きみと同じ轍をふんでいる


 「アーチャーさん、こんにちは!」
 「ああ……、こんにちは」

 待ち合わせ時間よりも十五分程早く、指定した場所に行けば、すでにそこにはアーチャーさんが立っていた。私はわっと驚き、走ってアーチャーさんの元へ向かう。
 もういらっしゃっていたんだ……! ばたばたとアーチャーさんの側で足を止める。
 息を弾ませつつ、いつも通りのテンションで挨拶をすれば、アーチャーさんが少し間を空けてから、同じ言葉と返してくれた。

 「早く来て下さってんですね! ありがとうございます、今日はよろしくお願いします!」

 ぺこりと下げる。まだ微妙に息が整っていない私を、アーチャーさんが何とも言えない表情で見ている。何だろう、髪の毛が走ったせいで乱れちゃったかな。どうなんだろう。ここで手鏡を出すのも失礼だし……。
 今度は焦り始めた私に、アーチャーさんが口角を上げた。

 「そんなに焦らなくてもいい。今日は全力を尽くさせて貰おう」
 「ありがとうございます!……ところで私、髪、変じゃないですか?」
 「? いや、かわいいよ」


 アーチャーさんは事前に店を調べてくれていたらしく、あの日質問した調理関係と工具関係の物品がある所を私にたくさん教えてくれた。

 「どういうものを贈りたいかは決めているのかね?」
 「うーん。士郎くんが喜んでくれるものがいいですかね。あっ、後よく使ってくれるものがあればいいな、とか考えたり」
 「君が渡すものならば、あの未熟者はなんでも喜ぶだうう。予算はいくらだ」
 「このくらいかなーって。前に見た時はこれくらいが一番高かったから」
 「……ふむ。承知した」

 あの店はこれとこれがある。次の店は前の店には無かった、これがある。
 アーチャーさんって凝り性なのかも。そう思うくらい、アーチャーさんは私の願いに対してきっちり調べてくれていた、こんなに詳しく説明をしてくれるまで、どれほど時間をかけてくれたんだろう。私があんなに強引に決めたというのに。あまりにも人が良すぎて感動と申し訳なさが湧いて出てきた。

 「今日は本当にありがとうございます」
 「まだ何も買っていないぞ」
 「いえ、お礼を言いたくなっただけです」
 「そ、そうか…...」

 感謝の気持ちをアーチャーさんにいきなり伝えれば、いきなりのことでアーチャーさんが驚いていた。持ってきたその店の二つの品から、私の方へ顔を向けたアーチャーさん表情が初めて目にする顔だったので、感謝を伝え良かったとしみじみ思った。


 「わー!すっごい良いの買えました!ありかとうございます!」
 「いや、礼を言われることはない。だが……、君の気持ちは受け取ろう」

 私はきちんと包まれた贈り物が入った紙袋を握りしめ、アーチャーさんにお店の邪魔にならないところでお礼を言った。これなら士郎くんもきっとおそらく喜んでくれるだろう。必要な時に使ってくれたのなら、とても嬉しい。なんて、うきうきしていたら、謙虚を極めたような言葉が返されて、首を左右に思わず振ってしまう。十分、お礼を言われることをアーチャーさんは私にしてくれた。

 「そんなことないです! たくさんお礼をさせて下さい!」
 「そうか……、なら、少し付き合ってもらおうか」

 必死にアーチャーさんに伝えると、アーチャーさんが少し考えるような仕草をして、それから私の目を真っ直ぐに見ながら、そんなことを言った。何だろう。私は疑問を抱きつつも、しっかり頷いた。

 そうして私たちはとある飲食店に入店する。最近新しく入ったテナントのオシャレなお店だった。
 入りながら、店内の様子を窺う。新しいだけあって、綺麗でピカピカしていて、椅子もテーブルも店内に合うものが鎮座していた。 
 店員さんに案内されて、アーチャーさんと席に座る。

 「色々ありますねぇ。うーん、私、このケーキと紅茶にします。アーチャーさんは?」
 「私は、紅茶だけにしよう」

 アーチャーさんが店員さんを呼ぶボタンを押してくれた所で、もしかしてアーチャーさんはもうすぐ三時になるから、私をここに連れてきてくれたのかもしれないと気付く。また気を遣ってもらってしまった。アーチャーさんは私に付き合ってくれている間、度々気を遣ってくれていた。本来であれば、強引に付き合わせた側の私が気を遣わなければいけないのに。恥ずかしくなってしまい、やってきた店員さんに注文する際、いつもより小声になってしまった。

 「どうかしたのかね」

 店員さんが去った後、アーチャーさんが私に声をかけてくれた。

 「いえ……、ちょっと、勉強になったなあ、と……。私のことよりも! 本当に今日はありがとうございました、大変お世気になりまして……」
 「名前くんは、律儀なんだな」

 懐かしむような眼差しであった。
 しかし、その色はすぐに伏せられ、アーチャーさんが首を左右に小さく動かす。

 「本当に気にすることはない、君の助けになれたのならば良かった」

 まるで士郎くんみたいなことを、アーチャーさんは口角を上げて、何でもないように言う。

 「アーチャーさんって……」
 「うん?」
 「……紅茶、お好きなんですか?」

 アーチャーさんって、士郎くんに似ていますね。ぽろりと口を突いて出そうになった言葉を呑み込み、別に気になったことを代わりに尋ねてみる。
 それからじっくりとアーチャーさんから紅茶についての詳しい説明されて、大変有意義な時間を私は過ごすこととなる。
 士郎くんとアーチャーさんって、やっぱり似ているんだよな……。




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