割と致命的な弱点がある。犬が苦手という事だ。
タソガレドキ忍軍には忍犬もいて、共に忍務を行うことも少なくない。
「う、ひいい……」
「苦手だと思えば思うほど犬にも感情が伝わるぞ」
「でもこんな、小さい命〜!」
へっへっへっ、と足元に群がっている犬を見て目を瞑る。
押都さんが忍犬を携えて私を呼んだ時に嫌な予感はしたが、まさかこうなるとは思ってなかった。
「押都さ〜ん……!」
「何故こうも苦手なのか……」
「おや、忍犬の訓練ですか」
「いやなに、あやつが犬が苦手でな」
「それはそれは……」
ぺろ、と舐められる感覚。ぴゃっ、と飛び跳ねて離脱した先には山本さんと高坂が居た。
「こ、こうさか!こうさか!助けて!」
「うおっ!!!」
高坂の都合なんていざ知らず、無遠慮に抱きついて犬から逃げた。抱きついたと言うよりはよじ登ったに近いが。
「これ真梨。顔が埋もれてしまっている」
「犬来ない???」
「もごごご」
押都さんに抱き上げられ、高坂を解放する。
押都さんの首元にひし、と抱きつけば困ったような声色で「これは先が長いな……」と頭を抱えていた。
「なんてこともあったなぁ」
昼寝していると忍犬の子犬がやって来て顔をベロベロに舐められ、そのまま寝られてしまった。ので動くに動けない現状。
十年は前の記憶をふと思い出して懐かしさに浸る。
「何をしてるんだお前は」
「こ〜さか」
「……昔は犬が苦手だったな」
「別に今も得意なわけじゃないけど……」
「起き上がらんのか」
「この肩口で寝てる子犬を退かすの忍びない」
「なんだそれは」
ひょい、と犬を抱き上げる高坂を見て起き上がるか〜と意識を向けたら手が差し伸べられた。
「ん」
「……ありがと」
「……は、犬臭いな」
「顔中べろべろにされたからね、顔洗ってくる」
***
ピンチである。忍務は終わり、帰るだけなのだが木の下でめちゃくちゃに犬が吠えてる。とほほ。
しかも丁度木がここで途切れ、下に降りるしかないのに三匹はいるであろう犬に涙がポロリ、と落ちかける。
「何をしてるんだお前は」
「じんざ〜〜〜!!!!!!」
「なっ、そんな呼び方いつもしないだろう!」
「陣左、私を抱っこして犬ゾーンから抜けて」
「……」
「その呆れ目やめて!」
「お前、いい加減平気になれよ……」
「飼い慣らされてる忍犬なら大丈夫!」
よじよじ、と高坂に後ろからよじ登ればクソデカため息を吐いてよいしょ、とおぶさり直してくれた。
感謝、高坂愛してるよ、やっぱ私にはお前だけだよ。
「犬撒いたら降りろよ」
「このままよろしく高坂」
「お前、なぁ〜!!!」
***
「……随分仲良いね」
「戻りました!」
「はいおかえり、陣左疲れてるから降りてあげて」
「ありがとう高坂、恩に着るよ」
「これ、貸しだからな」
「ええっ!」
「当たり前だろ!!!」
「しょうがねえなぁ〜借りな!!山本さんに報告行ってきまーす」
はぁ、と溜息。たまたま帰りに真梨を見かけたから声をかけたが運の尽き。そこからここまでおぶさって帰ることになってしまった。
「なんだかんだ陣左も甘いよねえ」
「……ご指摘、感謝いたします。改善致します」
「あぁ、いや。そうじゃなくて、嬉しいんだよ私は」
は、と気の抜けた返事をしてしまった。
「真梨のこと、見てやってね。あれはあれで危なっかしいから」
「……存じ上げております」
「ふ、そうだろうね。困っていたらお互いに助け合うんだよ」
「失礼ですが、組頭……。もう私たちは24なのですが……」
「ん?そうだね。お互いに支え合うのは悪いことではないだろう?」
真意が掴めない。???と疑問符を浮かべながら「御意」と答えた。
「陣左、分かってないよね……」