※通常の聖杯戦争では高確率でガンナーとして召喚されるらしいとのことで、彼のクラスは「ガンナー」です。
※ガンナーのクラススキルなど公開されていないため、意図的に色々なものを避けています。申し訳ありません。





「なんだか、夜を騒がしくしていて、申し訳ないね」

私は隣にいるガンナーへ、思ったままを囁く。
今の緊迫した状況で悪いけれど、思ってしまったものは仕方がない。
それに話せる機能を持つ人がすぐ側にいるのだ、話をしたい感情が込み上げてくるのも仕方ないだろう。
我ながら緊張感のないこと。自分自身に若干呆れつつも、私はガンナーの返答を待った。
ガンナーは眼をぱちくりさせ、そしてにっこりとこの場にそぐわない明快な笑みを浮かべる。
睫が長く、少女のような顔立ちには、月光がよく映えた。

「マスターも、そういうことを考えたりするんだね」
「失礼な、私は自然そのものを愛する女の子だよ」

少し怒りを意識して声を出せば、また軽い笑顔でごめんごめんと言われる。

私が呼び出した、違う、召喚したガンナーは少年と言っても過言ではない容姿のサーヴァントであった。
背が私と同じくらいの、もしかしたら年齢も同じくらいの彼は、おそらく近代の英霊だと思われる。
所持する拳銃と、身に纏う衣服。
それらはいつか見た西部劇に出てきた登場人物たちと酷似していた。
金髪に青い色の瞳。
近代銃器と西部。そしてガンナーのクラス。
……あぁ、そう、そうである。
彼はきっとかの有名なビリー・ザ・キッドだ。
直接聞いたことはないが、多分そう。
だとすれば、あまりにも有名な人物で私は頭を抱えた。
有名だとすると―しかもエクストラクラスのガンナーで特定されやすい可能性あり―弱点が露見しやすいかもしれない。
ビリー・ザ・キッドの弱点。
弱点、彼の弱点だと言えば……や、闇討ち、とか……?特に思い浮かばない。
聞いたら、答えてくれるかもしれないが、ガンナーが自分から言うのを待ちたい。

隣の、肩と肩ががっつり触れ合う距離にいるガンナーの顔を見てみる。
やはり、幼い。
しかしどこか、普通の人とは一線を引いた雰囲気。
ガンナーは遠くで行われているサーヴァント同士の戦いを、私が放った使い魔の見ている光景を映像として見ていた。
私はそういう魔術が得意であるのだ。
といってもある程度の受信?距離は必要だった。だからこうして私たちはここで隠れていなければいけない。
割と近い距離でってのが危険極まりないんだよなあ……なんとかならないかな……。また修業しないといけないのかな……。

「ん?どうしたの、マスター」

薄ら笑みに中性的な声。
私に習ってか、自己判断でか小声だ。
首を左右に動かし、私はなんでもないと囁く。
……改めて映像に向き直るガンナーを見つめ思う。
エクストラクラス・ガンナー。
エクストラクラスがいるこの聖杯戦争は、一体どうなるんだろう。
ガンナーが現れたことをどう思って、どう判断を下して、他のマスターとサーヴァントはなにを考えて動くか。

この夜の間を私はいくつ超えられるかを、映像に目線を戻しつつ、頭の中で指折りした。