きみは星吐き
アーチャーさんと出かけることになった!
私は士郎くんの家にいた大河ちゃんに、そのことを報告した。怪我の功名、棚からぼたもちみたいな感じで、たまたまそうなったって。
大河ちゃんは、アーチャーさんの名前は耳にしたことがあったが、一度も顔を合わせていないらしい。だから、どんな人かも分からないとのことだ。かくいう私も、アーチャーさんと初めて会ったのはつい最近だ。先生として頑張っている大河ちゃんと、なんだか大変そうなアーチャーさんは、タイミングが合わなくて、だから会えないのかもしれない。
「会ってみたいのよねー、どんな人かしら」
「大河ちゃんの仲良くなれると思うよ。いい人だったもん」
困りすぎて必死だった私を受け止めてくれたし、いい人でしかない。
大河ちゃんはいつも通りの元気な笑顔で「名前ちゃんにいい人って言って貰っちゃった」とご機嫌に歌うように言う。
「ていうか士郎くん、セイバーさんをつけてどこまで行ったんだろう。スーパーを渡り歩いているのかな」
「もうすぐ帰ってくるんじゃないかな? 今日のご飯なんだろー、桜ちゃんもくるかな」
「桜ちゃんが来てくれたら、もっと楽しくなるよね! 来てくれるといいな」
なんてことを話していれば、玄関の方からドアを開く音がして、セイバーさんと士郎くんの声がきこえてきた。
「……名前、少しいいか?」
「なあに、士郎くん」
大河ちゃんに話し、その次の日に桜ちゃんに話した数日後、私は士郎くん家に来て早々、士郎くんに呼ばれた。なぜか、ややしかめ面をしている。
なんだろう、改まって。
私、何か悪いことをした覚えはないんだけど。士郎くんが何にしかめ面をしているか分からず、最近の自分の行いを思い返しながら、士郎くんに返事をした。
今日は場を和ませてくれる桜ちゃん、賑やかにしてくれる大河ちゃん、いるだけで場が整えられるような気にしてくれるセイバーさんがいないので、私は一人でこの士郎くんに立ち向かわなければいけない。
テーブルには先程淹れてもらった緑茶が入った湯呑みがある。お互いに向き合い、私は士郎くんの出方を窺う。
「どうしたの、士郎くん。私に何か話でもあるのかな」
「ああ、いや、名前に聞きたいことがあってな……」
「うん」
「……アーチャーと出かけるって、本当か?」
「え」
私はぱちくりと目を開く。
なんで、士郎くんがそのことを、って多分大河ちゃんか桜ちゃんが言ったのかも。
内緒にしてね、なんて口止めをしていなかったし、いずれ耳に入るだろうとは思っていたが、耳に入ってからのこの反応は全く想像していなかった。
なんで士郎くんには言わなかったと言えば、アーチャーさんの話題が出ると、このようなむっとした表情にするからである。そんなことが何回かあれば、士郎くんの前でアーチャーさんの話をしようと私は思わない。
なんだ、その話か。知らない間にやらかしていたのかと悪い想像をしていた私は、安心しつつ素直に士郎くんの言葉に頷く。
「そうだよ。アーチャーさんにお買い物に付き合ってもらうの」
「それは、俺でも良かったんじゃないのか? いつも行っているだろ」
「……うーん、そうなんだけど」
私の答えにすぐさま士郎くんが突っ込みを入れてくる。確かにいつもなら私が士郎くんに買い物に付き合って欲しいと頼み、着いてきてもらうのだが、今回はそうもいかない。
なぜなら私は、士郎くんへのプレゼントを買いに行くのだから。
私はどう誤魔化そうかと悩む。じっと真っ直ぐにこちらを見ている士郎くん相手に、嘘なんてつけない。だから、誤魔化したいんだけど、出来るのかな、私。ゆっくりと言葉を選びながら、理由を教えようと口を開く。
「今回はアーチャーさんが適任だっただけ! 士郎くんが適任の買い物があったら、士郎くんのことを頼らせて」
「それって、料理関係か?」
「……」
「料理なら俺だって、それなりの腕だと思うぞ」
「知っているよ。いつも美味しいご飯をありがとうね」
「それとも、修理関係か?」
「……」
「修理に必要なら俺も分かる。それとも直したいものでもあるのか?」
「直したいものは無いかな。大丈夫だよ、士郎くん。ありがとうね」
すごい士郎くんが私に突っ込んでくる。グイグイ来るから、一瞬黙り込んでしまう。本当にどうしたんだろう、士郎くん。
落ち着こうと湯呑みを手に取り、口をつけて飲む。温かくてほっとした。
「大丈夫だよ、士郎くん! アーチャーさんに迷惑かけないから」
「アーチャーのことは何も心配していない」
「え、そうなの」
「名前、気をつけて行ってくるんだ。好きなものを作って待っているから、早く帰ってきていいからな」
「え! 士郎くん、私の好きなものを作ってくれるの! やったー!」