なまえはいつも、独りだった。
天涯孤独であるとか、同期――
ただ、彼女の手にはいつも得物が握られていて、朝から晩まで他人が取り付く島もないほど鍛錬に勤しんでいる――故に、独りだった。
彼女の生まれた湯隠れの里は、隠れ里とは名ばかりの観光立国である。かつては忍だった者たちは武具を置き、心地よい湯煙の中で、外からの客を忙しくもてなしていた。
「ねえ、上忍なんて目指さないで、うちの旅館を継げばいいじゃない。そんな危険で大変な道をわざわざ選ぶ必要はないのよ」