※ヘイトでは決してありません。


「大変だ、主」

初期刀の山姥切国広はそう言って、私の部屋の障子を開けた。
とても驚いたが、山姥切国広の声が必死だったので、今は見逃そう。
その代わり後でよく言い聞かせないと。

「どうしたんだい、まんばくん」

と某猫型ロボットのように尋ねれば、ずいと汚い布が目の前に差し出された。
……これは、いつも山姥切国広は頭から被っている布じゃないか!
本当にどうしたんだ!

「裂けてしまったんだ、直してくれ」
「手入れする?手入れする?」
「……いや、その」

裂けたのか、それは緊急事態だ。
それも一刻も争うほどの緊急事態じゃないか!
戦慄きながら、手入れした方が早いと直接言えば、山姥切国広は眉を顰めた。
あ、嘘です。だから顔を歪めないでください。
綺麗な顔が台無しになってしまうよ。
もうこれはぜひ喜んで縫わしてもらうぞ、安心して顔を元に戻しなさい山姥切国広。
だってこれは、貴方なりの甘え方だしね。
大丈夫、わかっているよ。私は笑顔を浮かべ、布を受け取った。

「しょうがないな〜まんばくんは〜、こっちおいで」

そうお道化ていえばやっと、山姥切国広は眉を顰めるのを止めて、どこか嬉しそうにしながら私の傍らに正座した。

山姥切。
山姥切国広。
私の唯一。
煌めく金髪も、森のようなその瞳も、端整な容姿も、くらい性格も、私の誇り。
あなたはそれを、こうして知っていけばいい。
そして、あなたの不器用な甘え方に応じる私を見て、なにか感じ取ってくれるだけで、私は満足だ。

しかし、

「なにしたらこうなるの」
「……先程、庭の木に五虎退の虎がいたんだ。どうやら降りれなくなったみたいでな、そいつを手に、木から降りる際、枝にひっかかって」
「次からは布とってから登ろう」
「断る、写しだと思われたくないからな」
「じゃあ私の部屋にどうやってきたの?」
「走ってきた、誰も写しの貌なんて見たくないだろうからな」
「………」

お前のそれ、めちゃくちゃ面倒臭いと思う。