なまえはいつも、独りだった。

天涯孤独であるとか、同期――忍者学校(アカデミー)の生徒から除け者にされているとか、そういった類のものではない。

ただ、彼女の手にはいつも得物が握られていて、朝から晩まで他人が取り付く島もないほど鍛錬に勤しんでいる――故に、独りだった。

彼女の生まれた湯隠れの里は、隠れ里とは名ばかりの観光立国である。かつては忍だった者たちは武具を置き、心地よい湯煙の中で、外からの客を忙しくもてなしていた。
忍者学校(アカデミー)の存在も、今や必要最低限の忍術および歴史を学ぶ義務教育機関に近い。卒業した忍のほとんどが、下忍のままである。


「ねえ、上忍なんて目指さないで、うちの旅館を継げばいいじゃない。そんな危険で大変な道をわざわざ選ぶ必要はないのよ」


.PREV | TOP | NEXT.
HOME