おれだけのものだから
牛たちが興行から帰ってきた報せを受けたシャンクスは、一番にエースの元に向かった。
彼は、小部屋の隅で既に眠りに落ちていた。ハーフパンツ一枚だけを身に着け、ぐったりと横たわっているエースは、まるで役を終えた操り人形のように見えた。
シャンクスはその生気のない身体にそっと毛布をかける。その間際、生々しく真っ赤に腫れ上がっている乳首が見えた。心なしか、眠る表情も険しい。
今回の販売方法は、かなりエースの負担となってしまったようだった。
シャンクスが経営している牧場は、いつもは搾乳機で事前に搾ったものを販売している。それが今日は、趣向を変えてお好みの牛たちから直飲みできる販売方法で提供を行ったのだった。
客からの反応はすこぶる好評。何頭か並べたうち、特にエースの若く健全な体躯とまだ幼さが残る顔立ちは客受けが良かったらしい。エースは乳から出る甘く芳醇なミルクを、一日中息つく暇もなく客に提供し続けていたと、シャンクスは報告を受けた。
エースの側に膝を着いたシャンクスは、少しの間、彼が眠る姿を眺めていた。やがてエースが目覚める気配がないことを察したシャンクスは、静かに部屋を後にした。
翌朝、シャンクスの元に困り顔の飼育員がやってきた。事情を聴けばエースが本日の搾乳を拒んでいると言う。どうやら前途の乳首がかなり痛むようで、大人しくしていないらしい。
飼育員に連れられるがまま、シャンクスはエースの部屋まで足を運んだ。開けっ放しになっているドアからは彼の怒声が聞こえてきた。ドンドンガシャガシャと、床を蹴り鎖が擦れ鳴る騒音が耳に付く。
エースがこんなに暴れていることは珍しいことだった。普段の彼には手が掛かることがほとんどない。自分の立場を理解しているといった様子で、飼育員の指示をよく聞くし、他の牛たちの面倒見もいい。模範的で、この牛舎のまとめ役のような存在である。
そんな彼が声を荒げるということは、本気で搾乳を嫌がっているということだろうと、シャンクスは推察した。
「あっ、お頭……!」
中ではエースを取り囲んだ飼育員が二人、近づくことができないといった様子でただ立ち尽くしていた。背後にいるシャンクスに気付いた一人が、辟易した様子でシャンクスの元へと向かう。
彼は腹部を摩りながら「手枷だけはなんとか鎖に繋げられたんですけど……」と、エースを振り返った。
いう通り、エースの両手首の枷から伸びる鎖は、壁に取り付けられたフックに掛けられていた。壁際に座らされ、両腕を振り上げている格好で拘束されているエースは、床を蹴り付けることで抵抗を示す。その脚は、無用心に近づいた飼育員の腹を蹴り上げていた。
「興奮し切ってて手が付けられなくて……」
フーッフーッと顔を赤くして肩で息をしているエースは確かに興奮している。でもそれだけではない。エースは同時に怯えてもいた。下を向いている耳を震わせているのは、その心の現れだった。
シャンクスが現れたことで静まったその場に、一人の飼育員が手の中にある搾乳機をガシャリと鳴らした。
瞬間、再びエースが吠えた。
「ッ!近寄るんじゃねェ!」
まるで誰も何も信用していない。近づけば蹴り殺されでもしそうな剣幕だ。
「帰って薬も塗ってやらなかったのか?」
「いえ、処置はしたのですが……相当手荒に扱われたようで……」
エースの両乳首は、未だに赤く腫れ上がったままだった。酷く痛々しい。加えて、乳房に複数の鬱血痕もできていた。一晩経っても腫れが引かない程吸われ、痣ができる程の強さで揉まれたとなれば、触らなくても痛む。
こんな様子では、搾乳を拒むのも納得がいく。が、些細な物音にさえ噛み付いてくるのは別の要因が関係しているようにも、シャンクスには思えた。
「……ひでェ話だ」
シャンクスは低い声で呟く。きっと、エースはどれだけ痛がり泣き叫んでもやめてもらえなかったに違いない。
こちらから提供したとはいえ、客からしてみれば他人の所有物だろうに。それを好き勝手に痛め付けられるのは神経を疑う話だった。
シャンクスは彼らを家畜として所有しているが、名前もあれば心もある者たちだ。少なくともここでは、それを意識した飼育を行っている。それなりに大切に扱っている牛たちなのだから、少しは良心を持って接してくれても良いはずだ。シャンクスは顔も知らぬ客たちに苛立ちを覚える。
