねえ」
「……斉藤、ちょっと相談事していい?」
「ん?いいよ?ちょっと移動する?」
「うーん、クラスでいいよ」

よいしょ、とクラスの奥の窓際に腰かける斉藤。どうやら席はここのようだ。前の席を借りる。クラスの中にはチラホラ生徒が残っているがそんなに多くは無い。

「で?どうしたの?」
「……萌香ちゃんにさ、お前は素直になれって言われたんだ」
「うんうん」
「でもさ〜………………可能性じゃん、この歳って。縛り付けたくない」
「なるほどねぇ、京極さんは守一郎の事好き?嫌い?」
「……………………好き」
「それを言えばいいと思うなぁ」
「いや、でも、……よりどりみどりじゃん!相手なんて、……だから、私じゃなくてもって」
「守一郎は本気で京極さんのことが好きなのに?」

ぐ、と言葉につまる。守一郎は遊びで「好き」なんて言わないのは分かる。
まどろっこしいなぁ、と斉藤が呟く。萌香ちゃんからも沢山聞いた言葉だ。

「守一郎のが好き、でも盲目的に私を見てるんじゃないか〜ってことでしょ?」
「…………」
「好きって言うことによって守一郎を縛り付けてしまうんじゃないか〜って」
「…………うん」

斉藤を相談相手に選んでよかったかもしれない。
こういう話を真面目に聞いてくれるのは前からそうだ。

「だってさ、守一郎」

「は?」
「……タカ丸さん、ありがとう。真梨さん、話があります。いいですよね」
「えっ、え」
「ちなみに呼んだわけじゃないからね〜。素直になるんだよ!京極さん!」

斉藤が視線を横にずらせばいつから居たのか分からないが守一郎が居た。そりゃ、隣のクラスだし……と思いつつ訳の分からないまま立たされて連れていかれる。斉藤はヒラヒラと手を振り見送っていた。

「守一郎!」
「真梨さんは分かってない!」
「な、何が」

連れていかれたのは屋上に続く階段だ、昼にしか屋上は開放されていないので放課後ともなれば誰も近づいてこないエリアだ。
手を握られたまま、守一郎に詰め寄られる。
守一郎の身長は私よりも10は高く、私の顔に影がかかる。

「俺はずっと真梨さんが好き。盲目的になんかじゃない!」
「そ、れは……記憶があるからでしょ。引きずらなくても」
「嫉妬だって、します。食満先輩にも、……タカ丸さんにだって。俺に言ってくれればいいのになんでタカ丸さんに、って思って」

屋上に続く扉から日が差す。その日に照らされた守一郎は赤く、こちらも釣られて顔に熱が集まる。

「俺、思い出したの中学なんです。……それまで告白されたこともあった、でも心のどこかでこの人じゃないな。って思ってて」
「……うん」
「思い出して、あぁ真梨さんだったんだな。って」
「よくもまぁ、恥ずかしいことを……」
「真梨さんは俺のこと好き?」

喉の奥が、引き攣る。
真っ直ぐ前を見てくる守一郎が見れない。

「真梨さん」
「無理、ちょっとこっち見ないで」
「……真梨さん、キスしますよ」
「は、はぁ?!」
「ほら」
「ッ……!好き!好きだよ守一郎が!」

ちゅ、と触れる。唇に。

「なんでしたの!!!!!」
「え、真梨さんが可愛すぎて……!!!!ごめんなさい!」
「あぁもう!……悩んでた私が馬鹿らしい」
「そうですよ!早くに俺のこと好きって言えばよかったのに!」
「いや、だって、あの」
「またもごもご言うならしますからね!」
「……」

ごめんなさい!と言いつつ抱きついてくる守一郎に思わず呆れてはは、と笑いが漏れた。
大きくなった守一郎、そっと背中に手を回せばずる、と守一郎の頭が首元に落ちてくる。

「……真梨さん、もう1回……キスしていいですか」
「…………いいよ」
「や、やっぱ2回……」
「何回でもいいよ!!!なんなんだよ!!」


***


「タカ丸さ〜ん!ありがとうございました!!!!話し合えました!!!」
「うん、良かったね守一郎〜。で、なんで京極さんぐったりしてるの?」
「高校生って……若い……!!!」
「京極さんも高校生だからね?」

あれから何度もむちゅ、とされてしまいには深い方をされそうになったので制止した。ここ学校だよ!と言えばハッとした顔で「そうだった!!!」と声を上げていた。

「で?素直になれた?」
「……うん」
「そりゃよかった!あのね、守一郎はねずぅ〜っと真梨さんのこと言っててね」
「ちょ!タカ丸さん!!!!!」
「わはは〜!真梨さんって先輩達と仲良いでしょ〜?分かりやすく嫉妬しててねえ〜」
「タカ丸さん!!!!!!」

逃げる斉藤と追いかける守一郎、そういえば食満にも嫉妬したと言っていたな。

「愛されてんのね、私」
「ッ、ずっとですよ!!!!!」



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