きみの明星にふれる
「あれ」
遠目でも分かる高身長と容姿に私は思わず声を出した。
もしかして。確信を得ようと、てくてく道を歩いているその人に早歩きで近付く。
近付いていく私は、どんどん思った通りの人だと確信した。
髪の色、肌の色、やっぱりそうだ!
私はわっとその人に声をかける。
「アーチャーさん、こんにちはー!」
「名前、くん」
元気に挨拶した私の声に反応して、アーチャーさんが私の方へ顔を向けた。
どうやら買い物帰りらしい、分厚い体が動いたことで、隠れていたエコバッグが太い腕に下げているのが分かった。
「お買い物帰りですか?」
「ああ、そうだ。名前くんは、どうしたんだ?」
「私は……、新都帰りです」
「……そうか」
私はちょっと目を逸らしながら答えた。
おそらくアーチャーさんは、新都に行ってきたのに、私が鞄しか持っておらず、買い物をした証がどこにも無いのは何故だろうと疑問を抱いているはずだ。
なんたって買い物をしていないから、そりゃ何も持っていないです。
いつもお世話になっている人に、クリスマスも近いことだしプレゼントを送ろうと考え、考えついた日からちょくちょくプレゼントを購入している。そんな士郎くんへのプレゼントが中々決まらず、今日は思い切って新都まで行ったのだ。そこまでは良かった。
新都は目新しいものが多く、しかも置いてある物の種類が多かった。
士郎くんはよく物を直しているから、スパナとかドライバーとかがいいかも と考え、工具を見たが詳しくないのでよく分からず、困った私はじゃあ料理はどうだ! と意識を変えて、そちらの方に行ったが、あげたいものが選べなくて、なくなく一時撤退をしてきたのだ。本当にどれも良い物ばかりだった。あの中から一つを選ぶのって、私は難しいと思うのです。
私は藁にも縋る思いで、アーチャーに恐る恐る尋ねてみた。
「……あの、アーチャーさんって、……工具などには詳しいですか?」
「ん? ああ……、人並みよりかは色々と知っていると思うが……」
「! じゃ、じゃあ! ……料理などはいかがですか?」
「料理に関しては多少自信がある。ああ、いや。何故、そのようなことを私に?」
私は自分がどんどん顔が明るくなるのが分かる。反対にアーチャーさんの顔が困惑を分かりにくく宿していく。
「あの、図々しいかもしれないんですけど、お願いがありまして……」
困った顔を分かりにくいながらもしているアーチャーさんに、こんなことを頼むのは更に困らせるだけだろうが、こんなにも士郎くんと趣味というか好きな物が被っている人は、私の知り合いでは中々いない。
もじもじとした気持ちを振り切り、思い切って、私はとあることをアーチャーさんに頼む為に口を開く。
「私と一緒にプレゼントを選んでくれませんか!?」
「は?」
「私、困っているんです……。プレゼントを送ろうと思っているんですが、彼の好きな物については勉強不足で、ちょっと分からなくて……。でも!」
「でも?」
「アーチャーさんに先程尋ねて答えて頂いた時に私、確信しました。彼が気に入ってくれるプレゼントを買えるのはアーチャーさんしかいないって! だから、お願いです。私と一緒にプレゼントを選んでくれませんか?」
「名前くん、落ち着きたまえ。私でよければ、微力ながら役に立とう。……それで、どこの誰にプレゼントを渡そうとしているのだね」
「衛宮士郎くんです。アーチャーさん、遠坂先輩の家で働いていらっしゃるんですから、ご存知ですよね? 仲良くされているでしょう?」
「……」
アーチャーさんが眉を顰めて、額かこめかみかは判断がつかないところに手を当てた。
ごにょごにょ何か口の中に言葉を持て余したアーチャーさんは、私の強い頼みに首を縦に振ってくれた。良かった! 私はアーチャーさんの予定の空きを確認し、再来週の休みに一緒に新都に行ってくれることになった。
待ち合わせ場所と時間を決めて、買い物帰りであったアーチャーさんに深い謝罪をし、その場を解散した。
安堵が私の胸のうちに広がる。これでプレゼントは安心だ。しかも、初めて出会った時から気になっていたアーチャーさんと出かけられる!
アーチャーさんって、士郎くんに似ている。前髪を上げていて分かりにくいが、顔がそっくりなんじゃないかというレベルで。
私は士郎くんの知らない血縁者ではないかと疑っていた。士郎くんにそういうことは聞けないし、アーチャーさんは士郎くんのことを好きではないようだし。
そんな事情もあり、私はアーチャーさんという人をもっと詳しく知りたいと前々から考えて、対話の機会を伺っていたのだ。
先程は必死で、対話の機会についてのあれこれなんて頭から抜けていたが、冷静になった今、なんかチャンスが巡ってきたなと率直に思った。
仲良くなりたいけど、なれるかな。
帰路につきながら、再来週来ていく服とか靴とか鞄とかを頭に思い浮かべる。