「よしよし、エース。おれがもう一回薬を塗ってやろう」
シャンクスは、エースの担当飼育員だけをその場に残し、エースの正面に胡座をかいた。せめてもの慰めとして、自ら心身共に傷付いているエースのケアを買って出たのだった。
エースは鋭い目つきでシャンクスを睨む。対してシャンクスは微笑んで見せた。威嚇を和やかに受け返され、エースはバツが悪くなって身じろいだ。
彼は自分の立場を理解できているし、シャンクスのことも信頼している。威嚇してみたものの、乗って来ず軽く流されたことにより、筋違いな行動を恥に思った。
シャンクスは、そんなエースの一連の流れに感心した。反射的にカッとなりパッと言動してしまうこともあるが、基本的には思慮深い子のようだ。
それでも飼育員から薬を受け取る際には、エースの左脚が飼育員の手に向けて構えられたが、シャンクスが安心させるように「大丈夫、薬だ」と見せれば、蹴り下ろされることはなかった。
シャンクスは、その行儀が悪い脚を肩にかけ、エースを膝上に乗せた。そのまま背中を壁にもたれ掛けさせて少しばかり窮屈な体勢にさせる。薬を塗り易くするためと暴れ難くするためだった。
エースは、内臓がくっと折曲がる感覚に息を詰まらせるが、身体は柔らかいので、これくらいの体勢では負荷になっていない。
「ッぅ、は…、ダンナ……」
物言いたげな視線に、シャンクスは柔和な笑みを見せた。
「暴れて疲れたろ。力抜いてじっとしてろ」
「ん……ゥう」
シャンクスは、クリーム状の薬を指に付けて乳首に近づける。これから来るであろう刺激に緊張してしまっているエースの身体は、強張って震えていた。シャンクスが力を抜くようにいえば、健気に従おうとする努力を見せるが、従えてはいない。
「ぅう〜〜…、ッひゃァ…!……ンっぅ」
「あーあー、形が変わるまで痛ぶられやがって」
伸びて立ち上がったままになっている左乳首の先端に触れられると、エースはビクリと身体を跳ねさせた。頭上で鎖が鳴る。シャンクスは構わず、できる限り優しく触れながら薬を伸ばしていく。クルクルと指の腹で円を描くように撫でるにつれて、エースの背が丸まって逃げるように縮こまっていった。
痛いのかと問えば、潤んだ瞳がシャンクスを見た。唇は噛み締められたままで、何も言いやしないが、シャンクスはその目に肯定された気がした。目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだった。
「ふッ……ふ、ぅんッ!」
「おれァ痛いことしてるつもりはないんだがなァ……どう痛ェんだ?」
「ぇ…、」
「痛いんだろ?」
エースは言い淀み俯いた。彼は素直ではあるが、忍耐強い性格の影響か気弱な発言をすることがあまりない。良いところでもあるが、同時に悪い癖でもある。
シャンクスは一度エースの乳首から手を離し、赤珊瑚色の首輪に指を掛ける。聞いてるのかと強い口調で言って、首輪を引いた。
「……ッ!いたく、ねェ……」
「痛いから搾乳が嫌で暴れてたんじゃなかったか?」
「……」エースは唇を噛んで視線を逸らす。「それは……」
「痛くねェなら薬はいらねェか……」
言いながら飼育員に目を向ければ、エースの肩が跳ねる。シャンクスが次に何を言い、しようとしているのかをエースはすぐに察した。イヤイヤをするように首を振る。その視線の先には、飼育員が手にしている搾乳機があった。心からあれが嫌だった。
シャンクスはその頑なな様子に、なにをそんなに嫌がることがあるのかと、理解できないでいた。
普段から使用している搾乳機には特別変わった細工はない。強いて言えば、搾乳が短時間で終わるように吸引力が強いものを使っているくらいである。
痛手を受けている乳首にとって辛くはあるだろうが、エースは過去に、素足でクギを踏んで作った怪我を平然とやり過ごしていたことがある。放置したことにより傷が化膿し傷が酷くなっても、泣き言ひとつ言わず耐えていた痛みに強い子だ。このままミルクを出さないでいることのほうが、乳が張って痛いはずだった。
シャンクスがぼんやりと考え込んでいる間、エースはエースで状況を鑑みて胸中にある言葉を声に出す決心を固めていたようだ。違う、とポツリと呟くように発言した。
「……いてェけど……痛くねェ……」
