きっと何度も夢見た綺羅星


 学校に行くために起きた朝、テーブルの上の朝食を食べていたら、気が向いてつけていたテレビが流星群が観測できるかもしれないと特集をしていた。
 流星群。そういえば、あまり見たことがないかもしれない。ぼんやりとそれを眺めていた私は、そうだ流星群を見ようと思い付く。

 「アーチャー、星を見に行かない?」
 「ん?いいね、どこに行くんだい」
 「知り合いに森林を所有している人がいるから頼んでみる。星は高いところで見る方が綺麗でしょ?」
 「僕はまだまだマスターのことを知らないみたいだね。どこで出会ったのかきいてもいい?」
 「いいよ。あれは、私が中学生だった頃……」

 一緒に食卓を囲んでいたアーチャーに天体観測を持ちかければ、あっさりと了承された。頷いた際に、金色の髪がさらりと動く。
 なら、準備をするしかない。一人だったら、一秒で帰宅するが、アーチャーと一緒に天体観測をするのなら、万全の準備をしなくては。静かな決意を心に秘め、私は昔話をアーチャーにするのだった。
 学校はぎりぎり間にあった。

 知り合いに天体観測をしたいから森林に行っていいかときいてみれば、天体望遠鏡を貸すと言われた。いや、使い方を知らないからいいよ、と断ったが聞き入れられず、当日に設定しておくから勝手に見ればいいと押し切られた。
 それをアーチャーに伝えておく、案内をしてくれる人がいて、その人が天体望遠鏡を貸してくれるらしい。アーチャーは「いい人だね」とからかうように笑った。

 「……」
 「わーお」
案内されてやってきた、手入れのされた拓けた場所に私は驚く。
 想像していたよりもずっと綺麗なところだった。庭園と呼ぶにふさわしいほどに整えられている。しかも、ガゼボもあった。私があれ、何!? と言れたら教えてくれた、ガゼボというらしい。アーチャーも周囲を確認するように見渡している。
 ガゼボの近くに天体望遠鏡が設置してあり、星座早見を配られる。
 手厚い……。知り合りは少し離れた所で星に観るらしい。どうやら星が好きなようだった。通りで対応が手厚い訳だ。
 私は去ろうとする知り合いに、家から持ってきた、好きだと珍しく明言していたお菓子か入った袋を揺らす。お礼にと持ってきたが、こんなに良くしてもらったのだから、もっと持ってくれば良かったのかもしれない。後で持っていこう。
 すんなり袋を受け取り、知り合いはお礼を言って離れていった。

 コンパスで方角を確認し、星座早見を眺める。
 見上げた空は寒いからか透き通るように星が見えた。昔の人も、こうやって空を見上げていたのかな、と感慨深くなってくる。流星は見れないかもしれないが、こうして静かに見を眺められる機会は貴重だ、ありがたく堪能しよう。
 アーチャーは天体望遠鏡を覗いていた。流屋群を見るのに天体望遠鏡がいるのか? と思っていたら、別にいらないが惑星を見たいだろうと気をつかってくれたらしい。そもそも私が天体観測をしたいから森林に行っていいかをきいたから用意してくれたんだろう。素直に流星群を見ると言えば、手間をかけさせずに済んだかも。

 「マスターも見てみる?すっごい綺麗だよ」
 「うん、見たい。えーと、何だっけ、木星?」

 アーチャーに誘われ、私は天体望遠鏡の元にいるアーチャーの隣に行く。よく見れば二席の簡易椅子が用意されていた。感謝をしつつ、荷物を近くに置いてから椅子に座り、天体望遠鏡を覗く。

 「おお……」

 図鑑で見た惑星が目に入ってくる。本当にそのままだ。形に圧倒され、感嘆が自然と出てきた。なんだか感動する。しばらく見ていて、私は流星群のことを思い出し、一旦離れることにした。覗き込んでいた姿勢を戻し、アーチャーの方を窺う。
 アーチャーは空を見上げていた。アーチャーの金髪が月光を受けて、やわらかく光る。
 隣にいる私は、星よりもその輝きに目を奪われる。アーチャーはじっと星を見つめたまま、私のことなど気にしていない。
 灰色とも青色にもとれる瞳が、星々の散らばされている空を切り取るように映している。私が天体望遠鏡を覗いている間に出したのか、ブランケットを羽織ったアーチャーは息を白く染めて、星を見つめていた。

 「──ん? マスター、何かな」

 と、私の身惚れた視線に気付いたのか、アーチャーが私の方を向く。
 月光に照らされたアーチャーは、やはり勉力的である。どきどきしてきてしまった。
 私は誤魔化すように「惑星、大きかったね」と口にする。流星群を見に来たんだよね、私。

 「流星みれるかな」
 「見れたらいいね、マスター」

 手が冷たくなったので、両手を口元に持っていき、はあと息を吐く。一瞬だけ温かくなった、持ってきた温かい飲み物が入った水筒を出そうかと返くに置いた荷物に手を入れる。水筒を二つ手に取り、一つをアーチャーへ渡す。

 「どうぞ」
 「ありがとう」

 アーチャーが鼻を赤くして、水筒を開けて、コップに注ぎ込む。ふーふーと冷ましてからゆっくり飲む。
 ……この姿を見ることが出来たのなら、星が見れなくてもいいか。
 アーチャーが私にとって、星みたいなものだから。




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