猫と江澄
犬派か、猫派か。よく話の種に上がる事柄である。
蓮花塢が主、江澄が犬派だということは門弟にも民にもよく知れ渡っていることだが、かといって猫が嫌いというわけではないことはあまり知られていない。
何しろ彼ときたら野良猫の相手をするにはするのだけれども、その顔がいつにも増して顰め面なので。
猫なんて言ったところで聞きやしない。せがまれるがままに餌を与え、腹を満たすなりすぐさまどこぞへ去っていく姿に眉間のシワをより深くする。
江澄は猫が好きではない。あいつらは江家の宗主をつかまえておきながら、餌係程度にしか思っていない。
猫は好きではない。
こっちがどんなに世話をしてやっても素知らぬ顔。撫でようと伸ばした手は拒む癖に、去り際に人の足に身体を擦り付けて行く。
だから犬のほうがいい。言うことをよく聞き、忠実で、恩を忘れない。
…………猫は恩を忘れるとは言わないが。
瀕死の鼠を置いてにゃあと鳴く猫の前で、江澄は「どうしろと言うんだ」と溜息を吐いた。 [
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