「はっ!」思わず吹き出した。脅しさえ効かない強情っぷりが可笑しかった。「なんだそりゃ、根性論か?」
「アンタに触られんのは、痛くねェ……」
「へェ……?」
予想外の台詞だった。思わず手を止めてエースの顔をマジマジと見てしまう。ずいぶんと思わせぶりな事を言うものだった。
エースがシャンクスに興味を持ち従順であろうとする姿勢は、今日に始まったことではない。遠くからの視線を感じたり、近く居れば寄って来られ話し掛けられたり。前々から、なんらかの好感を寄せられていることには、シャンクスも気が付いていた。
しかしながら、それがどんな感情によるものであったとしても牧場の経営者と家畜という間柄上、何だっていい話だった。余計な感情は持ち込まずドライに接しているシャンクスだが、その好意の種類を図れるとなれば若干の興味は湧く。
どういう意図での発言だったのか、探るように見つめるシャンクスに対して、エースは不思議そうにしながら見つめ返しただけだった。真意を測れるような表情ではない。
実際に深い意味合いはなかった。ただ純粋に、昨日に受けた感覚と比べただけである。
「へェ〜」シャンクスは探る事を諦め、視線を戻す。「痛くねェならどんな感じなんだ?」
「ぅっ、ぁああ! っあぅ…」
指を戻して立ち上がっている部分をほんの軽くだけ摘めば、エースはまたビクビクと腰を跳ねさせた。
「なァ、どうなんだ?」と、追い討ちをかけるように問えば、エースはおずおずとしながらも口を開いた。
「……ひ、ひりひりして…、あっあ…、んんッ…、ッじ、じんじんする」
エースの返答にシャンクスは一瞬黙り込んだ。
「……んー、そりャ薬が効いてんだな」
「本当かよ…っ!」
「じゃなかったらお前……」
手を止めて顔を見る。エースはまだ不思議そうにしていた。
痛いわけでも薬が効いているわけでもないのなら、感じて気持ち良くなっていることにならないか?それを口に出すのはやめた。さすがにそれはないだろう。
きっとエースの乳首は、余程痛みに敏感になっているのだ。可哀想に。
シャンクスは几帳面な性質ではない。しかし、出来る限り優しくエースの乳首に触れながら、乳輪から先端まで一直線に指を撫で下ろして薬を塗り込んでいく。
エースは彼の指の動きに集中し、呼吸を合わせていた。指が触れ離れるまで息を止め、先端まで辿り着いたところで詰めていた息を吐き出す。その動作で一通り塗り終わった後、ようやくエースの身体から力が抜けた。
「ぁ…、んんッ」
最後に乳房を下から掬い上げるようにして揉んだ。一晩の間に作られたミルクを出していないそこは、パンパンに張っている。マッサージするように揉んでいると、エースは首を振って嫌がった。縛り上げられている腕で顔を隠しながら「それ…、やめろ……」と、か細く言う。
「どうした?」
質すまでもなく、溜まっているものを出せないままでいるおっぱいを刺激されることが辛いのだ。揉まれると出したくても出せないもどかしさに苛まれるのだろう。繊細になっている場所を下手に刺激されたくないに決まっていた。
エースは下手に言えばまた説明を強要されると考えたのか、問いに返事はなく、「反対も……」と、控えめながらおねだりをしただけだった。
賢い奴だと、シャンクスはエースの漆黒色の髪を乱雑に混ぜ撫でてから、要望どおり右乳首に目を向けた。最初から、搾乳は手当てが終わった後でするつもりだった。
「あァ、こっちはまた……痛そうだなァ」
右乳首は、吸われて伸び膨らんでいた左乳首と少し様子が違っていた。思いっきり歯を立てられたのか歯型のような痕が残っている。切れてはいない様子だが、先端の形が平たく潰れていた。
シャンクスは顔をしかめながらも、むさいヒゲ面のおじさん連中にいたぶられた可哀想なそこを慰めていく。
「ん…っぐ、……っ」
薬を塗り伸ばすため痛々しい乳首に触れる度、エースは震えた。形のいい唇からは、極限まで噛み殺した悲鳴が溢れる。
先端にも薬を塗り込もうと考えたシャンクスは、中指と親指で潰れた乳首を摘み、突き出ている先端に人差し指を当てがった。ほんの少し押し潰しただけで、エースは「ンあッ!」と、高い声を上げて飛び上った。まるで電流が走ったかのような反応につられて手を離す。
伺い見れば、白いはずの肌を赤い果実のごとく染めた顔がそこにあった。目が合い、唇を噛み込む音がする。パチクリと瞬きをしている間に顔を背けられた。
