両手から溢れるほどの花を


 防寒服で身を固めたキャスターが、同じように防寒対策をしている私の方と向く。

 「では、行きましょうか。マスター」
 「うん」

キャスターは取手を掴み、ガチャリとドアを開けた。


 寒々しい空気だ。息は白く、空で星が美しく輝いている。星がとても綺麗だ。私は隣にいるキャスターに、ひとまず提案をしてみることにする。

 「ねえ、パーティーに行かないで、山で天体観測しない? キャスター」
 「確かに星は綺麗ですが、約束を反故にしてはいけませんよ」
 「それはそうなんだけど。じゃあ、帰りにしたらいいんだよ、それならいいでしょ?」
 「はい。決まりですね。楽しみにしています」
 
 私はキャスターの答えにパーティーの後に楽しみが出来たと笑みを浮かべた。


 パーティーを開催するので、ぜひ来てね!
 そう、ランサーのマスターが私の元へやってきて、眺しい笑顔でそう言ってきた。
 パーティー?
 詳細はこちら! とテレビのような言葉と共に招待状が二枚渡してきて、いきなりのことで固まる私をそのままにランサーのマスターは帰っていった。嵐みたいだった。
 パーティーって、何だろう……?
 私の問いに答えてくれるのは、この私の手の内にある招待状だけか。私はおそるおそる一枚の招待状を聞く。
 クリスマスパーティー開催の招待状だった。
 ……暇だし、何も予定はないから行くのも悪くない選択だ。
 しかし、ランサーのマスターの姿を思い返す。招待状を彼女は私の分を合めず、六枚持っていた。友好的な彼女のことだ、他のマスターとサーヴァントにも招待状を渡しているのだろう。
 ……他の参加者たちと顔を合わすのって、ちょっと気まずい。
 どうしようと悩んでいると、出かけていたキャスターが帰ってきたので、そのことを相談してみれば、「せっかくですし、行ってみましょう」とけろっとキャスターは微笑んで、私から招待状を受け取る。

 「え、大丈夫なの?」
 「罠ではないでしょう。ランサーのマスターですし、ただ単にみなさんと遊びたいだけかと。警戒する必要はないですよ」
 「罠だなんて全く思っていなかったんだけど……。じゃ、じゃあ、行ってみる?」
 「はい。おそらく、その招待状に必要なものは書いてあるのでしょうから、よく読みましょう」

 穏やかに私に確認を促すキャスター。
 あまりにも普通な顔に、私はキャスターってすごいな、そう思った。

 事前に招待状に書いてあった正装ってどのくらいの正装? とランサーのマスターに連絡を入れたら、「貸すよ!」と明るい声できっぱりと言われたし、実際に今日の昼過ぎくらいにたくさんの服を持って、私の家に来てくれた。それから……試着、試着、その繰り返し。一番似合う正装を選んでくれ、髪も化粧もしてくれた。ランサーのマスターの館でやってくれれば、と一瞬思ったが、どうから、ぎりぎりまで飾り付けをしたいとのことで、まだ館は立ち入り禁止らしい。
 「時間通りにきてねー」そう、たくさんの荷物とサーヴァントと共に帰っていった。

 ランサーのマスターの家は徒歩でいける。
お洒落をしてもらったが、少し心配になる。 
 ランサーのマスターの家は館といってもいい程に広い。豪邸だ。こういう格好は初めてするから、緊張する。私、服に負けてないかな……。
 キャスターは、どうだろう、見た目は若いが貫禄があるから、衣服に着せられている感じはしなかったが、私の贔屓目かもしれない。ちらちら見ていたのに気付いたのか、キャスターが私の方を見て、静かに口を開く。

 「緊張しますか?」
 「え、よく分かったね。うん、あの人の館に行くのは初めてじゃないけど、パーティーに参加をするのは初めてだから……」
 「そうですか。それは緊張しますね。私も、こういったものには初めて参加するので、少し緊張しています」
 「へえ……、平気そうに見えるのに」
 「見えるだけですよ」

 そうこうをしていると館が見えてきた。相変わらず立派だが、何か変化があったと感じる。……あ、イルミネーションだ。広大な庭の木々に華やかなイルミネーションがされている。わぁ、と心が弾む。遠目でこれだけ綺麗なんだから、近くで見ればもっと綺麗かもしれない。
 あの館に、マスターとサーヴァントが今夜もしかすると全員集結するのだ。なんだか不思議な気持ちだった。あそこでプレゼント交換とかビンゴ大会をするんだ……。
 招待状にあった進行を思い出しなから歩く。あと、ケーキ食べ比べとかもあったな。
 だんだんイルミネーションの全体が分かってくる。大きて立派な門が近付く。

 「楽しみだね、キャスター」
 「はい、名前、たのしみましょう」

 キャスターが返事をする。ちょっとだけ、楽しそうに見えた。
 良い日になればいいな、と思いながら、門の前に立ち、呼び鈴を鳴らした。




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