神さまではないから何も知らない


※オリキャラ出ます。


 白い人、なんだっただろうか、名前……、分からない。なら、まあいいか。無名の白い人に何秒か見つめられた。
 遠くからだったし、見つめられた後に話しかけられる訳でもなかったので、私は特に気にすることなく、その後の雑務に忙殺されて、記憶の彼方に飛んでいった。


 「やっぱり凪選手、サッカー上手だよね。もっともっと上手になるかと思うと、心がうきうきしちゃう」

 澪ちゃんがふわふわと楽しげな声でそんなことを言う。
 凪って誰だ?
 私は手元のパソコンを動かし、なぎ、と選手のページの検索欄にひらがなで、そう打ち込む。パソコンは優秀ですぐさまぱっと調べたかった情報を表示させる。
 凪誠士郎。顔写真とプロフィールをさらりと簡単に読む。
 へえ、この人が、凪さん。……うーん? なんだ、見たことある気がする。
 私はふうん、と検索欄からひらがな二文字を消す。

 「そうなんですね」
 「御影選手との仲が心配だけど、まあ、どうにかなるでしょ」
 「……」

 澪さんの言葉に私は悟られないようにすっと静かに、次は みかげと打ち込む。そして、出てきた人物を眺める。御影コーポレーションの一人息子か。ここ、ブルーロックに来るのに反対されなかったのだろうか。
 先程の凪さんと同じ高校に通っていて、サッカー部で活躍をしていた、と。
 御影さんの整った顔をまじまじ観察する。どこかで見たことがある。どこだったかな。
テレビ、雑誌、ううん、もっと距離のある場所で……。
 あ、思い出した。
 いつだったかは分からないが、従姉妹のアンリちゃんに招かれたので東京に行って、サッカーの試合を観戦しに行った時のサッカー選手だ。
 そうだ、思い出せた! 私は凪さんの時から抱いていたもやもやが消えていくのを感じる。良かった、思い出せて。ほ、と安堵の溜め息を吐く。

 「あれ、どうしたの?名前ちゃん」
 「いえ、なんでもないです。ちょっと安心しただけですよ」
 「安心、なんで……?」

 昔っていうほど昔ではないが、過去にアリちゃんに誘われて、高校生のサッカーの試合を観に行ったことがある。東京、神奈川、埼玉など。アンリちゃんと一緒には観れなかったから、何が何やらわからなかった。いつもであれば、アンリちゃんが興奮しつつ、色々と解説してくれるのだが、アンリちゃんはやることがあるからと一緒に観れなかったのだ。今思えば、ブルーロックに呼ぶ原石を選ぶ作業だったんじゃないのかな。
 その試合の一つに、凪さんと御影さんがいたのだ。確か、白宝高校、だったっけ? なんか凪さんが、すごい動きをしていた記憶がある。
……アンリちゃんの頑張りが、こうして形になっているのを見ると、感概深い気持ちに包まれる。
 完全に思い出した。なるほどね。あと一つか二つ、引っかかることがある気がするが、必要である時に思い出すだろう。
 ……それにしても、アンリちゃんの頑張りが、こうして形になっているのを見ると、感概深い気持ちに包まれる。

 データを直接見ようという澪ちゃんのお誘いに頷いて、選手たちが練習している所へ行く。データなんてあのパツパツスーツに任せておけばいいじゃん、などと思わなくもなかったが、確かにどう動くのとかは気になったし、澪ちゃんがナンパされたら嫌だから、彼女に着いていくことにしたのだ。
 シャッと扉が開く。図体の大きく、またがっしりとした男の子たちの姿が目に入ってきて、うっと圧倒される。選手たちはサッカーの為の運動に夢中で、こちらに視線を向けてくることはなかった。邪魔をしては悪いし、邪魔をしなかった事実に安心した。
 目立たない所、かつ全体が見渡せる所に置かれている椅子に座る。
 持っていたパソコンを広げ、目についた人のデータを入力していく。リアルタイムで刻み込まれていくデータを見つつ、まとめていく。いつもの作業だ。
 ぱちぱち、かたかた。時々、動く選手を眺める。
 そんなことをしているとスピーカーから音が鳴り、アンリちゃんと思わしき声が休憩を選手たちに命じる。それに素直にききいれ、選手たちは休憩に入った。
 選手たちが停止したので、データが止まる。これ幸いと私と澪ちゃんはデータをまとめ始める。
 私はパソコンから顔を上げ、休憩している選手たちを眺める。出会った時に、いつも声をかけてくる選手が一人いるが、今日は来ないみたいだ。よく分からないが、周りから止められているっぽい。ありがたい、そのまま止めておいてくれ。
 なんだか注目されている気する。ブルーロックに二人しかいない同年代の女子だから当然かもしれないが、顔合わせから数日も経っているんだから、慣れてほしいんだけど。
 興味なさげにしている選手を見習って、サッカーに打ち込んでほしい。そのために私と澪ちゃんは来たんだし。撤退しようと澪ちゃんに声をかけようとしたが、データに夢中で気迫がすごく声をかけるのをためらわれた。 
 ひとまず落ち付くまでは放っておこう。再びパソコンに向き合おうとして、澪ちゃんからパソコンに視線を戻す。


 「もうすぐ日本代表と試合だね。ブルーロックが勝てるといいんだけど」
 「勝ってもらわないと困りますよ、アンリちゃんの頑張りを無にされたら、かなしいです」
 サッカーデータ収集の鬼から人に戻った澪ちゃんと共にパソコンを抱えて出ていく。
 そう、勝ってもらわなければ、困るのだ。アンリちゃんと私のバイト先の確保のために。
 「だね、私と困る。こうして身近でサッカーを観ていたいし!」

 ぐっとパソコンを抱えていない方の手を握りしめ、挙を作る。気合が伝わる、炎のような気合だ。
 澪ちゃんの熱意の炎から出れるように目を逸らす。
 と、凪さんがこちらに顔を向けているのが目に入ってきた。あれ、なんか、こんなこと、前もあった気がするような……。
 ふい、と凪さんが興味なさげに顔をサッカーボールに戻す。何か思い出す前に逸らされたので、思い出し損ねてしまった。ならいいや。私は澪ちゃんと共に仕事部屋に向かう。




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