「急にどうしたんだ?エース」
膝に乗りおっぱいを曝け出し、ひんひん鳴いているこの状況。今さら何を恥じらい悔しがることがあるのか知りはしないが、シャンクスにとってこの初々さは新鮮だった。今は必要がないと傍らに放っていた悪戯心が近づいて来る気配がした。
顔を隠し限界まで壁側に距離を取られても、相も変わらず目の前に晒されたままの胸元に向き直る。本人の意思に反しているのだろうが、“好きにしてください”状態のおっぱいに手のひらを当て、乳首を掴み直した。様子を見ながら徐々に力を加え摘み上げていく。
すかさず「おいっ!」と、ストップが掛かった。その音は低く、怒っているようでもあると同時に余裕がなさそうだった。
シャンクスが視線を上げれば、眉間に皺を寄せた目元に睨み付けられていた。
「ん? 先も念入りに手当てしとかねェとだろ?」
シャンクスはあえて飄々とした口振りで言う。さて次はどんな反応を見せるのかと、悪戯心に近づかれた胸が躍っていた。
エースは、また一段と眉間に皺を寄せたが結局は押し黙った。それから壁に体を預け、とにかく早く終わらせて欲しそうにした。シャンクスの内心にあるワクワクを感じ取り、言っても無駄だと言わんばかりの態度だった。
シャンクスは構わず、自分のペースで事を進めていく。顔を近づけて具合を見ながら、そこに人差し指を下ろした。ビクりとして逃げようとするから、柔らかな乳房を掴む手に思わず力が入った。
「ッ!うぁあ!」
瞬間、プシッと音を立てて飛び出したミルクがシャンクスの顔に掛かった。
仄かに甘い香りする自分のミルクが手の甲で拭われる。その動きをスローモーションのように見ていたエースは、赤くしていた肌を今度は青くさせた。
「ぁ……、わ、わりィ……」
シャンクスは、不意打ちで生温かいものが顔に掛かったことが不快で眉を寄せていただけだが、エースには怒ったかのように見えたのか、また耳を後ろに倒して震え出す。
今まで怒って折檻なんてことはした事がないのに。エースの怯えっぷりに、シャンクスは引っ掛かりを覚える。
「怒っちゃいねェさ。気にすんな」
一先ずは安心させようと、明るい声を出して声掛けをする。次に、カタカタと震える耳を上に向けるように握り込むが、エースの意識はそこに向いていない。
触られる耳など気に留める様子もなく、膝を胸に寄せ上げるように縮こまっていく。まるで何かに耐えているような様子だ。
「ん、ぅ…ふッ! ぅう」
ただでさえ窮屈な体制を強いていたのに、そこから更に自らを追い込んでいくエースは、体制以上にきついものに襲われている様子だ。震えているのもそれに起因しているに違いない。
シャンクスは肩に担いでいた脚を床に下ろし、エースの体を開く。
「お前、やっぱり出したいんだろう」
エースは首を左右に振る。ここまでシャンクスに対しては聞き分けの良かったエースの初めての拒絶だった。
「あれだけは……」
「なら自分でやるか?」
「ほら」と、シャンクスは右手の手錠から鎖を外してやった。
次いで、傍らでぼうっと突っ立ってた飼育員に合図を送り、空のカラスビンを受け取った。青ざめているエースの前に、それをかざす。
「搾乳機は嫌なんだろ?」
エースは何も言わず視線で語りかけたが、シャンクスは敢えて意に介さない。お前がそう言ったんだと顔に書いていれば、そのうち重々しい鉄の輪が着いたままの手が、鈍い動きで右側の胸に向かっていった。
赤に腫れている粒が薬によってテラテラと艶めいている様子は、不気味でもあり同時に妖艶でもあった。
エースはその腫れ膨らんでいる乳房を手の平で包み、二本の指で乳首を摘む。それだけで、先端からじんわりとミルクが滲み出てきた。
「ふっ……ぅう」
「ほらエース、がんばれ」
シャンクスは励ましの言葉を添えながらビンを突き付ける。エースは何度か深呼吸をした後、意を決して力が込めた。
「ぁぐッ!」
エースは痛げに声を上げたが、それもで乳を絞る手の力を緩めない。その頑張りの結果、空っぽだったビンの中にミルクが入る。やはり痛むためか、力を込め続けていることはできないようだが、自分で絞ることができた。
「エース、ちゃんとできるじゃねェか」
シャンクスが笑って褒めると、そばかすの乗った白い頬が赤く色付いた。
