今午後11時頃
今午後11時頃
「あっ、ッぐ、」
ゴンッと硬いもの同士がぶつかり合った音が響いた。もうすでに朦朧としているエースの頭が、再び公衆便所のタイル壁に打ち付けられた音だ。
ほんの少し前、エースは見知らぬ男に背後から襲われた。用を足し終えた直後の出来事だった。
後頭部を掴まれたエースは、何度も頭を揺さぶられ壁に打ち付けられ、割れるような頭の痛みの波に飲み込まれてしまっている。自分が強姦を受けていると理解するまでに相当な時間を要した。
力なく壁にしなだれ掛かるエースは、軽い脳震盪状態に陥っていた。意識はあるが、フラフラとして体に力が入らないし、目の前の世界がぐるぐるとしていて碌に物も考えられない。
そんな世界が鮮明になりだしたのは、後孔に入っていた男の指が引き抜かれてからだった。
「ッ! はァ…、ぐっ!」
エースから酷く苦しげな声が上がると同時に、壁にすがる手が爪を立てるよ うにして固く握られた。
たった今しがた、新たな痛みがエースに与えられたところだった。
男はこの一連のやり口にかなり手馴れていた。ターゲットを変え、何度も同じ事を繰り返している常習犯だ。とはいえ、排泄にしか使用したことがないエースのそこを“入れる場所”に作り変えるにはかける時間が足りていない。
指とは比べ物にならない太さのもので無理やりこじ開けられる痛みに、エースは反射的に体を強張らせた。歯をぐっと噛み締めることで、それ以上の侵入を拒めるような気がした。
しかし、太い杭のようなそれは否応なく、熱く柔らかな肉壁に包まれることを望んで突き進んでいく。
「いっ!ッ……は、ぁあ…、ゃめっ、っん、は、ぁ」
ブチブチと嫌な音が耳につく。やがて男の肉棒が奥まで捻じ込まれた。
男は指を添えて結合部から血が垂れていることを確かめる。これでいくらか滑りが良くなるはずだと、口端を上げて笑っていた。
「くっそ…、てめッ、あっぐゥ」
エースが痛みに耐えながら男を振り返ろうとした瞬間、男は揺さぶりを開始した。
「ンぅ…、ゃめッ、ま、待ッて、ッあ、痛……や、めろっ、」
エースは顔を歪め必死に痛みを訴えるが、男にそんなエースや傷ついている部分を労わる様子はない。無理やりこじ開けたそこを好き勝手に突き上げては乱していく。
「ひッ、ん、や…も、やめろ、ッて…ッンん、っは、は…、」
エースには男が快楽を得ようと肉壁を押し上げるたびに気持ち悪さがこみ上げたし、傷ついた後孔に激痛が走った。力を込めたり息を吐き出したりしながら痛みをやりきる合間で、エースは男に向けて静止を促す声を上げるが、男は1度として反応をみせない。
しかしとして、顔を上気させ涙目に訴える姿はしっかりと男の加虐心を煽っていた。加えて、激痛があるたびにヒクつく肉壁は男の肉棒に絶頂を促す。
「は…ァんっ、は…、ふっぅン、んくっ、ァ…はッあ」
しだいに男の呼吸も乱れてくる。男の絶頂が近くなっていき、一層、腰の動きを速めて思いのままに中をかき回した。
やがて、際奥で精を吐き出した。
「ゥう、あ、ッ! てっめ…、」
揺さぶりが止まった代わりに、体内に感じる男の精液の感覚。
どうしてこんなことになっているのかわからないまま、ただただ痛いという思いしかなかったエースの心中に、強い屈辱感が募ってきた。単に欲のはけ口にされていることをようやく理解した瞬間だった。
「ぜってェ、ゆるさねェ……!」
酷い嫌悪感と悔しさを募らせたエースは、呪詛を唱えるかのように言うも、聴こえてくるのは嘲笑の声だった。
余計に湧いてきた悔しさを拳に宿して壁に打ち付けるエースを見下ろす男は、再び腰を振り始めた。
