※現パロ まりちゃ20 雑渡31くらい
駅のひっそりとした喫煙所。ほぼ誰も来ないのでどんな顔をしていても大丈夫、と気を抜いて煙草を銜えながらスマホを見ているとのそ、と人影が見えた。
「…………あれ」
ぱたぱたとスーツのポケットを探る動作が見える。煙草は出していたところを見るにライターを忘れたのだろう。
私には関係ないしな、と煙草を吸っていると圧を感じる。
「…………」
「……………………」
「火、要りますか……」
「悪いね」
「圧掛けてきたじゃないです、か………………」
ライターを差し出して顔を見て、固まった。
脳内でザットコンナモーンというSEが響き渡った。
ざ、組頭?!?!?!?!いやいや、でも私今大学生だし、組頭が覚えてるとは限らな
「煙草、やめたら?体に悪いよ」
「それを貴方が言いますか……?」
「ふふ、そうだね。真梨」
「だァ!組頭!!!!お久しぶりです!!!」
直角90度のお辞儀。不意に出会ってしまった元上司になんだか嫌な汗がダラダラと垂れる。
「そんなに畏まらないでよ、こっちでは初対面なんだから」
「い、いや、あの」
「今何歳?陣左と同じなら20?」
「あ、はい。20です」
「そっか。会えてなかったの真梨だけなんだよね、押都も会えてないって言うから居ないのかと思ってた」
ふー、と紫煙を吐く雑渡さんに(うわぁ、様になってんなぁ)と横目で見た。
ていうか私だけみんなに会えてないんだ、ぽろぽろ。泣いた。
「LINEやってる?」
「んぐっ、ははは!組頭からLINEって、ワード!はははは!!!!」
「ちょっと、笑いすぎ」
「すいません」
「あれ、真梨縮んだ?」
「……組頭が、発育がいいんだと思います」
「言い方気持ち悪いね、真梨だ」
頭をガッ、と腕で捕らえられて爆笑していた私も流石に黙った。
前も組頭は大男だったけれど、今改めて見ると筋肉は付いてるし190あるんじゃないかと言う大男のままであった。
「……ギニョールだ!え!あるんですか!」
「え?あぁ、アイコンか……。あるよ、会社に来ればあげれるよ」
「……え、遠慮します」
「え、なんでよ」
「会社はちょっと……怖いと言いますか……ほらまだいたいけな大学生ですし……」
「ふうん…………」
「組頭……皆さんは元気ですか」
「元気だよ、陣内はこないだ4人目が産まれたかな」
「またパパしてる!!!」
「陣左、〜大学らしいけど、行ってみれば?」
「…………………………同じ大学です」
「へえ〜……ってえ?なのに会ったことないの?」
「興味無いので、人間に……」
「あぁ、そうだね……」
頭を離され、スマホを見るとギニョールアイコンの組頭。名前は雑渡で笑ってしまう、そのままじゃないか。
「あ、もしもし押都?」
ビョン!と跳ねた。急に隣で押都さんに電話をかける眼帯短髪の火傷跡有の大男を睨みつける。それはもう楽しそうに目を弓なりにしたのだが。
「今さ、真梨と会ったんだけど。そう、真梨。〜駅の喫煙所、来る?……うん、はいはい」
「え、私帰りますけど」
「止めておくから、え?なんなら会社連れ帰っていい?…………分かった、後で」
帰ろうと煙草を消したらガッ、と首根っこを掴まれる。
「ということで、会社に連れて帰るから」
「私の人権は?!」
「え?この時間にここに居るってことは暇でしょ?」
「……ぐう」
「社用車だけど、私の運転の助手席に乗せてあげるから♡」
「わ、わぁ、うれ、うれしい……………………」
メソメソと泣きながら駅前に止まっていた黒い社用車をみてひくつく、黒塗りの高級車……?!
「組頭、なんの仕事してるんですか?」
「……秘密」
「ぎゃー!死ぬ!」
「人聞き悪いなぁ……」
にやぁ、とマスクの下で笑う組頭の胸ぐらを掴む。
あまりにも鍛えている大男に筋力で勝てず泣きながらシートベルトを着けた。
「組頭、結婚してないんですか?」
「してないよ」
「へー」
「聞いておいて興味のなさそうな返事やめてくれない?」
「この世ならパートナーシップとか結べますからね、高坂とかどうです?」
「そろそろ本気で叩くよ」
「ごめんなさい」
肩肘を窓に置いてだるそうに運転する組頭をじっ……と見つめる。いかにもカタギではなさそうな人間、だけどそこが惹かれてしまうと言う人も少なくないんだろうなぁ……と考えた。
「そういえば尊奈門って何歳なんですか」
「あー、何歳だったかな。中学生だったよ」
「会いたい」
「まだダメ。お前は尊奈門をむちゃくちゃに可愛がるでしょうが」
「なんでなんでなんでなんで!」
「そういう所だよ」
「……組頭で我慢します」
「私で……でじゃないでしょ。私がいいんでしょ、ね?」
「ふぁい」
なんだか立派なビルへと入っていく。も、もしかして組頭の会社……立派なんじゃないか……?