次を促さずとも、エースは自発的に同じ要領で絞り初めた。手の平でおっぱいを揉み絞り、握る強さを強めながら徐々に先端へ力点を移動させていく。乳の絞り方など教えられたことはないが、本能でどうすればミルクが出るのかくらいはわかっていた。
「ンぅ……、ッう」
三回目、四回目とエースは順調に自分の乳を絞っていく。
しかし、痛む箇所を労りながらのそれは、一回で絞れる量は少なくインターバルも長い。ビンの中はほとんど満たされていない。
シャンクスとしてもこんなにも痛手を受けているエースに無理をさせるつもりはない。ただ、せめておっぱいの張りが落ち着くくらいの量は搾っといてやりたい思いがあった。
「まどろっこしいなァ」
ゆっくりとしたペースで行われる搾乳は、懸命な姿がいじらしいとはいえ、少しばかり酷く手持ち無沙汰だった。しばらくは黙って見守っていた。が、やはり時間がかかる。
壁掛け時計を確認すれば、シャンクスがここに来てもう三十分も経っていた。朝のうちに済ませておかないといけない事項が頭を巡る。彼も暇ではない。直飲み提供などと急な発案に黙って従い、頑張ってくれたエースをこの手で介抱してやりたい気持ちはあれど、このままここに留まっているわけにはいかなかった。
ぽそりと呟かれた台詞に、エースはしっかり反応していた。さすがは勘が鋭い。嫌な予感がすると言わんばかりの表情でシャンクスをじっと見つめていた。
「エース、やっぱりあれでやろう」
「自分でできる……それで問題ねェはずだ」
「大丈夫だ。おれは痛いことなんてしなかっただろ?思い返してみろ」
シャンクスの誘導に従い、これまでを振り返ったエースだが、思い当たる節を振り払うように首を振った。流されてなるものかと強い意思を感じる。
「あ!おいッ!」
が、シャンクスはその隙に飼育員の手も借りつつ、自由にしていた手を再び鎖に繋ぐ。気付いたエースが暴れ出しても既に遅い。鎖の音が虚しく響くばかりだ。
すぐに終わると宥めても、エースは聞く耳を持たず頑なに嫌がった。
「そんなに痛いのが嫌なのか……。もう少し我慢強い奴だと思ってたんだがなァ」
「……ッ!ちが……」
「わかった、わかった。それなら気が紛れるようにちんこ弄っといてやるから」
「ハァ!?どういう理屈だッ!」
「男の子なんだから気持ちいいことのほうが好きだもんなァ」
「なにやって……!ちょ、っと待てッ!」
エースの静止を無視してベルトを外していく。そうして露わにしたエースの男根は頭をもたげていた。
「……ん?お前勃ってんのか?」
「ッ!!」
見た通りのことを指摘され、エースはカッと赤くなった。動揺して、口をぱくぱくさせたまま言葉も出せないでいる。
あぁ、そういうことか。と、シャンクスはこれまでの全てに納得がいった。痛いわけでもなく、薬が効いているわけでもなく、感じて気持ち良くなってしまっていたのだ。
「いや、待て。お前、ちゃんと痛がってたよな?痛いのが気持ち良かったのか?」
「っ〜〜、そんなの、わからねェ……!」
エースはわからないと言うが、シャンクスにはそうとしか考えられなかった。性癖が開花してしまっている。
搾乳機を嫌がっていたのも、「痛いから」というよりも、それによって感じてしまう可能性を危惧していた。自分の身体のことは自分が一番よく理解できている。朝になっても立ち上がったままの乳首に毛布が擦れた時からおかしいと感じていた。今までだとなんでもなかったはずの刺激に、エースの下半身はたしかに反応をしてしまっていた。
おっぱいを触られミルクを出すことが仕事なのに、触られることにふしだらな反応をしてしまうことがショックでたまらなかった。それどころか仕事に集中できず、満足にミルクを出すこともできなくなっていたとしたら。それを知られたら使い物にならないとして、処分されてしまうのではないか。エースはそれが嫌がって搾乳を拒んでいた。
シャンクスは、そんなエースの心境を察してはいないが、機械で強制的にミルクを搾られながら、ちんこをおっ勃てるのは耐え難い醜態に違いないと哀れに思った。「大丈夫だ」と明るく声をかけてやる。
実際に全く気にしていない。痛みを快楽と捉えてしまう、そういう性分なのであればこれは一種の生理現象に過ぎない。
「気にするな。よくあることさ、な?」
「うーーッ……」