男が満足した頃には、エースは疲れ切り、「もう嫌だ、やめろ」などといった言葉も出てこなくなっていた。
与えられる刺激に次第に立っていられなくなったエースは今、床に伏せって尻だけを高く上げている。真っ赤に腫れ上がっている後孔からは赤と白が混ざったものがドロドロになって滴っていた。
男の肉棒は満足した状態になっても、未だにエースの中に収まっていた。男は余韻に浸るようにゆるゆると出し入れをしている。
「…まだ、終わんねェのかよ……」
息が整い喋れるだけの体力が回復してすぐ、エースは男の様子を伺うようにして声をかけた。
今まで一言としてエースの言葉に嗤う以外の反応をしなかった男だが、このひとり言のような問いには答えた。
「さすがにもう何も出ねェからなァ」
「だったらさっさと、」
「あ、やっぱりウソ」
エースの言葉を遮った男は、エースの腰を引き掴み寄せ肉棒を根元まで入れ込む。それから上機嫌に言った。
「小便でそう」
「は……?」
エースは耳を疑った。この状況でその台詞とくれば次に何をされるかなどたったひとつしか考えられない。本気か冗談か、たしかめるべく男を振り返ったエースの目は不安に揺れていた。
男は変わらずニタニタと下品な笑みを浮かべていて、エースは本気で言っているのだと察する。
「っあ……、ャ…ぁ、っ……」
想像しただけでおぞましかった。否定の言葉も何故だかうまく言葉にならず、エースはほとんど喘ぎながらふるふると首を振ることしかできない。
男は怖がっているらしい様子のエースを見下げて、一層口元に笑みを作り込んでから下腹部に力を込めた。
「ひ、ぅ、ぁああ! 」
容赦なく流れ込んでくる生暖かい液体の感覚があった。気持ちが悪い。吐きそうだ。エースは逃れたくて腰にある男の手を剥がそうと必死になるも、力が入らない。たった指一本ですら剥がすことができなかった。
「ッ、うぇっ……、ぅうッ、」
放尿の勢いが弱まるにつれ、逃げ出すことを諦めたエースは、腕の中に顔をうずめた。
打ち付けられた額の痛みにも、無理やりこじ開けられたそこを乱暴に突かれても、何度汚い欲望で汚されても、エースは涙だけは見せずに耐えていた。
しかし、まるで便器のように扱われているいま、その目にじんわりと涙が浮かんできた。それほど、中に排泄をされるという行為は、エースにとってなによりも屈辱的で惨めだった。
「ッ、ふ…っう、ぅう…」
男は最後まで出し切ってから、ようやく男根を引き抜いて立ち上がった。
支えを失ったエースは、力なく汚れている床に倒れ込む。気持ち悪さにえずきながら静かに涙を流していた。
男はそんなエースを見下ろしながら手早く自分の身なりを整えていく。
「これで正真正銘ぜんぶ出し切ったわ」
男は嗤い、エースの尻を足蹴にしながら「サンキュ」と歌うように続けた。
汚い公衆便所の床。散々汚されきっているエースは、これ以上の惨めを晒すまいと懸命に込み上げてくる吐き気に耐えていた。
「ぜ…ってェ…、許さねェ……、」
エースは息も絶え絶えに、顔を歪ませながら言った。
男がエースの姿をゆっくりと記憶し、公衆便所の出入り口扉に手をかけたときだ。力強く睨み上げてくるエースに、男は己の欲が駆り立てられた感覚があった。まだまだ楽しめそうなエースの様子に、期待に胸が膨らんでいく。
しかし、男は引き返すことはしなかった。代わりに「……じゃあ、また逢おうな」と笑いかけた。
今度こそ出て行く男の背中を目に焼き付けながら、エースは意識を手放した。扉の向こうに人影が見えたような気がした。
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