ピンク・プラネットの住人
家のテレビに映る幼なじみを見つめる。
両親と兄妹が蘭世の活躍を見て、我が事のようにはしゃいでいる。
テレビの中で潔世ーくんと連携してサッカーの点を取りにいく幼なじみは真剣で、それだけサッカーに本気で取り組んでいるのが伝わってくる。
蘭世が楽しそうで良かった。でも、なんだか随分と遠い存在になってしまった。自然と溜め息が出てくる。この家で、私だけが置いていかれている。
けど、その気持ちって当然だ。今までいつも隣にいた幼なじみがテレビに映り、サッカーのプレーで実績を残しているなんて、すぐには受け入れられない。
私が器の大きい人間であれば、蘭世が活躍してくれて、幼なじみとして誇らしいよ……、みたいな言葉を吐けたのだろうが、あいにくと私は器の大きい人間ではない。
なんだか悔しいような、悲しいような、嬉しいような、そんな微妙な気持ちにしかならない。心が狭いから。あーあ、蘭世、私の手の届かない、遠くに行っちゃった。
私は昔を懐かしもうと目の前の盛り上がり続ける試合から目を逸らし、過去を思い返すのであった。
「名前 」
「あ、蘭世」
「帰り? 一緒に帰ろ、帰ろ」
「うん、いいよ」
とことこと別のクラスの蘭世が先生の話が終わったので、廊下に出てきた私に声をかける。
何も考えずに頷く。私は今日、習い事があるから、友だちと遊ぶ約束をしていなかった。家に帰ったら、すぐ、支度をして習い事に行かなければいけないのだ。
でも、おろらく蘭世も私を同じだろう。
蘭世はサッカーチームに入っていて、ほぼ毎日通っている。だから今日も行くはずだ。
そろそろ一緒に遊びたいんだけど、蘭世って次はいつ休みないだろう。サッカー大好き蘭世に、きいていいのか分からず、とりあえず、無難な話を続ける。
「でね、先生が体育の時に転んだと思ったら、起き上がって、みんなはこうならないように気を付けようって言ってさ。先生は教師の鏡だよ。身を削って大変そうだけど」
「本当に転んだんじゃないのか」
「えー、そうなのかな。先生、保健室、ちゃんと行ったかな」
「心配?心配?」
「うん、無理していないといいな」
蘭世に指摘され、今日体育であった出来事が先生の誤魔化しかもしれないと気付き、大丈かなと心配になる。
割とからかってくる男子が私のクラスにはいるし。転んじゃったって確かに言いにくいだろう。なんだか心配になってきちゃった。先生、落ち込んでないといいけど。
「……名前 、今度の日曜、暇?」
「ん? 暇だよ。なあに、サッカーの試合?」
「うん、来てほしい。これそう?」
「あ、うん、行けそう!」
蘭世がぱあ、と笑う。とても嬉しそうで、蘭世が嬉しそうだと、私も嬉しくて。私も同じように笑った。
あの後、家族と一緒に蘭世の試合を観戦しに行ったな。サッカーが見るからに上手くて、よく活躍をしていて、誇らしい気持ちになった。蘭世の努力が実っているのが嬉しくて……。
……あんなに一緒にいたのに。
目を開けば、蘭世が変わらず、テレビの向こうで活躍していた。
まあ、でも、蘭世が活躍を出来ていて良かった。少し前に行われたブルーロックVS U-20日本代表ではずっとベンチで悔しかっただろうから。
何か休暇が貰えたと一時的にこちらに戻ってきた際に次は必ず活躍すると言って、意気込んでいたのを良く覚えている。
蘭世に会いたい。
ふと、そう強く思ってしまった。少し前に会って、サッカー頑張ってねって応援したばかりだというのに。蘭世の味方でいるって決めたばかりだというのに。自分の情けなさに軽く俯いた。そして、すぐ、実況者が大きく声を張り、こちらを盛り上げようとする言葉がスピーカーから流れてくる。
おそるおそる、顔を上げてテレビを見れば、潔世一に蘭世が駆け寄り、ゴールを決めたことを喜び合うのが映し出される。
……また、遠くに行っちゃったかも。
私の心境など知らずに父親と母親が、蘭世くんすごい!と私の側に来て、はしゃいでいる。兄妹もそうだ。盛り上がり続けている、ずっとずっと。
……へこんでいても、どうにもならないし、今は盛り上がるしかない。
私は今抱いている気持ちを吹き飛ばそうと、家族のテンションを真似るように声を上げた。