床を蹴り付け苛立ちをぶつけていたエースだが、シャンクスが抱き寄せ宥めすかしている間に大人しくなっていった。
肩口に顔を埋めて沈黙している今のうちに、飼育員に視線を投げて搾乳機を取り付けるように指示を出す。
「それは嫌だって言ってんだ!やめやがれ!」
「エース」シャンクスは、すぐに激昂を始めるエースの後ろ髪を引っ掴む。「いい加減暴れるのはよせ」
「ぐっ、」
「張りが引くまでの少し間だ。その間にちんこ弄っといてやるから、そっちに集中してればいい」
「……っ」
「わかったか?」
エースからの返事はなく、髪を引かれる痛みに顔を歪めるばかりだった。返事はどうしたと、一層力を込めて髪を引く。エースは奥歯を震わせながら「……はい、」と小さく返事を寄越した。
ようやく大人しくなったエースの両乳首に、透明のドーム型のカップが宛てがわれる。先端のハンドルを回してドーム内の空気を抜いて真空にさせることで、ドームがおっぱいに吸着する仕組みだ。
飼育員の手によって搾乳機が取り付けられていった。
エースの男根は少し勃ち上がって硬くなってはいるが、先走りは出ていなかった。
シャンクスは唾液を垂らしてそこを濡らす。エースは、たったそれだけの刺激にさえ律儀に反応をする。
真空状態になっている乳首もその引っ張られるような感覚にさえ刺激を受けていたが、シャンクスの狙い通り意識が分散されているようで何よりだった。
「ぅん、ふっ」
唾液の水気を借りながらクチュクチュと扱いていくと、すぐに硬くなっていった。エースの皮を被ったままの先端が赤くなって苦しそうで、シャンクスは一思いに剥いてやった。
「ッう!ッン、ぁあ!」
「お前本当に感じやすいなァ……大丈夫か?」
「……ふ、ぅあ」
性行為など一人でもほとんど経験がないだろうに、未開発でここまで敏感なのは一種の才能である。
シャンクスはそう感心しながらも、ツルッとした先端を指の腹で撫で責める。エースは吐息混じりの上擦った声を出した。刺激を与えるたびに甘く熱をもった声を出されたら、シャンクスの気分も良くなってくる。演技や計算でやっていない分、微笑ましくも思えた。
すっかり固く勃ち上がったそれを、しっかり包み込んで扱いたり指先だけで触れて焦らしてみたり、緩急を付けながら好きに追い立てていけば、次第にエースの息が上がって苦しそうなものに変わった。体の強張りも取れたのか、目を瞑り与えられる刺激を甘受している。
「つらいか?やめるか?」
「ッ、」少し意地悪な問いかけにエースは首を横に振った。「平気だ」
「はは」
彼がここまでの反応をする原因に目を向けた。手の中にある男根はそこそこ立派だが、綺麗なピンク色をしている。この穢れを知らない場所をもっと弄り、ぐちゃぐちゃにしてしまったらどうなってしまうのか興味が湧いてくる。
親指の腹で裏筋をグリグリと刺激してやれば、先端からカウパー液が溢れでてきた。トロトロと溢れるそれを塗り広げああしてこうしてと、頭の中でシミュレーションをする。
「ンくっ!ぁ……あ」
手は動かさずじっと見ていただけなのに、突然エースがビクりと飛び跳ねた。シャンクスが顔を上げると、カップを取り付けただけの乳首からミルクがじんわりと滲み出ていた。エースが悶える振動のより、白濁の雫がひとつ、真空のドームの中に落ちる。
痛め付けられた乳首だけではなく、パンパンに膨らんだおっぱいがズキズキと痛み出していた。
「あうぅ……ッひィ、もっ、出したい……」
エースは痛みと羞恥に赤く染まる顔を隠しながら、消え入りそうな声で本音を口にする。
シャンクスはそれによって、ようやく本来の目的を思い出した。
「そうだったなエース、忘れてた」
呟くように言って、スイッチが入れられた。
「ぁああっ!」
機械がモーター音を響かせた途端に、エースが悲鳴を上げた。カップ内の空気圧が変わり乳首を押し揉まれ、吸い上げられるように吸引される。乳首が熱くてムズムズとして痛い。同時に下半身に熱が溜まっていくのもつらい。ミルクを出せることにはスッキリする。色んな感覚が渦巻いて、痛いのか気持ちがいいのかもよくわからなくなっていく。
ただ、今までなら何でもなかったその刺激が辛いことだけが確かだった。
エースは、容赦のない吸引から逃れようと胸を突き出して抗うが、当然のように変化はない。
「んあッ、ァあ…あっあ」
