君の話は他の人からも聞きたい
近頃、第一世界にばかりいないか?と言われた。
石の家に帰ってきても三日と開けず第一世界へ旅立っているのだから、彼方では水晶公と呼ばれた彼のことだ、気になるのだろう。
「その、あちらで何か……?」
「ううん、色んな人とお喋りしてるだけだよ」
不安げにそう聞かれれば、安心して欲しさに素直に答えた。
そうか、とほっとする様子に紛らわしいことをしちゃったなぁと反省する。
でもこれは当人に聞かれるのは少しばかり気恥ずかしい話だから、出来れば深く聞かないでもらえると助かるのだけれど。
「なら、良かった……あちらではどんな話をしているんだ?」
う、案の定。
「あー、その…………水晶公の話、を」
咄嗟の誤魔化しも出来ずに喋ってしまった。
本人に隠れて、ということに後ろめたさを感じてしまって、どうにもぎこちなくなってしまう。
「水晶公の? 何か不備があったか? 今となっては別に秘密にしてるわけでもないし、何かあるなら聞かれれば答えるぞ」
「そういうのも無いから大丈夫、なんだけど……うーん。その、ね、クリスタリウムのみんなから、水晶公の話を聞きたかったんだ」
クリスタリウムの街で、人々からこぼれ聞く水晶公の話が好きだった。
彼がずっと見守ってきた、芯のあってしたたかな人々から。
敬い、頼り、時には支える相手なのだと語られる水晶公の話は、聞いていると胸があたたかくなる。
素顔を晒さず、名前も教えず、けれどその言葉で、態度でこの街を愛しているのだと伝わってくるから。
第一世界で、百年ほど。水晶公として過ごしたその時間は、人々に力強さを持たせ続けて来たのだ、と実感出来る。
絶望に屈せず、諦めず、希望はなくとも今日を懸命に生き続けてきた人たちから。明日を信じて、未来へ少しでも何かを残そうとしてきた人たちから。
そんな素敵な人たちから水晶公の話を聞く、というのは。
「あなたの足跡を辿りたかったんだよ」
「…………それは、ずるいだろ」
赤くなった顔色にピンと立つ耳と尻尾。
これはやっぱり、水晶公はそれらを隠してきて正解だったんだろう。
「ふふ」
分かりやすい仕草を微笑ましく思っていたら、悔しげな表情で睨まれてしまった。
「お、オレだって! あんたの足跡を辿るのは、特にイシュガルドの冒険譚、楽しかった!」
「うん、だから私も同じことをしたくて」
「〜〜〜っ!」
より赤くなったグ・ラハは手で顔を覆って、やっぱりずるいと呻いた。 [
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