※どこかの世界線の話。
※勝手にクラスをライダーと判断しています。


「ぐだぐだになっちゃったわけだけど、どうするのこれ」
「ライダーの言う通り、さっきまで阿呆ほど笑っていたから説得力がないけど」
「そうですね、じゃあ爆発させます」

×

ライダーが面白い気配がする、と浮かれた様子でやってきて、私が何をいっているのだと口を開こうとしたのを見越して強引に私を連れ出した。
ライダーの面白いは大抵が面倒臭い、厄介なことだ。聖杯戦争でもライダーがいう面白いに散々振り回された記憶がある。今回も案の定、厄介事に巻き込まれた。詳細を知らさない方が面白い方に転がるからと今起こっている事件を全く知らずに意味深な発言をする知人たちに首を傾げられながら、恐らく黒幕と思わしき人間の元へライダーと元に来たわけだが。なんだ面白い方に転がるって。私だけ置いてけぼりだ。
何度、知人たちから「え?何も知らないで来た?」って言われたか。
気の毒に思ってくれた人が私に詳細を話してくれようとすれば、ライダーに遮られる始末。ライダーは、もういいや、こういう人だし。
黒幕にどうにか辿り着いて、膝をつかせたのはいい。黒幕の話にライダーが高らかに笑い出したのもいい。終始私が蚊帳の外だったのも許せる。
でも最後に爆発って何?口から出任せかと思えば本当に爆発するのも分からない。思わず叫んだが、何を口走ったか忘れた。
え?これ、本当に死ぬの?聖杯戦争という最大難関を乗り越えたから安心してしまったのがいけなかったんだろうか。
油断大敵って言葉があるくらいだから、昔から困難を乗り越えて安全地帯にいる時に殺される、みたいなことが結構あったのかもしれない。
流石に爆発が直撃したら死ぬ。
ライダーはどうなっただろう。不敵な佇まいが脳裏に過ぎる。
思えば、私はよくあの聖杯戦争から生き残れたものだ。大した面白くもないし、特別な魔術を使えるわけでもない。自分のサーヴァントに殺されたっておかしくなかった環境でよく生き残れたものだ。自分を褒めちぎりたい。
…………。

「?」

目を開ける。目を開けられる体と意志がある、ということは生きている。
気がつくと背中が痛くなってきた。そりゃ爆発した時に吹き飛ばされれば痛いはずだ。視界が良くなってきて、肌色が認識出来ている。……肌色?

「え?な、なに」
「気が付いた?人間ってやっぱ弱いな。というか、君、なんであんなすぐに爆発なんてサイテー!とか叫べるわけ? あっちも躊躇いなく爆発させるし!あははっ!あー、面白い!」

いきなり意識を取り戻してからきくのが大笑いって混乱の元でしかないが。
どうやらライダーは私を爆発から庇ってくれたらしい。抱き寄せられて庇われた事実に驚き、爆発を受けたにも関わらず、髪が解けて少し衣服がボロつくだけで済んでいる事に驚く。サーヴァントっていう存在がそれほど強いってことか。ライダーの胸元であまりの無茶苦茶さに溜息を吐く。笑うから揺れる。

「私、爆発なんてサイテー、とか叫んだですか」
「え、無自覚?嘘だろ。面白いな、マスターは」
「揺れるなあ、あ、ううん、大丈夫ですか?髪、解けちゃってますよ」
「髪?あー通りで楽だと思った。後で霊体化でもして直すかな」
「はい、是非そうして下さい。ごめんなさい、庇ってくれてありがとうございます。退きますね」
「ぐ、ふ、……うん」

よろよろと立ち上がる。ライダーは一拍置いてから返事をした。口の端から赤い液体がつ、と流れるのが見えた。トマトジュース。な訳ないので喀血したのだと気付く。笑っていて気付かなかった。

「ライダー、大丈夫!?」
「ん、ああ。大した事ないから、気にしなくていい」
「喀血を大した事ない扱いするのライダーくらいだけだと思う。喀血するってことは、まだ面白いことが残っているんじゃないですか」
「……きみ、あの時と同じ台詞いっている。はは」

ライダーに近付いて、側でしゃがみ込む。げほ、ごほと酷い咳をし始めたライバーは苦しそうで、彼の言うあの時と本当に似た状況だと過去が脳裏を過ぎる。

「あの時とは違って、ライダーが欲しがっているものはすぐそこです。さっ、支えてあげますから踏ん張って!」
「いや、本当に同じじゃん。つまらない。もうちょっと追加の言葉はないの」
「元気ですね。重いですね」

華奢とはいえ上背があるから重いんだよな。
ライダーに肩をかして、私たちはよろよろと不安定に歩き始める。恐らくもうライダーを邪魔する人間は存在しない。私はこのままライダーを支えながら歩いていけばいい。発光している何かがある場所に辿り着けば、ライダーの言う面白いものを目にすることが出来るだろう。
このまま、行けるかな。前回もうまく行っていたにも関わらず、イレギュラーに邪魔されたせいで全部おじゃんになっていたし。
いやあ、何だか凄く不安になってきたな……。