手足をジタバタと暴れさせても、乳首から全身を駆け巡る刺激をやり過ごすことはできなかった。
エースを押さえ付けながら傍観していたシャンクスは、再びエースの男根に手を伸ばした。綺麗に割れた腹筋に頭を付けている男根を引き上げると、白濁とした液が糸を引いた。エースは、吸引される刺激に達してしまっていた。
止まることなく続く快楽。スイッチを入れられたときには、急激な刺激に達してしまっていたが、今はイクにいけないもどかしい刺激を受け、エースの男根は硬くなったままだった。パクパクと物欲しそうにしている鈴口を、シャンクスは指の腹でグリグリと押し潰した。
「ンひっ!、っ」
油断していたところへの容赦ない刺激に、エースの腰が飛び跳ねた。同時にまた達してしまい、白濁とした液がシャンクスの手と自分の身体を汚す。
今度こそしっかりと達して、くたりと力をなくす男根はまだ離されない。
「っ!ぇ、ゥっ」
搾乳機から受ける快楽も止まってはいないし、2度も出したといど、絶妙な力加減で扱かれれば、また勃ち上がっていく。
吐き出された精液を、手のひらを使って亀頭に塗り込むように刺激した。円を描くように優しく撫で回すような手つきだが、達したばかりでより一層敏感になっているそこには、酷すぎる刺激だった。
エースの開け放たれた口からはひっきりなしに喘ぎ声と涎が溢れていた。全身の感度が上がっているエースは、自分の涎が顎を伝って胸に落ちる刺激にさえ肩を震わせていた。
「ッぁあ、やだッ、それっ」
「痛いか?」
「っは、アぁ、」エースは首を振る。「ャ、あ……ぁあ、ぅ、なんかっでっ、でる、でるっ!」
生理的に流れる涙を隠すために顔を背けていたはずのエースだが、自分の男根にいつもと違う違和感を感じてそこを凝視していた。
しかし、その顔にはしっかりと怯えが浮かんでいる。自分の身体であるのに、まったく制御が効かずにどんどんと追い立てられ、さらには経験したことのない感覚を受け、エースはいよいよ恐くなってきていた。でも、まだ理性は残っていて、恐怖にも快楽にも屈しられないでいる。
そんなエースの心境を全て解っていると言わんばかりに、シャンクスはニヤニヤと口角を上げた。エースの表情を楽しみながら、「出していいぞ」と声をかける。
「ぃや……、」
「出したいって言ってたじゃねェか」
「っ、ンッふっ」
言ってねェだろ、と反論したかったが、少しでも気を抜けば何かが出てきそうで、エースはグッと唇を噛んで耐えた。
代わりの抵抗としてエースは尻尾を使った。細く糸の様に頼りない静止が、シャンクスの腕に絡まりついた。引き剥がしたいのだろうが、まったく力が入っていない。
まるで撫でられているような感触に、シャンクスはもっとと強請られているように感じた。
鼻歌でも歌い出しそうな表情のシャンクスは、手の動きを緩めることなくエースを追い立てていく。
「っ!うッ!ンァあああ!」
ミルクが吸い上げられる音に混ざって、プシッと軽い水音がした。エースの男根から、透明な液体が噴き出ていた。
「ぁあ…、、っは、ッん……、ゃうう」
「おー、出たなァ」
「……潮ですか?」
「ああ、男でも出るって知らなかったか?」
のんきな声を出すシャンクスに、傍で見ていた飼育員が声をかける。二度も三度も噴き出されるその体液を怪訝な顔をして食い入るようにして見ていた。
エースにとって、その態度と視線は酷く屈辱的なことだ。しかし、エースはその視線に気を回せるほどの余裕がない。頭は真っ白で、もう痛いのか気持ちがいいのかもわからない。
絶え間なく与えられている刺激に気を飛ばさないだけで精一杯だった。
「……ゥう、」
潮吹きが終わると、ようやくシャンクスの手が離れた。
エースは時々、搾乳機からの刺激の胸を突き出し反応を示しながらも、ぐったりと壁に寄り掛かっていく。ほとんど放心状態になっていて、あれだけ噛み締めていた口を今では閉じることもできない。歯形が付いて赤くなった唇には涎が滴っていた。
「よし、終わったぞ、エース」
シャンクスがそういって、搾乳機のスイッチを切る。瓶には、予定通りの量のミルクが溜まっていた。
搾乳機を外し、繋いでいた鎖も手枷も外す。
飼育員に指示を出し、汚れた箇所を拭いたり後処理をしている間に、エースはいくらか体力を回復させた。重たい鉄輪が取れたそこを労るように触れていた。白い肌に、赤い擦り傷がいくつかできている。