「ちなみにね、社長は殿だから」
「え!!!!私ここ入ろうかな!!!!」
「私が誘った時断ったよね?」
「それはそれこれはこれです」
車から降りてピッ、とロックする。ほへー、と車を眺めてると「置いていくよ」と言われたので慌てて追いかけた。ここに置いていくな。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「雑渡さん、あの……」
「あー、ごめんね。今日は時間取れないや」
「わ、分かりました!」
バリ美人な受付嬢が居るタイプの会社だ……と思っていたらその受付嬢さんに捕まった組頭を目飛び出してみていた。
「……組頭、絶対今の子組頭の事好きですって」
「困るんだよね、こんなおじさん相手にして欲しくないよ」
「え、でも組頭カッコイイのは見る目ありますわ」
「……真梨は私の事を揺さぶってどうしたい訳?」
「楽しいじゃないですか!」
ヘッドロック。社員の人が居る中役職持ちと思われる組頭の暴挙を止める人は誰もいない。
というか私服の一般人入ってきたんだから誰か止めろよ。
「陣内にも会ってく?」
「会います、えっ。泣きそう……」
「それ私と会った時にも言ってくれない?」
「陣内さん……押都さん……」
「もう泣いてる。やめてよ、私が泣かせたと思われちゃう」
「ずー」
「ほら歩いて」
感極まり、会う前から泣き始めた私に困りながらも笑って手を引く組頭。エレベーターに乗ってくる社員さんは組頭を認識して「お疲れ様です」とは言うが明らかに組頭の手を握って静かに泣く一般人に何事?!という顔をしていた。
「あ、みんな他言無用だから」
「は、はい!!」
「圧力〜!!!」
「泣きながら言わないでよ」
「ずみばぜん、ご迷惑おがげじでまず」
組頭から渡されたタオルハンカチを無遠慮に顔に当てる。いい匂いがする。
「組頭!」
「あ、陣内。ほら真梨、陣内だよ」
だばっ
「あ、陣内が泣かせた」
「違ッ、あぁもう!お前はそんなに泣き虫だったか?!」
「泣き虫じゃありまぜん!!!!!」
「ハハハ、説得力無いねえ」
エレベーターを降りると走って向かってきた陣内さん。ぼやけた視界で捉えたら涙が止まらなくなってしまった。
「お久しぶりです……………………会いたかったです」
「俺もだよ、元気していたか?」
「この子煙草吸ってたよ」
「あっ、組頭!」
「なんだと?……というか、昆!お前も煙草やめろと言っていただろう!」
「おっと」
よく見るとこのフロア、見覚えのある人が多い。
ずび、と鼻を啜りながら周りを見渡す。
「ここはな、忍軍だった奴らが多いんだ。記憶がある無いに関わらずな」
「ここに住もうかな」
「会社に住もうとするな」
「……今までタソガレドキだった人、会わなかったんです。だから居ないのかなって思ってて」
「私達だってね、真梨の話を一切聞かないからどうしたものかと考えあぐねていたんだからね」
「真梨」
フロアの奥の方から小走りで来る男性、見覚えはあるとも。
「押都さん」
「生きていたか……!良かった……だが何故最初が組頭なのだ……」
「おしつさん」
「ん?煙草の匂いがするな。まさか組頭、真梨の前で吸ったのか?」
「いや、この子喫煙者だからね」
「おしつ、さん」
「なんだと?煙草は害がある、辞めておけ。今何歳だ?高坂と同じであれば20か」
「お」
「学生か?就活も視野にいれるあたりだな、どうだ真梨、この会社」
「押都さん!苦しい!」
「あぁ、すまなんだ」
ガバ、と抱き締められればノンストップで喋りまくる押都さん。その顔には雑面は無く。ずらされたマスクとワイヤーフレームのメガネがついていた。
でろん、と押都さんの腕から脱力すれば組頭や山本さんからの笑い声が耳に入った。
「久々だね、押都がここまでになるの」
「心配してたからな」
「く〜……小さい時に押都さんに会いたかった…………絶対に初恋泥棒されてたもん……」
「待ってそれは犯罪だからダメでしょ」
「だから初恋泥棒なんです、ね!押都さん!」
「よく分からん」
「これが急に手を離す押都長烈さんです」
体を離し、頭をポンポンと撫でてくる押都さんを横目に皆の名刺を貰う。うおお、これが社会人の名刺…………。
「でも私とはLINE交換したもんね」
「無理矢理」
「……LINE、やるか。陣内」
「そろそろか、押都」
「まってこのおぢ2人LINEやってないの」
「そうなんだよね。メッセージでやり取りしてるの」
「LINE便利ですよ、やりましょうよ。とりあえず最初に組頭ブロックしましょ」
「次の日家無くなるからね。君」