コバルトブルーの怪物を飼っている


※オリキャラ出ます。

 テレビの前で、スマホで、この試合を観戦しているファンの人たちは、雪宮さんと潔さんが話し始めるのを見て、なんて思うのだろう。
 「えっ、もしかして仲良いの!?」とか、「お互いのプレーについて話しているのかな〜」とかそんな想像範囲内の会話を想像するんだろうか。私だって、この場面だけ見たら、そういうのを想像でする。
 でも実際は。

 「1人で気持ちいい夢抱いて沈んでイってろ泥舟が」

 こんな放送しちゃいけない言葉を発しているいだから、想像って現実を超えられない。
 これを観ている人って、何を考えてながら、二人のこの場面を見届けているんだろう。

 従姉妹のアンリちゃんに勧められるがまま、ブルーロックでバイトをしている私は、試合が始まる度に毎回驚かされている。選手たちの口の悪さに。
 体を動かして、頭を使っているから、闘争心が燃えて、口が悪くなるのは分かる。分かるけど、気持ちがついていかない。どうしても、ドン引きをしてしまう。私が闘争心のない人間だからだろうか。
 同じくバイトをしている、絵心さんの血縁者である澪ちゃんはサッカーが好きで、試合の度に口の悪さにドン引きしないかと心配した時に、「サッカーに夢中だから、気にしてないよ」と返されて、無我夢中とはこのことかと感心したな。
 話が逸れた。
 ブルーロックが大きくなり、試合の様子などが放映されると聞いた際、私が真っ先に不安を抱いたのは、試合中の口論だった。
 てっきり私よりも立派な大人が関係者にいるブルーロックは、私が懸念している問題など分かりきっていて、試合中は選手の声を切る判断をするかと思いきや、垂れ流しである。全て熱々全部お届けをする判断をした。ええ……。
 そして、ブルーロックで働いている私たちも彼らの暴言をききたい放題である。
 望んでこうなっているわけではなく、國神さんのデータをとるためにリアルタイムでどんな会話をして、その会話でどんな変化がデータ上に起きているのかを測定しなければいけないのだ。まあ、國神さんだけの話ではないけれど。他の選手のデータもとる必要もあるし。

 しかし、暴言煽り山盛り試合を何回も観ていれば、私もだんだんとそれに慣れてきた。
 慣れてきたと思っていたが、今日の試合でそんな自信は撃ち砕かれたのだった。

 「……」

 ええ.....。私はドン引きする。
 いつも通り、部屋でテーブルの上にパソコンを置き、椅子に座って、リアルタイムで試合を観戦していたら、何だかドイツがギスギスし始めた。まあ、だろうな、と諦めの心境で眺めていたら、潔さんと雪宮さんが言い合いを始めたのだ。
 雪宮さんも、ひどいことを潔さんに言ったけれど、それが何倍にもなって返ってくるなんて。衝撃すぎて、データを整理するための手が止まる。
 雪宮さんのデータがガタガタと変調をきたす。見てすぐ分かるくらいの変化だ。
 ちらりと隣の席にいる澪ちゃんの様子を見れば、特に表情に変化はなかった。いつも通りに作業しつつ、データを観戦をしている。お、おお…。流石だ……。
 私のことを置いていけぼりにして、試合は進んでいく。


 試合が進んでいくにつれ、潔さんと雪宮さんは切磋琢磨したからか、試合終了後には和解? をしていた。スポーツ選手ってどうなっているんだろう。試合の中での煽り暴言は俺たちが仲良くするのに関係ないぜ! みたいな気持ち? 私だったら絶対に気にして、今まで通りの反応が出来ない。絶対に引き摺ってしまう。すごい気持ちの切り替え方だ。
 澪ちゃんは「楽しかったね!」ときらめきを目に宿し、弾ける笑顔を私に向ける。

 「みんなどんどんサッカーが上手くなっている! 次の試合も進化が見れればいいなー」
 「そうなんですね」

 笑顔が大変眩しい。私はなんていっていいのか分からず、無難に返事をする。

 「國神選手も、どんどん数値が近付いていっているし」
 「はい、良くなっています。絵心さんの目指す数値も、もう少しですね」
 「うんうん。何をやっているのは分からないし、目指す数値も何なのか分からないけど、これがサッカーが良くなるなら、私、頑張るよ!」
 「程々に頑張りましょう」
 
データを絵心さんに送り、私と澪ちゃんはそこの部屋から出た。
 初期の頃はやることがたくさんあって、猫の手も借りたいほど多忙だったら、フルーロックvs日本代表の後は予算が入ったのか何なのか、明らかに人の手が入った。でも、おろらく、世界的に有名な選手がブルーロックに来たから、失礼や不便な思いをしないように人員を増やしたのだろう。仕事が減って、助かるといいたいが私はお金を稼ぎにブルーロックに来ているので、少し複雑な気持ちだ。  
 澪ちゃんも、もっとサッカーに関わりたいと残念そうに言っていた。
 すたすたと廊下を歩く。後の仕事は雑用しかない、後は家に帰るか、ブルーロックに泊まるか選ぶだけだ。私はサッカー選手じゃないので、ブルーロックだけでは生きていけない。雑用をするために目的の部屋に向かう途中、遠くの方に潔さんが見えた。
 が、見えただけだ。私と澪ちゃん、いや清掃員の方、食事を作って下さる方もカメラに映らないように、専用のルートを通っている。働いている人の姿をカメラで中継されているサッカー選手は本当に大変だ。
 と、何故が潔さんがこちらに気が付き、一瞬だけ手を振ってきた。潔さんの試合では考えられない人当たりの良い笑みがはっとしたように消える。少し焦ったような顔に私は笑う。カメラからだと私は見えないので、潔さんが虚空に手を振っていると思われると気付いたのだろう。分かりやすい、本当に、サッカー以外では普通の人だ。私は潔さんに軽く手を振ってから、その場を去った。




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