シャンクスが塗り薬を差し出せば、「いらねェよ」と拒む。本来の自分を思い出したかのように強がりを見せるエースは、無事に平静に戻れているようで何よりだと感じる。
といっても、せっかく薬があるのだから手当てしないわけにもいかない。シャンクスが薬を付けた指を差し出せば、エースは素直に傷口を出した。
「なァ……他にもおれみたいな目に遭ったやついるのか?」
手早く処置をしていると、ふいにエースが口を開いた。
「いや、聞いてはねェな」
ただ、聞いていないだけで実際にはあるのかも知れない。そう思ったシャンクスは、飼育員に目を向ける。彼は首を振ってないと答えた。
「そうか」エースもそれを見て、ほっとしたように息を吐く。「良かった」
「良かったってお前……」
「他の誰かじゃなくておれで、おれだけで良かったさ……」
散々な目に遭ったにも関わらず、その役が自分で良かったなどと言うエース。まさか、こんな事を言い出すとは予想もしていなかった。シャンクスは、難しい顔をして黙り込む。
「ほら、いろいろ支障も出るだろうし、おれは頑丈なほうだろうからな」
何と答えようか迷いが顔に出ているシャンクスを見て、エースは続けた。
半分は本音で半分は強がりだった。
今後、まともに仕事ができなくなったかも知れないのだ。よく食べよく運動をしよく眠り、そうして質のいいミルクを出す。それがエースの仕事で、存在意義だ。これで良いわけがない。
ただ、強がっているうちに、半分のうちの全部が「これで良かったんだ」と変わることを期待している。
「エース、客をぶん殴りたきゃ、やってもよかったんだぞ?」
視線を外して少し考え込んでいたシャンクスは、エースに向き直ってからそう言った。
「……?」エースは怪訝そうに表情を歪める。「何言って……だって、そんなことしちまったら……」
「構いやしねぇさ。許してもいねェのに痛みつけるような奴ァ、こっちから願い下げだ。ウチには必要のない客だ」
仮にエースが客を殴り、それを容認し客を追い返すことで、どんな悪評をつけられようがシャンクスにとっては些細なことだった。そんな程度の低い客なんかには最初から用事がない。それでも利用してくれる人間を大事にしていけばいいだけの話だ。
「替えの効く客なんかより、お前のほうが大事だ」
それがシャンクスの答えだった。
エースは、揺らぎそうになるのを堪えてシャンクスの目を見つめた。替えが効くなんて、自分だってそうだ。それでも自分のほうが大事であるなんて信じられない。
「……本当か?」
「本当だ」
恐る恐る質すエースに、シャンクスは頷いた。
しっかりした口ぶりに安心しそうになるが、エースはハッとしてまた質した。
「でも、もうまともに仕事できなくなったかも知れねェだろ」
「そんなのわからねェさ」笑い出したシャンクスはエースの背を励ますように叩いた。「まァ、なんとかなる」
「す、捨てたりしないよな……?」
「どうしてそんなことをする?」シャンクスはエースの肩を抱き寄せる。「おれはお前がいてくれて助かってる」
「ありがとう、エース」と顔を覗き言えば、エースはきちんと受け取り小さく頷いた。
エースは、安心したところで睡魔がやってきたらしい。瞼を重そうにさせていた。
シャンクスが「一先ず休め」とその場に横たわらせながら言えば、彼は素直に眠りに落ちていく。胸には受け取った言葉を抱いていた。これはおれだけのものだからと、大切に、無くさないように、文字通り抱き抱えるように丸くなっていく。
シャンクスは、その様子を少し見守ってから立ち上がった。
「起きたら飯と、風呂にも入れてやれ」
「はい……。お手数をおかけしてすみません」
「ああ、また何かあったらすぐに呼べ」
「はい」
シャンクスは傍らに立つ飼育員に指示を言い渡すと、部屋を出た。
残された飼育員は、健やかに眠るエースの側に行ってその手を伸ばす。とそこに、「おい」と低く声が掛かった。不意打ちに肩を跳ねさせた飼育員は、背後を振り返る。入口には向こうへ行ったはずのシャンクスが立っていた。
「そいつに手ェ出すなよ」
射るような鋭い眼差しで低く放たれたクギに、飼育員は息を呑んで応えるしか出来なかった。
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