天上のいちばんぼし


 クリスマスが来る。
 私は士郎くん、セイバーさん、桜ちゃん、大河ちゃんにプレゼントを買った。
 それを士郎くん家で行われるクリスマス前に各自へ渡したい。クリスマスに渡せばいいじゃんとあきれられるだろうが、麗しの遠坂先輩が士郎くんの家のクリスマスに来るらしい。私は遠坂先輩とあまり喋ったことがなく、高嶺の花であることとアーチャーさんの雇い主であることしか分からない。
 そもそもいつもお世話になっている人へのプレゼントなので、遠坂先輩はギリギリ趣旨に入っていない。
 あと、なぜ各自といえば、四人いっきに渡したら四人一斉にお礼を言われる可能性があり、四人一斉のお礼はちょっと照れると判断したからだ。一人からのお礼なら照れくさくない。


「こんにちはー」

 袋に入れたプレゼントを家から持ち出した。士郎くんの家の鍵で玄関を開け、挨拶をしてからお邪魔させて貰う。
 靴を揃え、廊下と進んでいれば、居間の障子がすす、と開き、士郎くんが顔を見せた。

 「名前 、来たのか」
 「うん。お邪魔します。士郎くん」
 いつも通りを心がけて、士郎くんに笑いかける。その実、私の心臓はどきどさと緊張していた。
 もうすでに大河ちゃん、桜ちゃん、セイバーさんにはプレゼントを渡した。三人にとんどん拍子でスムーズに渡せていたから、士郎くんにも当然スムーズに渡せると私は思っていた。思っていたのだ。
 しかし、運が悪いのか、タイミングが悪いのか、私は士郎くんに今日までプレゼントを渡せていなかった。
 クリスマスが近付いてきて、焦る私。でも、運が味方したのか、タイミングが味方したのか、今日はどうやら士郎くんは家に一人らしい。
 プレゼントを丁寧に扱うように、ゆっくりといつもの席に座る。
 士郎くんは私に温かい飲み物を出してくれて、向かいの場所に座った。

 「それ、一体何かきいていいか?」
 「わっ」

 腰を落ち着けた士郎くんがさっそく私が持ってきたプレゼントに興味を示す。
 私はお茶に伸ばそうとしていた手をぴたりと止める。ひとまず落ちついてから話を切り出ろうとしていた計画が崩れる。なんか計画がどれも崩れていく。計画を立てないで生きていった方がいいかもしれない。
 意味のない言葉を吐く私を士郎くんは不思議そうに眺めている。
 うん、善は急げって言うし。私は袋からプレゼントを取り出し、テーブルの上に置く。

 「? なんだ、これ」
 「これは士郎へのプレゼントです」
 「……俺への?」

 きょとんとした士郎くんへ頷く。
 そう、これが士郎くんへのプレセントである。アーチャーさんと共に選んだプレセント。

 「大河ちゃん、セイバーさん、桜ちゃんにもう渡せたんだけど、士郎くんにはずっと渡しそびれちゃってて……。今やっと渡せるよ〜。はい、メリークリスマス!」
 「クリスマス? というか、俺にプレセントって。何もない日だぞ」
 「クリスマスに渡せそうになかったから、今渡しているのっ。ほら、クリスマスに遠坂先輩を呼ぶっていっていたでしょ? 遠坂先輩と会えるのは嬉しいけど、遠坂先輩だけにプレゼントを渡さないのはあれだし」
 「ああ…...、なるほどな。でも、いいのか? これ、けっこういいのだろ」
 「いいの!三人にも同じくらいのプレゼント返しているから!」

 渋りそうになった士郎くんを押し切り、プレゼントを受け取ってもらう。テーブルに置いたプレセントが士郎くんの手に収まる。
 それを見て、私はガッツポーズをしそうになった。あまり嬉しさで大きな声を出しそうになったがなんとか堪える。
 士郎くんはおお……といいそうな表情をして、「ありがとう……」いたかと思えば、何かを思いついた表情に変わる。

 「もしかして、これがアーチャーとでかけて買い物をしたやつか?」
 「そう!素敵でしょ?アーチャーさん、やさしかったよ、気がきいて。ああいう大人になりたいな」
 「……」
 
 先程持ち損ねた湯呑みを持ち、お茶をゆっくり飲む。
 なぜか土郎くんか複雑そうな表情に変わったが、プレゼントを離したりはしない。
私は、窺うように正面にいる士郎くんを見る。

 「士郎くん、どう、かな?」
 「…...ああ、ありがとう。名前がくれたものだからな。大切に使わせてもらうよ」
 「……うん」

 お礼を士郎くんから言われ、私はなんだか照れてしまい、静かに頷いた。
 照れ隠しにもならないが、またお茶を飲み、それからもってきた袋を折る。意味のない行為だ。
 喜んでもらえて、本当に良かった。深い安堵が私の心を包み込む。まだ、緊張が心に残っているが、やがてそれも安堵によって解けていくだろう。
 しばし、プレゼントをじっと見つめていた士郎くんが私の方へ顔を向ける。

 「……俺ともまた出かけよう。これを買った店も気になるしな」
 「え、いいの? 私、士郎くんとおでかけするの好きだからうれしいな」

 予想もしていなかった誘いに、私は顔を綻ばせる。士郎くんが目を開き、きょろきょろと視線を彷徨わせ、何か言おうとしていたが、意味のある言葉は何も言わず、静かに口を引き結ぶ。照れているようにも見えた。
 可愛いな、と士郎くんに悪いと思いつつも微笑んでしまった。男の子に可愛いはまずいかと気持ちを悟られないように私は意識的に笑顔の種類を変え、士郎くんに「楽しみだなあ!」と、明るく気持ちを伝えた。




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